ファーウェイフラッグシップストアでの看板商品はEV
最後に取材に訪れたのはファーウェイのフラッグシップストア。深圳市内では最も広い店舗で、敷地は1万m2もあるという。その店頭に並んでいたのはスマホでもスマートウォッチでもなく自動車だった。
ファーウェイが近年、中国市場で最も力を入れているのが自動車事業だ。自社で自動車を開発・製造するのではなく、自動車メーカーと協業し、電気自動車のシステムや車載デバイスなどを提供するスタンスをとっている。ファーウェイが中心となってHIMA(Harmony Intelligent Mobility Alliance)という団体が設立され、中国の主要自動車メーカー4社が参加している。
展示されていた自動車はHIMAに参加するメーカーのもので、HarmonyOSによって制御される。安価なもので30万元(約600万円)、高いものは50〜60万元(約1000〜1200万円)もするそうだが、売れ行きは好調とのこと。実際、深圳市や東莞市では電気自動車を見かけることが多かった。
電気自動車(ハイブリッド車を含む)とガソリン車とではナンバープレートが異なり、電気自動車は政府からの助成もあり、安く購入できるそうだ。
この店では、予約すると自動車の試乗もできる。われわれ取材陣は運転はしなかったが、後部座席に乗車して、乗り心地を体験させてもらうことができた。
試乗させてもらったのは、AITO(問界)という新興メーカーの「M9」というモデル。HIMAの中では最新で最高グレードのハイブリット車だ。満充電からの航続距離は、バッテリーだけを使う場合は600kmで、ガソリンを使う場合は約1300kmとのこと。
中国では自動運転システムが急速に整備されており、すでに中国全土の95%の道路が自動運転に対応しているという。ただし、カーナビに対応する道路における普及率なので、郊外の狭い道などは含まれないようだ。
ナビ画面には走行中の車だけでなく、横断歩道を渡る人のイラストなども立体的に表示され、周囲の状況を視覚的に確認できる仕組み。
中国の道路には、それだけの数のカメラが設置されているということだろう。走行中は揺れが少なく静かで、運転手がハンドルを握らなくても、車線変更したり、赤信号で止まったりする。
中国にも、安全のために一定時間おきにハンドルに触れないといけないというルールがあるようだが、ほぼハンズフリーで目的地に向かえるそう。日本でも自動運転の研究開発が進んでいるが、それが一般的になるまでには、まだまだ長い年月がかかりそうだ。中国は一歩も二歩も先に進んでいる印象で、通信インフラを手掛けるファーウェイがその進歩に寄与する部分も少なくないようだ。
なお、HIMAの電気自動車は車内の快適性にも注力されている。乗車する際に足を載せるステップが出てきたり、座席にマッサージ機能が付いていたり、大きなスクリーンを出して、後部座席から映画などを楽しめたりといった機能が搭載されていた。
店内には、スマートフォンやウェアラブル製品、スマート家電などを展示・販売するコーナーもあり、レクチャー用のスペースもあった。
スマホは、日本でも人気だったHUAWEI Pシリーズの後継となる「HUAWEI Pura 70」シリーズや、折りたたみ式の「HUAWEI Mate X3」「HUAWEI Pocket 2」など展示され、注目を集めていた。なお、三つ折りの「HUAWEI Mate XT」は取材した時点では発表されておらず、見ることができなかった。
ちなみに、万象天地という繁華街にあるファーウェイの店にも行ったが、そこでも店頭に展示されていたのは自動車だった。日本ではファーウェイは、スマートウォッチのメーカーという印象が濃くなってきているが、中国では住宅機器から自動車までを取り扱う巨大メーカーとして成長を続けているようだ。