通信機器大手のエリクソンは2月27日(現地時間)、MWC 2023の自社ブースより、オンラインで発表会を開催した。同社のCEO、Börje Ekholm氏がインテルのトップと対談して、O-RAN Allianceをはじめとしたエコシステムの重要性を強調した。
まだまだ普及期の5G
5Gの浸透と用途の多様化がキャリアの収益も改善させる
Ekholm氏はまず、モバイルの契約数が85億に達していることに触れ、「モバイルネットワークはすべてのものを接続してエンパワーする。これほど安価でコスト効率の良いテクノロジーはない」とし、これまで産業界が果たしてきたデジタル化が「5Gにより加速するだろう」と語った。
オペレーターを支援する技術として、エリクソンのCloudRANポートフォリオが柔軟性のある展開が可能になると話す。それだけでなく、業界全体が向かっているオープン化に向けてもCloudRANは重要になるという。「モバイル業界は重要な資産を持っている。今後、クラウドやAIなどを活用するために、ネットワークの標準化を進めていく。これにより、最高の性能が実現し、イノベーションを活性化し、グローバルにスケールができる」。
モバイルネットワークでは現在、O-RAN AllianceとしてRANのオープン化が進んでいる。エリクソンも同団体に参画しているが、この日はオープンなRANで協業しているというインテルCEO、Pat Gelsinger氏がゲストとして登場した。
Gelsinger氏は、「コネクティビティーを加速するためには、ネットワークを変えていく必要がある。クラウド化、ソフトウェア化が必要で、これによりスケールを提供できる」と述べ、発表したばかりの「vRANブースト対応第4世代Xeonスケーラブル・プロセッサー」を紹介した。
「主要な機能をアクセラレートすることで、ソフトウェアの高速化をサポートする。これがネットワークのパフォーマンス改善につながる」とGelsinger氏。性能、消費電力効率ともに倍レベルの改善が期待できるという。
5Gの商用ネットワークは現在、世界で235を数える。エリクソンによると、5Gが先行している上位の20市場では、5Gの浸透率と収益の相関関係が見られるという。
ユースケースとしては、固定ブロードバンドを補うFWA、コンシューマー側ではクラウドゲーミング、XRなどがみられるという。特にXRは「2030年までに最大10億台のデバイスがオンになると予想されている」と同社でUnifing Value Propositionマーケティングマネージャーを務めるKim Shieh氏。法人向けでもプライベート/ローカル5Gなどが進んでいるとした。その5Gの浸透率はまだ20%程度で、「まだまだ成長の余地がある」(Shieh氏)とする。
Ericssonブースでは、6Gの可能性を思わせるデモも見せているという。6Gの周波数帯と考えられているサブテラヘルツ帯を使ったパフォーマンスのデモとしては、実機を使って102Gpbsを超えるスループットを実現していた。
バーチャルイベントでは、Ericssonの本社をデジタルツインが移動するというデモを紹介した。6Gのベースバンドを経由しており、デジタルツインが動くのに合わせて性能や速度が変化するという。エリクソンのラボではこのようなデジタルツイン技術を使って新機能のテストをおこなっているだけでなく、AIモデルのトレーニングにも使っているそうだ。
デモエリアでは、マサチューセッツ工科大学(MIT)との提携により、MITが開発するセンサーファイバーを編み込んだセーターやベストも展示する。数千ものセンターが搭載されており、ヘルスケアなど様々なユースケースが考えられるという。
現時点では、ケーブルやバッテリーが必要だが、無線信号からエネルギーを供給する技術を開発しており、将来的にはバッテリーが不要になるという。「充電が不要になると、6Gの可能性が大きく広がる」とデモのスタッフは語った。
EricssonでCTOを務めるErik Ekudden氏は、「6Gは2030年頃では」と話し、まずは5G、5G Advancedと進めていき、リサーチをして、要件などを固めていくことになるとした。