手のひらサイズながらも、QWERTYキーボードを備えた折り畳みスタイル。独自ネットワークを使い、メッセージやメールを送受信していました。
1998年には小型のページャースタイルの「BlackBerry 850」を投入。BlackBerryブランド最初の製品となります。この世代から携帯電話ネットワークを利用した製品となりました。
当時はまだスマートフォンはもちろん、携帯電話ではSMSしか利用できず、メールの利用できるモバイル端末としてBlackBerryはビジネスパーソンの間で普及していきました。
そして、2000年にいまのBlackBerryスタイルとも言える、縦型QWERTYキーボードスタイルの「BlackBerry 857」「同957」が登場します。
ディスプレーはページャースタイルの数行から16~20行表示となり、メールの視野性が高まりました。また、右サイドにあるジョグホイールで、画面のスクロールも楽にできたのです。これでBlackBerry人気に拍車がかかります。
2002年にはGSM/GPRSネットワークに対応し、音声通話も可能な「BlackBerry 5810」が発売され、BlackBerryの存在感を高めていきます。
当時は携帯電話が普及しており、SMSを使ったメッセージのやりとりも急速に増えていきます。しかし、BlackBerryはPCの世界と互換のあるプッシュメールサービスを提供しつつ、SMSの利用も可能、音声通話もできるという、当時のビジネスパーソンが望んでいた製品を開発したのです。
OSはJavaベースで、いまのスマートフォンのように自由にアプリの追加はできなかったものの、スケジューラーやメールなど基本アプリだけでも優れており、Microsoft Exchange Serverなど企業が利用するサービスへも接続できたことから、ビジネスの場での必須ツールになっていきます。
アメリカのTVドラマを見ると、ビジネスのシーンでは必ずBlackBerryが映っている、そんな時代を迎えました。
2003年にはディスプレーをカラー化した「BlackBerry 7210」を投入。しかし、黎明期のBlackBerry端末のハイライトとも言えるのは、2004年から登場した「BlackBerry 7100」シリーズだったかもしれません。
QWERTYキーボードを備えるBlackBerry端末は、どうしても横幅が広くなってしまいます。そのため7100シリーズはQWERTYキーボードを廃止し10キーを搭載。片手で持てる携帯電話サイズとしました。しかし、ひとつのキーにふたつの英字を割り当てることで、疑似的にQWERTYキーボードの機能を持たせたのです。
7100シリーズのキー配列は、10キーの左右にも1列のキーを配置し、縦5列。それぞれのキーに右から「QW」「ER」「TY」「UI」「OP」と配置。2段目のキーも同様です。
たとえば、2のキーを押すと画面の下にはTとYで始まる文字候補が現れ、次のキーを押していくと候補が自動的に絞り込まれるのです。慣れれば片手でもサクサクと英字入力ができたといいます。この7100シリーズは派生モデルが約10種類登場したことからも、当時はかなり人気だったのでしょう。
3プラットフォーム一新でスマートフォンへ
2005年11月に「BlackBerry 8700」シリーズが発表されます。CPUにインテルのモバイル向けプロセッサーであるPXA901を搭載。BlackBerry OSを採用し、プラットフォームを一新。Javaベースで動く従来の「高性能携帯電話」からスマートフォンへと生まれ変わりました。
ディスプレーは320×240ドットの6万5000色対応となり、カラー写真も美しく表示できるようになったのです。ただし、通信方式は2.75GのEDGEに対応したものの、3Gへは非対応でした。
当時はノキアやソニー・エリクソンが擁するSymbian、マイクロソフト陣営のWindows Mobileもシェアを伸ばしていました。
Javaベースで動作するBlackBerry端末は、アプリの追加の面や端末性能そのもので完全なスマートフォン化しなくては競争に打ち勝てないと判断したのでしょう。プラットフォームの変更は、BlackBerryが本格的にスマートフォン市場への参入を決めた決意そのものだったのです。
この8700に続き2006年春に登場した「BlackBerry 8707」シリーズは通信方式がついにW-CDMAに対応し、より快適に利用できるようになりました。プッシュメールレベルであれば、EDGEネットワークでも十分でしたが、ブラウザーの利用はやはり3Gの高速回線が求められます。
日本向けには「BlackBerry 8707h」として日本語化されたモデルがドコモから発売。日本でもBlackBerryが利用できる日がやってきました。
BlackBerry端末は、QWERTYキーボードを搭載しながらも、ショートカットキーとジョグホイールのおかげで片手でもほとんどの操作ができました。
しかし、2006年秋に登場した「BlackBerry 8100」では、伝統のひとつであったジョグホイールを廃止し、新たにトラックボールを搭載したのです。
これは7100シリーズ同様に細身のボディースタイルとしたことと、アプリを多用することを考えてのもの。トラックボールは半透明の白色でバックライトが光り、まるで真珠のようなイメージからこの8100は「Pearl」の名前が付けられました。
Pearlもひとつのキーにふたつの文字を割り当てる変態キーボードでしたが、形状はスタイリッシュなものになっています。
その後、カラーバリエーションを増やし、女性を意識した赤やピンクも投入。Pearlシリーズは「8110」「8120」「8130」と後継機も次々と登場しました。
一方、従来スタイルの製品は2007年に「8300 Curve」が登場。こちらもトラックボールを搭載します。通信方式はGSM/EDGEのみとなり、「8310」「8320」「8330(CDMAバージョン)」と派生モデルも登場します。
本体デザインはややカジュアルな印象となり、価格も若干抑えられました。8707シリーズがビジネス層向け、Curveシリーズはメッセージをより楽しみたい若い層向けと、製品をつくりわけたのです。Pearlも含めた3つのシリーズ展開により、BlackBerryの強さは本物になっていきました。
このころになると、他メーカーからもBlackBerryスタイルの製品が登場します。有名になったところでは、サムスンのブラックジャックやHTCのSシリーズ、HPのiPAQなどWindows Mobile陣営はもちろん、ノキアからもE61が登場。BlackBerryが生み出したQWERTYキーボード端末の需要は世界的に広がっていきました。
一方では、2007年にiPhoneが登場し、スマートフォンの概念を一変させてしまいます。BlackBerryはこれらの陣営に対して、どう対抗していったのでしょうか? その秘密兵器が登場するのは翌年、2008年の5月だったのです。