Apple Watchでも「最新」と「ベースライン」を使い分ける
Apple Watchも半導体技術と無縁ではない。
新型の「Apple Watch Series 6」は、新しいSoCである「S6」を搭載した。これはiPhone 11に搭載されている「A13 Bionic」をベースとしており、速度が向上しただけでなく、なんとUWBでの通信を実現する「U1」も搭載している。今はその用途が判然としないが、新iPhoneと共に発表と噂される「忘れ物防止チップ」などのテクノロジーと組み合わせると、ちょっと面白いことが生まれそうな予感がする。
血中酸素濃度をはかるセンサーを搭載して来たのも、S6による性能アップや消費電力コントロールとの関係もありそうだ。
そして、第8世代iPad同様の面白さがあるのが、低価格版として用意された「Apple Watch SE」だ。SoCとしては昨年モデルの「Series 5」と同じ「S5」を使いつつ、ECG(心電図検査機能)や血中酸素濃度計測などのセンサーを省いてコストダウンしている。エクササイズや活動量計測、アプリ活用で必要な「演算能力」は新しい環境で維持しつつ、コストはグッと下げた。
より安価な「Series 3」は現行製品として残っているが、こちらはそろそろ性能の陳腐化が起きており、そのうち生産が終わっても不思議ではない。新しいベースラインを引くために「自社開発で昨年から利用していて、コスト的な勘所も見えているSoC」を使う、というのは、完全にアップルのお家芸になってきた。
これらのビジネスモデルはiPhoneで磨かれたものだが、それがiPadやApple Watchにも活用され、さらには今後Macにも広がる。
今のアップルの姿そのものといっていいではないか。