本国ではスマホが復調&EV事業を本格化 中国での“ファーウェイの現在”を見てきた (2/2)

文●村元正剛(ゴーズ) 編集● ASCII

2024年10月26日 12時00分

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ファーウェイフラッグシップストアでの看板商品はEV

 最後に取材に訪れたのはファーウェイのフラッグシップストア。深圳市内では最も広い店舗で、敷地は1万m2もあるという。その店頭に並んでいたのはスマホでもスマートウォッチでもなく自動車だった。

ファーウェイ

深圳市内にあるファーウェイのフラッグシップストア。自動車の試乗がしやすいように、市内中心部から少し離れた場所にあった

 ファーウェイが近年、中国市場で最も力を入れているのが自動車事業だ。自社で自動車を開発・製造するのではなく、自動車メーカーと協業し、電気自動車のシステムや車載デバイスなどを提供するスタンスをとっている。ファーウェイが中心となってHIMA(Harmony Intelligent Mobility Alliance)という団体が設立され、中国の主要自動車メーカー4社が参加している。

 展示されていた自動車はHIMAに参加するメーカーのもので、HarmonyOSによって制御される。安価なもので30万元(約600万円)、高いものは50〜60万元(約1000〜1200万円)もするそうだが、売れ行きは好調とのこと。実際、深圳市や東莞市では電気自動車を見かけることが多かった。

 電気自動車(ハイブリッド車を含む)とガソリン車とではナンバープレートが異なり、電気自動車は政府からの助成もあり、安く購入できるそうだ。

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店頭には5台の電気自動車が展示されていた。この3台は幅広いユーザー向けで、価格は30万元(約600万円)程度

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こちらの2台は上位モデルで、手前は約50万元(約1000万円)、後方の車は約60万元(約1200万円)

 この店では、予約すると自動車の試乗もできる。われわれ取材陣は運転はしなかったが、後部座席に乗車して、乗り心地を体験させてもらうことができた。

 試乗させてもらったのは、AITO(問界)という新興メーカーの「M9」というモデル。HIMAの中では最新で最高グレードのハイブリット車だ。満充電からの航続距離は、バッテリーだけを使う場合は600kmで、ガソリンを使う場合は約1300kmとのこと。

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試乗させてもらったAITO M9

 中国では自動運転システムが急速に整備されており、すでに中国全土の95%の道路が自動運転に対応しているという。ただし、カーナビに対応する道路における普及率なので、郊外の狭い道などは含まれないようだ。

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フロントパネルには大型モニターが並ぶ

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カーナビでの表示イメージ。自動運転の地図には「高徳地図」が用いられているそう。中国国内に特化した地図で、「百度地図」を抜いて、現在中国で最も使われている地図だ

 ナビ画面には走行中の車だけでなく、横断歩道を渡る人のイラストなども立体的に表示され、周囲の状況を視覚的に確認できる仕組み。

 中国の道路には、それだけの数のカメラが設置されているということだろう。走行中は揺れが少なく静かで、運転手がハンドルを握らなくても、車線変更したり、赤信号で止まったりする。

 中国にも、安全のために一定時間おきにハンドルに触れないといけないというルールがあるようだが、ほぼハンズフリーで目的地に向かえるそう。日本でも自動運転の研究開発が進んでいるが、それが一般的になるまでには、まだまだ長い年月がかかりそうだ。中国は一歩も二歩も先に進んでいる印象で、通信インフラを手掛けるファーウェイがその進歩に寄与する部分も少なくないようだ。

 なお、HIMAの電気自動車は車内の快適性にも注力されている。乗車する際に足を載せるステップが出てきたり、座席にマッサージ機能が付いていたり、大きなスクリーンを出して、後部座席から映画などを楽しめたりといった機能が搭載されていた。

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スクリーンに投影して映画を楽しむこともできる

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電動のマッサージを受けながら、こんなラクな姿勢で乗車することも

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扉を開けるとステップが出てくる車種も

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サイドミラーではなく“サイドカメラ”を搭載し、左右後方の様子を映像で確認できる車もあった

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試乗させてもらった同じ車種の充電口。約5分で200kmを走れる急速充電が可能

 店内には、スマートフォンやウェアラブル製品、スマート家電などを展示・販売するコーナーもあり、レクチャー用のスペースもあった。

 スマホは、日本でも人気だったHUAWEI Pシリーズの後継となる「HUAWEI Pura 70」シリーズや、折りたたみ式の「HUAWEI Mate X3」「HUAWEI Pocket 2」など展示され、注目を集めていた。なお、三つ折りの「HUAWEI Mate XT」は取材した時点では発表されておらず、見ることができなかった。

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多目的に使えるイベントスペース。Apple Storeに似た印象だが、中国のスマホメーカーの大型店舗はこのようなスペースを設けていることが多い

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現在の主力商品として「HUAWEI Pura 70」シリーズを展示。画面サイズやスペックが異なる4モデル展開となっている

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最上位モデルの「HUAWEI Pura 70 Ultra」は、時速300kmで動く被写体を鮮明に撮影できることを特徴としている。店頭では高速で回せるプレートが用意されていて、それで試すことができた。シャッタースピードが速いだけでなく、撮影後に素早く鮮明な画像が合成される仕組みになっているようだ

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折りたたみ式の「HUAWEI Mate X3」

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開いたときの薄さが5.3mmで“世界最薄”をうたっていたが、その後に発売された「Pixel 9 Pro Fold」(5.1mm)に抜かれた

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フリップ型のハイエンドモデル「HUAWEI Pocket 2」

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比較的手頃な「HUAWEI nova Flip」を手に取る人も多かった

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スマートウォッチや交換ベルトもあった

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日本でも販売されている「HUAWEI WATCH ULTIMATE DESIGN」(日本での価格は45万9800円)は自由に触れないようにケースに入れて展示されていた

 ちなみに、万象天地という繁華街にあるファーウェイの店にも行ったが、そこでも店頭に展示されていたのは自動車だった。日本ではファーウェイは、スマートウォッチのメーカーという印象が濃くなってきているが、中国では住宅機器から自動車までを取り扱う巨大メーカーとして成長を続けているようだ。

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