ダム決壊の危機が迫るカリフォルニアから、極寒の上田へ

文●ASCII.jp編集部

2017年02月16日 12時00分

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 バークレーは花の季節。日本のソメイヨシノよりも小ぶりな、でも梅よりももう少し大きい、そんなサクラっぽい花が咲き始めると、カレンダーはどうであれ、春だ! と感じますね。実際に気温も15度を超える日が増えてきて、冬の終わりを感じることができるようになりました。

 そして、日本でも大きくニュースに取り上げられているオーロビルダムの危機です。

 オーロビルダムは米国でも最大のダムで、ここからカリフォルニアの大農業地帯であるセントラルバレーへと、1年を通じて、水を供給できるようになっています。セントラルバレーは、州都サクラメントからサンフランシスコ湾をかすめ、ロサンゼルスの背後まで迫る、およそ5万平方メートルの平らな土地なのです。

 そのセントラルバレーの北部、サクラメントバレーを流れているのがフェザー川。その上流にあるのがオーロビルダムという関係です。

 筆者はバークレーに住み始めて5年が過ぎましたが、2016~17年の冬はそれまでとまったく違っていました。

 そもそも冬のカリフォルニアは、1年分の雨が一気に降るほど降水量が多い時期なのですが、2015年までの数年の冬はほとんど雨が降りませんでした。そのため渇水が深刻化していたのです。

 ところが2016年の秋から、バケツをひっくり返すような雨が降り続き、ここ5年で深刻度を増してきた渇水を一挙に解消しつつあるのです。さすがに降りすぎというレベルですが、今週後半以降も雨の予報となっていて、水位の上昇の行方にまだ予断を許さない状況なのです。

 気温が緩んでくると背後のシエラネバダ山脈の雪解け水も供給され始めるため、雨のシーズンが終わってからも気が抜けないと言えます。

上田の高校へ

 さて。

 今週は東京に出張してます。といっても都内にいることがほとんどなく、1週間のうち、新幹線での出張が2回あります。羽田空港に降り立ったら、そのまま長野県上田市にやってきました。

 2014年に設立し副校長を務めているコードアカデミー高等学校(http://code.ac.jp/)のスクーリングが行なわれるからです。

 本連載でもたびたび登場するこの高校、通信制単位制といういわゆる通信高校です。そのため生徒は、普段は自宅での学習がメインとなります。しかし年に2回、学校に集まって授業を受ける機会があり、これがスクーリングというわけです。

写真は夏のスクリーン時

 プログラミング必修を掲げて設立した学校なこともあり、「情報科に組み込まれているのですか?」とよく質問を受けるのですが、この高校では、独自に設定する科目として必修プログラミングの授業を作りました。科目自体の自由度を高めることと、最新の技術やトレンドをすぐに取り入れられるようにすることを考えると、既存の科目としての設定は難しかったという経緯があります。

 冬のスクーリングでは、プログラミングの授業で取り組んできたマイプロジェクトの発表会があります。生徒が自由にゴールを設定して、それを達成することが目標。となると、学校の授業で扱わなかった膨大な手法や技術をから必要なモノを選んで用いなければならなくなり、独習の習慣のきっかけ作りになっていきます。

 というのも、4年前に学校を企画しているとき、さまざまな現役エンジニアに、「いかにしてプログラミングを学んだか」という質問をして回ったことがあります。その中で印象的だったキーワードが「独学」でした。

 カリキュラム化して教育委員会に資料を出さなければならない身としては、頭を抱えることになるわけです。ただ、それを紐解いていくと、知らない領域にずんずん進んでいける力を身につけていかなければ、なかなか活躍するエンジニアに育っていかない、という示唆でもありました。

 学校という多数の生徒が同時に学ぶ授業のカリキュラムと、自分で学ぶ力を発揮する独学をどう両立させるか。3年間を通じてだんだん見えてきたので、2017年度からは新しい仕組みにチャレンジしてみようと思います。その折にはまたお知らせします。

グローバル人材とはなにかについて考えさせられる

 プログラミングのカリキュラムを作る中で、常に悩んでいるのは、「英語」の存在です。学校でのプログラミングの授業が、学校での英語と同じになってしまっては困るということです。

 日本の学校で教科書通り英語を学んでも、喋れない。言葉が喋れないと使えないのも同然です。そして多くの場合、喋れないからつまらない。日本人は語学学校でも、文法と単語量は優れています。ただ、それだけなのです。プログラミングの授業がそうならないようにと。

 コードアカデミー高校で必修としたプログラミング。もちろん、出身者全員がソフトウェアのエンジニアになるわけではありません。実際に3年生の進学希望を見ていると、文系に進む生徒も少なくないからです。

 グローバル人材は英語が話せるというのは、日本人からすれば当たり前じゃないかというのと同じ考えです。確かに英語が使えることはアドバンテージになります。

 ただし英語が共通言語になりやすいというだけの話なのです。英語が話せることは能力ではありません。実際、カリフォルニアでは、英語以外も共通言語になり得ます。

 たとえば、スペイン語は、移民の土地柄、通じる人が多いです。加えて中国語も便利かもしれません。黄色人種に対して、中国語で話しかけられることも多いほどです。もし自然言語を能力とするならならば3つ以上の言語が流暢でなければならないと言えます。

 プログラミングも「言語」の1つとしてとらえるなら、能力として良いのか悩みます。

 世界中で、プログラミング教育が普及してしまうと、プログラミングも「共通言語の1つ」という位置づけになってしまうのではないか、と思いました。ただ、今は国内外で能力として通用します。もちろん求められるレベルは高いのですが。

 共通言語としてのプログラミングと、能力としてのプログラミング。この2つを意識しながら、また新しい学期へ向けての取り組みを進めていくことになります。

 ちなみに来月は、コードアカデミー高等学校初の卒業生を輩出します。話の続きは、またそのときにでも。


筆者紹介――松村太郎

 1980年生まれ。ジャーナリスト・著者。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。またビジネス・ブレークスルー大学で教鞭を執る。米国カリフォルニア州バークレーに拠点を移し、モバイル・ソーシャルのテクノロジーとライフスタイルについて取材活動をする傍ら、キャスタリア株式会社で、「ソーシャルラーニング」のプラットフォーム開発を行なっている。

公式ブログ TAROSITE.NET
Twitterアカウント @taromatsumura

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