松村太郎の「アップル時評」ニュース解説・戦略分析

アップルがiPad体験を再定義した2019年 (2/4)

文●松村太郎 @taromatsumura

2019年10月23日 16時00分

●Macとは「サイズ・価格」で棲み分け

 2019年に起きたiPad体験の再定義について今一度触れておきます。前述の通り「タブレットからコンピュータへ」という転換がはかられましたが、これは2016年3月にさかのぼります。

 iPhone SEとともに9.7インチ版のiPad Proが登場した、アップルの旧本社「タウンホール」で開催されたイベントで、役員のフィル・シラー氏は「6億台とも言われる5年以上経過したPCのリプレイス需要をねらう」とiPadのマーケティングゴールを示しました。

 またCEOのティム・クック氏は2018年10月にiPad Proを登場させた際、「タブレットとしてではなくモバイルコンピュータとして、世界最大の出荷台数」であることをアピールしています。このように、アップルは、iPadをタブレットの枠からコンピュータ市場へと押し上げようとしていることがわかります。

 当然、アップル社内にも問題が生じます。コンピュータ市場には長年その地位を保ってきたMacが存在しており、iPadのコンピュータ化はMacを脅かすことになるからです。

 しかも、iPadとMacの融合は「ない」と、同社役員のクレイグ・フェデリギ氏が繰り返していますので、同じコンピュータ市場に2種類の製品が共存する未来を目指していることになります。そのための準備も進めてきました。

 アップルの現在のラインアップを見ると、Macから13.3インチ以下のポータブルモデルを廃止し、1000ドル以下の定価をつける製品も排除しました。こうしてiPadとMacで、サイズ・価格から棲み分けを作り出しています。

 もちろんコンピュータに詳しい人からすれば、ARMとIntelというチップのアーキテクチャが最大の違いなのですが、アプリやクラウドの発達から、基本的な作業でできることに差がなくなりました。そのため、価格と画面サイズという2つのわかりやすい差別化が進んだ、と見ています。

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