●アジア製モデムを使うか、自社開発か
同じ裁判の証言では、アップルがクアルコムの代わりに韓国サムスンや台湾メディアテックの通信チップの採用を検討していたことも明らかになりました。
これらの企業は5Gの研究開発でもトップを走っており、アップルは5G対応でインテルの力不足を見てとり、技術的な優位性を持つクアルコム以外のサプライヤー選定に動いたことが明らかです。このことから、当初2020年と見られていたiPhoneの5G対応が2019年に前倒しされるのではという観測が流れたのです。
しかし、分かってきていることはそれだけではありません。アップルが独自の通信チップをiPhoneに搭載する可能性です。
アップルはチップ設計会社P.A. Semiを買収し、iPhoneやiPadの心臓部となるAシリーズチップを設計しました。開発コストや基板の上での面積などを自由に設定できるため、他のメーカーのスマートフォンよりも完成品の処理性能や電池のパフォーマンスを高めることに成功しました。
チップ開発技術を背景として、AirPodsは2年のアドバンテージを持って完全ワイヤレスイヤホンとして市場に投入されました。独自のチップ設計は、製品の特徴や魅力、競争優位性を大きく作り出すことができる点を、アップルはすでに体得しているのです。
5G対応でも同様のメリットを享受すべく、モデム自体をアップルが自分で作りはじめる可能性は捨てきれません。実際、クアルコム役員レベルを引き抜いたり、クアルコム本社のある米国カリフォルニア州サンディエゴで技術者採用を進めるなど、人材面での揺さぶりも強まってきました。