スマホメーカー栄枯盛衰~山根博士の携帯大辞典

カメラ機能無しスマホで地位を確立したシンガポール・iNO mobile

文●山根康宏

2019年01月11日 19時00分

 最初のモデルは2014年12月に発表された「SCOUT T2」。フィーチャーフォンのSCOUTに続き防水防塵対応のアクティブ系スマートフォンで、最大の特徴はカメラを非搭載にしたこと。工場などカメラ利用が制限される場所での使用や、軍関係向けに開発されました。すでにシンガポールでも低価格スマートフォンは多数販売されていたことから、あえてカメラを不要とする市場向けの製品を開発したのです。

 これに加え翌2015年には普通のデザインのスマートフォン「iNO 3」を発表しました。4.2型ディスプレーの小型端末ですが、こちらもカメラは搭載していません。これ以降iNOのスマートフォンは「カメラ無し」が一つの特徴となっていきます。2016年にはタブレットにも進出し「iNO Tab 7」を投入。こちらはさすがにカメラが内蔵されていました。

普通のスマホ「iNO 3」はカメラ無しだった

カメラ無しスマホに特化、4Gフィーチャーフォンも

 年配者向けフィーチャーフォンは機能アップの必要がないことから新製品の投入はされていませんでしたが、2017年に入ると3G対応の「Simple 3G」を発売。LEDライトを搭載しており東南アジアの新興国での利用を強く意識しました。またフィーチャーフォンは翌年2017年10月にも「Basic II 4G」を投入。こちらは小型のキャンディーバースタイルで、4G環境の整ったシンガポールや台湾などをターゲットにした製品です。

 2017年7月に発表されたスマートフォン「S9」は年配者向けの楽々スマートフォンという位置づけで、5.5型の大型ディスプレーにホームボタンなど3つの物理ボタンを搭載、カメラも1300万画素を内蔵し他社のスマートフォンでは使いにくいと考えている年配者向けの製品でした。外部コネクタもUSB Type-Cとし、最新のアクセサリを使うことができます。「防水」「カメラレス」に加え「シニア向け」という製品を増やし、iNOの端末ビジネスはしっかりと成功の道を歩んでいきます。

シニア層をターゲットにした「S9」

 WEBで過去を調べると「Scout 1」などのモデル名も見つかるのですが、販売状況が見えません。シンガポール国内だけで販売されたのか、あるいは新興国の一部だけに投入されたのかもしれません。小さいメーカーだけに小回りも聞くでしょうから、試作的意味合いの製品も過去にあったとしても不思議ではないでしょう。シンガポールだけの販売であれば数は出なかったでしょうが、東南アジアや台湾でもブランド認知されるようになり、販売数は事業を継続できるほどの一定数に達しているようです。

 アクティブ系端末は2017年に「SCOUT S3」を発売し、SCOUT 2、「SCOUT 2S」に次ぐシリーズモデルとして一定の固定客をつかんでいるようです。シンガポールの軍隊で公式に使用許可を得ているため、軍関係者もiNOのスマートフォン愛好者が多いのでしょう。

 2018年には最新のカメラレススマートフォン「SGiNO 6」が発売になりました。これまで製品名にはiNOを使っていましたが、シンガポール企業であることをアピールするためか新たにSGiNOという名前をつけています。5.2型1920x1080ドットディスプレー、MT6750Tにメモリ4GB、ストレージ64GBと、358シンガポールドル(約2万8900円)の価格を考えると悪くないスペックで、ワイヤレス充電にも対応します。

最新のカメラレススマホ「SGiNO 6」

 iNOはこれからも決して表に出てくるメジャーメーカーになることはないでしょう。しかしシンガポールを中心にニッチな消費者向けの製品を作り続けることで、大手メーカーとの競争を回避しながら生き延びていくと思われます。台湾や東南アジアを旅行したときは、ぜひiNOの製品を探してみてください。

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