■「プライバシー重視」がアップルの主軸に
ところで、アップルはなぜクレジットカード事業に参入するのでしょうか。その背景には、アップルの「プライバシー重視」戦略があります。
たとえば日本でも盛り上がるQRコード決済は、ユーザーの利用履歴を分析することで、新たな価値を生み出そうとしています。これに対してApple Cardでは、これまでのApple Pay同様に、アップルがユーザーのプライバシーに踏み込まないことが特徴とされています。
同時に発表したApple News+やApple TV+といった新サービスにおいても、ユーザーがどんな雑誌や番組を見ているかといった情報は取得せず、広告主に利用させることもないと宣言しています。
検索エンジンや地図に代表されるインターネット上のサービスは、無料で利用できる代わりに、一定の規約のもとでユーザーの個人情報が収集され、広告表示などに活用されることは、当たり前のように受け入れられてきました。
しかし最近は「GAFA」への批判が増えてきたように、風向きは変わりつつあります。その中でアップルは、他の3社のようにユーザーの個人情報を活用することをしない、「プライバシー重視」路線を強調する機会が増えています。
このプライバシー重視の方針がどういった層の消費者に刺さるのか、それによって業界のパワーバランスがどう変化するのか、引き続き注目したいところです。