サムスンGalaxyは“使える”AIに注力! 進化を支える日本の研究所を取材

文●中山 智 編集●ASCII

2025年04月02日 12時00分

 サムスンは3月31日、横浜市内にあるサムスン日本研究所にて、プレス向けの特別インタビューを開催。同社が注力する「Galaxy AI」および「Bixby」に使われている日本語AI技術の開発戦略と最新状況について、サムスン日本研究所 Mobile Solution Lab Artificial Intelligence Part長の赤迫貴行氏が説明した。

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日本語Galaxy AI開発および、Bixbyの日本語版開発を担当している、サムスン日本研究所 Mobile Solution Lab Artificial Intelligence Part長 赤迫貴行氏

AIの日本語化を進めるサムスンの研究施設が横浜にあった

 まずサムスン日本研究所の概要について説明があり、同研究所は日本における韓国サムスン電子の研究開発法人という位置づけで、約30数年前に研究開発組織として誕生。現在、日本国内には横浜と大阪の2ヵ所に研究開発拠点を有している。

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横浜市内にあるサムスン日本研究所

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約30年前から研究開発組織としてスタート

 研究所における研究開発領域は多岐にわたっており、冷蔵庫、洗濯機、エアコンなど「生活家電」をはじめ、テレビ、プロジェクターなどの「ディスプレー」、主にカメラの高画質化などの「画像処理」、ロボット開発などの「メカトロニクス」、Galaxyデバイス向けソフトウェア開発、AI開発、Samsungウォレットの日本語対応などの「モバイルソリューション」、そしてスタートアップ企業との協業による新たな研究開発領域の創出の「オープンイノベーション」と6つの領域に分類される。

 特にモバイルソリューションにおいては、Galaxyデバイスに搭載されるソフトウェアの開発を行なっており、今回の主要テーマであるAI開発もこの領域に含まれる。

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サムスン日本研究所の開発領域

日本語ネイティブの開発は難しく時間がかかる

 日本語AI開発チームは、2023年に初めてソフトウェアの開発チームが同研究所に発足。それまで日本語化などの開発は北京の研究所で開発されており、日本へ開発拠点を移動することで、日本語ネイティブの開発担当者が増え、開発の質・スピードともにアップしているという。

 ただし、どれくらい日本語ネイティブの開発担当者が増えたかどうか、具体的な言及はなかった。

 翌2024年のGalaxy S24の発売に合わせてGalaxy AIが搭載された際には、その日本語対応に同研究所が深く関与。その後もGalaxy AIの機能改善が継続されるとともに、Bixbyの日本語版開発も進められ、2025年2月にはGalaxy S25の発売とともにBixby日本語版が初めてリリースされたという経緯が語られた。

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日本でAI関連の開発がスタートしたのは2年前

 Bixbyの登場は2017年3月に発表された「Galaxy S8/S8+」からなので、約8年もかかっている。これはサムスンだけに限ったことではないが、グローバル展開しているデバイスやサービスがいかに「その国で使えるかどうか」に、ネイティブなリージョンでの開発環境が必要かというのがよく分かる。

サムスンのAIはオンラインとオンデバイスのハイブリッド

 Galaxy AIは、すべての処理をオンデバイスで実行できるオンデバイスAIと、クラウド上で高機能なAIを実現できるクラウドベースAIの2つを活用するハイブリッド型のAI技術であると説明された。

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Galaxy AIはハイブリッド型

 オンデバイスAIは、軽量、安全、高速であり、ネットワーク環境に左右されないという利点がある一方で、デバイスのリソース制約から高機能化には限界がある。クラウドベースAIは、大規模AIモデルとクラウドサービス連携により高機能を実現できるが、ネットワーク環境への依存性がある。

 現在、サムスンはオンデバイスAIの開発に注力しており、特に多言語対応においては、各言語のネイティブエンジニアや専門家を配置し、その言語に最適化した開発を推進している。サムスン日本研究所では、この戦略のもと、日本語AIの開発に力を入れている。

 具体的なGalaxy AIの日本語対応について、オンデバイスAIを活用した通訳機能を例に説明。英語の「Hello」という発話が、音声認識エンジンによってテキスト化され、機械翻訳エンジンを通じて日本語の「こんにちは」というテキストに変換。最後に音声合成エンジンによって「こんにちは」という音声として出力されるという一連の流れが解説された。

 サムスン日本研究所では、この一連の流れのうち、日本語音声認識エンジン、日本語入出力の機械翻訳エンジン、日本語音声合成エンジンの開発に深く関わっている。これらのAIモジュールは言語パックとしてGalaxyストアを通じて提供され、ユーザーのデバイスにダウンロード後、オンデバイスで機能する。品質向上のため、定期的なアップデートも実施されている。

同音異義語や同形異音語が
日本語AI開発の壁として立ちはだかる

 日本語AI開発における特有の難しさについても赤迫氏は言及。「同音異義語の多さ」「文脈による人名表記の特定困難性」「アラビア数字・英語の読み方の不定性」「同形異音語の多さ」「ハイコンテクストな言語特性」「スペースによる単語区切りの不在」などが挙げられ、これらの課題を克服するための取り組みが続けられていることが説明された。

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AI処理における、日本語特有の難しさ

 Bixbyは、ユーザーの要求に応じてタスクを実行するAIアシスタントであり、同研究所ではBixbyを構成するコンポーネントの開発を行っている。ユーザーが「ランニングの記録を開始して」と発話した場合、音声認識エンジンがテキスト化し、言語理解コンポーネントがユーザーの意図を理解し、タスク実行コンポーネントがSamsung Healthを起動してランニング記録を開始する。その後、言語生成コンポーネントが実行結果を自然なテキストとして生成し、音声合成エンジンを通じて音声で応答するという流れが説明された。

 Galaxy AIの通訳機能と同様に、Bixbyでも音声認識エンジンと音声合成エンジンが使用されており、共通の要素技術を用いることで開発の効率化を図っている。

 Bixbyの開発は2023年11月にスタートし、Galaxy AIとは異なり、ほとんどのコンポーネントがクラウドで動作する。サポートするタスクは、デバイスの機能呼び出し(電話、メッセージ、設定など)とサービス呼び出し(ウェザーニューズ、Netflixなど)に大きく分類される。

 品質向上と機能拡張のため、定期的にコンポーネント単位でのバージョンアップが行なわれている。直近では、Samsungウォレットとの連携強化や、複数のアクションを連携させる機能の実装などが行なわれたという。Bixbyはチャットボットとしての対話機能よりも、具体的なタスク実行に重点を置いている点が特徴であると強調された。

今後もより良いユーザー体験を提供していく

 今後の展望として赤迫氏は、高品質で利便性の高い日本語AIの開発を通じて、Samsung Galaxyユーザーの満足度向上を目指すという目標を改めて示した。技術開発は常に進化しており、今後もより良いユーザー体験を提供できるよう努めていくとした。

 説明会後半の、事前質問に対する質疑応答では、Galaxy AIの文字起こしがリアルタイムにできるかという質問に対し、現時点ではリアルタイムではなく、ある程度話した段階で認識が始まる仕様であると回答。品質向上のための措置であるとのこと。

 また、シャオミなどがGoogleと協業してAI機能を強化している状況を踏まえ、サムスンとしての差別化戦略については、グローバルな戦略に関わるため明言は避けられたものの、様々なAIの状況を踏まえ、グローバルに戦略を決定し遂行していくとの回答があった。

 競合他社のスマートフォンに搭載されているAI機能と比較したGalaxy AIの強みについては、具体的なベンチマークは公表していないものの、旅行などの具体的な利用シーンを想定した最適化や、オリンピックのような大きなイベントに合わせたフレーズの強化など、タイムリーな対応をしている点が強みであるとしている。

日本語化へのタイムラグは
日本人開発者のお陰で縮まっている

 英語などほかの言語と比較した際の日本語対応のタイムラグについては、同研究所に日本語ネイティブのエンジニアが多数いることが大きなメリットであり、以前は中国で行なわれていた日本語音声認識開発と比較して、問題の早期発見と解決、開発スピードの加速が実現できていると説明。

 日本語に特化した品質についても、日本語ネイティブエンジニアが多数所属していることから、他社と比較しても遜色ないと考えているとの見解が示された。

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日本に開発拠点があることが、今後の展開に大きく寄与するとのこと

 また、Galaxyデバイスにおける英語圏と日本での機能提供の同時性については、完全に同時ではない場合もあるものの、基本的にはグローバルで同様のスケジュールで開発が進められているとの回答があった。通訳機能のように、複数の言語で同時に利用できることが前提となる機能は、特にグローバルでの足並みを揃えて開発が進められているという。

 BixbyやGalaxy AIの日本語版における特徴や、他言語版との機能差については、Galaxy AIの機能差は基本的にないものの、品質の度合いは言語によって異なるとのこと。ただし多言語対応に注力しており、各拠点で品質を維持するよう努めていると説明があった。

 Bixbyについては、日本語版はリリースされたばかりであるため、長年の開発の歴史を持つ他の言語版と比較して、機能面で不足している部分があるのは事実であり、今後、機能拡充と品質向上を目指していくとした。

 日本語の精度向上のためのデータ収集方法について、データは自動収集と人手を介した収集など、さまざまな方法で集めているが、データ量だけでなく精度が重要であり、効率化と品質維持のバランスが大事であるとのこと。

 また、日本での開発期間はまだ短いものの、今後の精度向上への期待については、技術開発も進んでおり、AIモデルの進化も考慮すると、今後も精度は向上していくと考えて良いとの見解が示されている。

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Galaxyが、さらに「日本で使える」ようになることを期待したい

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