山根博士の海外モバイル通信

サムスンもリバイバル路線に! Galaxy Buds Proが昔のケータイそっくりになるケース

文●山根康宏 編集●ASCII

2021年01月21日 10時00分

昔のケータイ風のGalaxy Buds Proのカバー

 最新モデルばかりが登場するモバイル業界の中で、ノキアは過去に大ヒットした携帯電話のリバイバルモデルを次々と出して話題になりました。今度はサムスン電子が似たような動きを見せています。

 先日「Galaxy S21」が発表されましたが、同時にワイヤレスヘッドフォン「Galaxy Buds Pro」もリリースとなりました。今やあらゆる企業が小型の分離式ヘッドフォン市場に参入していますが、アップルのAirPodsはケースを保護するカバーも様々な物が出ており、持ち運ぶヘッドフォンの外観も好きなデザインに着せ替えすることができます。

サムスンの小型ワイヤレスヘッドフォン最新作「Galaxy Buds Pro」

 サムスンもGear Budsシリーズ用のカバーをいくつか出しており、サードパーティーからもAirPodsほどではないにしろいくつかカバーが出ています。今回の最新モデル、Galaxy Buds Pro用にはサムスンが韓国で限定カバーを投入します。しかもそのデザインは昔のサムスンの大ヒット携帯電話そのもの。ヨーロッパやアジア、そして韓国で人気となった「SGH-T100」「SGH-E700」の外観をデフォルメしているのです。

昔のケータイ、T100(右)とE700(左)をリバイバルさせたデザインのケース

 これを見て「懐かしい」と思う人もいるかもしれません。「知ってる!」という人はかなり古くからの海外ケータイマニアですね。筆者はE700が出てきたことをしっかり覚えています。2003年冬、香港のスマホビル(当時はケータイビル)「先達廣場」に輸入品が入ってきたときの価格は人気が高くプレミアがついて10万円強。パッケージも立派な化粧箱で高級モデルとして出てきました。ダークブルートシルバーのツートンカラーに細身の折り畳みスタイル、フリップカバー上部の液晶表示もクール。当時最先端のデザインで、どことなくメルセデス・ベンツに似た印象から韓国では「ベンツフォン」とも呼ばれました。

クールでかっこよくておしゃれだったE700

 一方のT100は2002年発売のフリップ式スタイル。当時は日本はもちろん、韓国でも折りたたみ型のケータイが人気でしたが、このT100はサムスン初のカラーディスプレーを搭載したモデルで、今でいえば超最新技術を搭載したハイスペックな製品というイメージです。とはいえ、まだカメラは搭載されていません。韓国では携帯電話向けコンテンツサービスが始まった頃で、カラー表示でニュースなどを見ることができました。海外ではWAPサービスが始まりましたが、日本や韓国ほどのいい通信環境に恵まれていなかったこともありコンテンツサービスの普及はなかなか進まなかった時代です。

カラーディスプレーが珍しい時代のハイスペックケータイT100

 ところでこの2つの携帯電話には、先日、2020年10月に亡くなられたサムスン電子会長のイ・ゴンヒ(李健煕)氏が大きくかかわっています。イ・ゴンヒ氏がいなければ今のサムスン、今のGalaxyスマートフォンは生まれなかったのです。

 1987年にイ・ゴンヒ氏はサムスン電子の二代目会長に就任しました。サムスンは1990年代に家電の海外輸出を積極的に展開。日本メーカーの牙城を崩しにかかります。ところが実際に海外の家電量販店に行ってみると、隅でホコリをかぶり2流品として売られているのがサムスンのTVでした。安さで海外進出したものの、その分品質の悪い製品が多かったのです。

 イ・ゴンヒ氏は1993年3月にフランクフルトにサムスングループ経営者200名を集め「妻と子供以外すべてを変えよう」と、品質重視の新経営宣言を打ち立てます。しかしそう簡単に社内の意識が変わるはずはなく、その後も製品不良率は10%を越えたままでした。

 そこで1995年、イ・ゴンヒ氏はリコールとなった携帯電話15万台などを韓国のグミ(亀尾)市の工場に山積みにし、社員の目の前で火をつけて燃やします。「今の意識では2流、うまくやっても1.5流。意識を変えなくては生き残れない」。自分たちの作った製品が目の前で燃え上がるのを見て、ようやく社内が大きく変わったといわれています。

 T100とE700はイ・ゴンヒ氏が開発にかかわったこともあり、韓国では「イ・ゴンヒフォン」というニックネームが付けられています。どちらも販売台数は1000万台を越え、サムスンの携帯電話の海外での存在感を大きく高めました。その後スマートフォンシェア1位になったのも、同氏の意識改革抜きではありえなかったのです。

故・イ・ゴンヒ会長の肝いりで開発されたT100をしのぶことができる

 韓国ではこの2つのケースを「Anycall T100型」「Anycall E700型」と名付けていますが、当時のサムスンは携帯電話のブランド名をAnycallとしていました。とはいえAnycallブランドは海外ではあまり浸透せず、みな「サムスンの携帯電話」と呼んでいました。

構造は簡単で内部にBuds Proのケースをそのまま入れる

 ということでこの2つのカバー、若者には新鮮なイメージ、40代以上の人には懐かしさを呼び起こすデザインですが、サムスンの黎明期からの歴史を知っている人にとっては、同社の今の躍進の立役者として、感慨深いものを感じるかもしれません。残念ながら非売品で韓国でGalaxy Buds Proを買った際に無料でもらえるそうですが、ぜひアジアやヨーロッパで別売してほしいですね。

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