インフルエンザの予防接種は、ウイルスの種類に対応したワクチンでないと効果を発揮しません。それはコンピューターウイルス(マルウェア)も同様で、ワクチンが存在しない新型のマルウェアは常に大きな被害をもたらす可能性があります。
パソコンのウイルス予防も、予防接種=ワクチンが重要
毎年冬に猛威を振るうインフルエンザウイルスですが、「予防接種を受けたけれどインフルエンザにかかってしまった」という人も多いでしょう。これは事前に流行しそうな種類を予想したうえでワクチンを製造する関係上、予想が外れる場合もあるためです。ちなみにインフルエンザウイルスは大きく分けてA型B型C型の3種類あり、そのうちA型は100種類以上の亜種が確認されていますから、流行を的中させるのはなかなか難しいことです。
とはいえ、毎年数千~数万種類が発見されるコンピューターウイルス(マルウェア)に比べればまだかわいいものでしょう。しかもこちらは標的がパソコンですから、一度被害を受けたら最後、取り返しがつきません。ヒトのように「薬を飲んで1週間寝たらすっかり元通り」にはならないのです。つまり、基本的にパソコンはワクチンの出来にすべてがかかっていると言えるでしょう。
そのためセキュリティ対策企業では日々数千~数万の新種それぞれを跳ね除けるプログラム=ワクチンの作成に膨大な人と時間を投入し、定期的に対策製品をアップデートしています。
大流行はなぜ起こる?
インフルエンザは十数年~数十年に一度、突然変異した亜種(新型インフルエンザ)が生まれることがあり、対策が後手に回ると大流行によって多くの被害が出てしまいます。第一世界大戦中に発生したスペイン風邪は、日本の人口の40%以上が感染し、40万人あまりが死亡したと言われています。新型ですから当然、人々は免疫を持っておらず、空前の大流行となりました。
そしてこれはマルウェアでも変わりません。新型のマルウェアにはワクチンが存在しないため、パソコンはなすすべもなく感染してしまいます。そしてマルウェアは生物のウイルス同様に、感染したパソコンからさまざまな手段を用いて他のパソコンへ自身をコピーしようと動作するので、感染手法が巧妙だとあっという間に広がります。
しかもマルウェアの場合は海や山といった物理的な障害が意味をなしませんから、比較的短時間に世界中で被害が発生するわけです。2000年の「ラブレター」、2003年の「ブラスター」など、新型マルウェア(とその亜種)が世界を震え上がらせた事例は枚挙に暇がありません。