週替わりギークス

ブログやニュースサイトが古くなった理由

文●吉永龍樹 編集● 上代瑠偉/ASCII

2019年07月23日 17時00分

 YouTubeは基本的に動画の枠の中で展開するので、枠の中から視線を動かす必要はほとんど無い。コメントを読むために画面をスクロールすることはあるかもしれないが、そもそも動画が見られなくなってしまうので、動画の視聴中に画面をスクロールするのは少数派だろう。

 スマホを利用するのは、電車を乗り換えているときや、半分寝ているときなど、従来の読書やテレビのように、「集中してコンテンツを享受するための状況」であるとは限らない。

 そうなると、ブログ記事よりもYouTube動画の方が目や指を動かすことにストレスを使わず、ボーッとした状態でも楽しめるコンテンツとして、必然的に人々が利用しやすくなっているらしい。

Twitterはオールドタイプなメディア

 「文章と動画ではコンテンツの質が違いすぎるだろう!」と感じる人もいるかもしれない。次は、一見似た形に見えるサービス、TwitterとInstagramを比較してみよう。

 まずは、Twitter。

 アイトラッキングの観点で見ると、日本ではまだ元気なTwitterも、かなり視線を動かさなければいけないサービスだと言える。ブログ記事と違い、Twitterに表示された文字は一字一句読む必要はない。気になったところだけをつまみ読みできる点は新しかった。しかし、

文字ベースなので、小さな点を注視して視線を移動させる必要がある。
タイムラインは縦に長いので、スクロールしなければならない。

 などの点では、オールドタイプなメディアであると言えるだろう。

 世界的に見ると、Twitterのユーザー数は2015年の3億人から4年間でほとんど増えてないことからも、スマホネイティブ世代には、やや古く感じるサービスになってしまったのかもしれない。

Instagramはストーリーズ機能がすごかった

 一方、Instagramはどうだろうか?

 サービス開始直後のInstagramはTwitterと同じように、タイムラインをスクロールしていく仕様だった。しかし、2016年8月にリリースされたストーリーズ機能がすごかった。

 ストーリーズは全画面で展開するコンテンツなので、スクロールは不要だ。

 「左右スワイプで、次のコンテンツが出てくるのでスクロールと大して変わらないのでは?」と感じるかもしれない。しかし、「視線を動かす必要があるか?」という観点で見てみると、

Twitterのタイムライン:視線移動の必要あり。
Instagramのストーリーズ:視線移動の必要なし。

 と、非常に巧みに視線固定のまま見続けられる設計になっているとわかるだろう。

 Instagramはこの機能をリリース後も、どんどんユーザーを伸ばし、いまやTwitterの3倍以上、10億人を超えている(2018年6月発表)という。Instagramは目も動かさず、できるだけ手軽にコンテンツを楽しみたい、という人々の欲望に忠実に応えたサービスだと言える。

「読む」ことは少なくなっていくのか

 そもそも、このコラムは文字で書かれている。当然これを読んでくださっているみなさんは視線を動かして文字を読み、行の終わりに到達したら、次の行に視線を移す作業を何度もしてくださっているだろう。

 この「読む」という行動は有史以来何1000年も当たり前に人類がやってきたことだ。今でも深い内容を理解するために必要なのは間違いない。

 だが、スマホを中心とした「楽で快適なコンテンツ」という観点では、徐々に行なう人が減っていく行動なのかもしれない。

 みなさんは、日々のコンテンツを楽しむとき、どのくらい目を動かしていますか?

 【※追記】本コラム執筆(6月26日)後、Twitterの新しいスマホデザインが一部アカウントでテストされている模様。7月2日にこちらで確認したところ「スマホの左右スワイプで閲覧リストを切り替える」という目を動かさない新デザインだったが、早くも7月11日には提供を終了していました。Twitter社もいろいろと試行錯誤している模様です。

吉永龍樹(よしながたつき)

 1979年生まれ。静岡出身。サラリーマンクリエイター。NTTレゾナント勤務。同時に、個人クリエイターとして個人ブログ「僕の見た秩序。」が開設4年で1億アクセスを記録するヒットに。以後、ネット知識を活用した作品を多数発表。「特ダネ!投稿DO画(NHK)」キャラクターデザイン、「ゆかいなエヅプトくんLINEスタンプ」などの作品で会社員兼クリエイターとして二足のわらじの働き方をしている。主な著書に『ハイブリッドワーカー(講談社)』『ゆかいな誤変換。(イースト・プレス)』など。Yahoo! WEB of the YEAR話題賞、Webクリエーションアウォード WEB人賞、アルファブロガー・アワードなど受賞多数。

協力:QREATOR AGENT

 起業家、デザイナー、研究者など、職業・業界にかかわらず、クリエイターの才能を最大化することを目的に結成されたPR会社。江渡浩一郎(メディアアーティスト)、落合陽一(メディアアーティスト/筑波大助教)、きゅんくん(メカエンジニア)、坂巻匡彦(プロダクトデザイナー)など、約170名のクリエイターが所属している(2016年8月上旬時点)。

http://qreators.jp/qreator/ichiran

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