8月下旬、中国・東莞市でファーウェイの研究開発施設などを見学する機会を得た。
取材の主目的は、ウェアラブルデバイスに搭載される「TruSense」という健康モニタリングシステムの発表会だったが、深圳市に足を延ばして、ファーウェイのフラッグシップストアやスマートホームのショールームを取材する機会もあった。
日本では、ここ数年スマートフォンを発売しておらず、製品ラインアップは縮小傾向にある同社だが、本拠地の中国では、スマホの売れ行きが復調し、スマートウォッチやスマート家電など、コンシューマー向けの製品も充実させているようだ。また、自動車メーカーと組んで、電気自動車の開発にも力を入れている。中国での“ファーウェイの現在”を見てきた。
ファーウェイの研究開発拠点は
テーマパークのように欧州の街並みを再現
「HUAWEI TruSense」の発表会の翌日に取材陣が案内されたのは、東莞市の松山湖エリアにある広大なキャンバスだ。
ファーウェイは中国・深圳市に本社がある。深圳は多くのグローバル企業が本社を構え、「中国のシリコンバレー」とも呼ばれる街で、同市の郊外にも巨大な本社キャンパスがあるのだが、そこから2018年に研究開発部門を移転させたのが松山湖キャンパスだ。
松山湖キャンパスの広さは148万m2。東京ディスニーランドの約3倍に相当する。ちなみに、長崎のハウステンボスは152万m2だそうなので、ハウステンボスに行ったことがある人は、同じ程度の広さをイメージするとわかりやすいだろう。
キャンパスは12のエリアに分かれていて、オックスフォード(イギリス)、ブルゴーニュ(フランス)、ベローナ(イタリア)など、それぞれヨーロッパの街並みを模して設計されている。
お城のような建物があったり、クラシカルな大学や博物館のような建物があったり、さながらテーマパークのような趣きだ。敷地内には3路線の鉄路が敷かれ、従業員は電車で移動できる。なお、運転手付きのカートやレンタル自転車などもあった。
ここには約3万人が従事していて、近隣の住宅や、深圳市から通勤しているとのこと。深圳市からは車で約1時間ほどだが、毎日300便のシャトルバスが運行されているのでそれが利用できる。また、キャンパス内には、約1000台を収容する地下駐車場が12ヵ所あるという。
取材に訪れたのは平日の午前中。多くの人が勤務していたはずだが、建物間を移動する人は少なく、閑散とした雰囲気だった。電車に乗っている人は、ファーウェイの取引先と思しき人で、我々と同じようにガイドの案内を受けていた。社員向けの食堂とは別に、豪華なレストランもあり、来客をもてなす場にもなっているようだ。
今回の取材では、研究開発施設の内部を見ることはできなった。ガイドの説明によると、内部まで欧州風というわけではなく、一般的なオフィスや研究室だったりするらしい。
唯一、内部まで公開されたのが図書館だ。フランスの国立図書館を模してデザインされたそうで、天井が高く、細部に細かい細工が施されていて、クラシカルで豪華な雰囲気。世界から集めた約11万冊が所蔵されていて、日本の図書もたくさん見かけた。
一見、実用的な図書館ではなく、接客のための観光施設という印象を受けたが、社員は自由に利用して、本を借りたりもできるらしい。キャンパス内にはスポーツジムもあったので、仕事を終えてから利用する人が多いのかもしれない。
スマートホーム事業も積極的に展開
深圳市の中心からは少し離れた(されど、結構賑わっていた)場所にあるスマートホームのショールームにも案内された。ファーウェイだけではなく、広東省と深圳市の政府機関、ハウスメーカー、住宅設備機器メーカーなどが共同で出展している施設らしく、高層ビルの2フロアを使って展示されていた。
ファーウェイの共通プラットフォームではあるHarmonyOSをベースとするシステムについて紹介を受け、実際にスマート家電を設置したモデルルームを見学することができた。
スマート家電は多くのメーカーが手掛けているため、個々の製品や機能に驚くことはなかったが、ファーウェイは家中の電気製品をトータルでコントロールできるシステムを提供できるのが強み。中国ではマンションも内装されていない状態で販売されるのが主流なので、集合住宅でもスマートホームは導入しやすいようだ。