クラウド時代の憂鬱と、オフラインになる体験

文●ASCII.jp編集部

2017年03月05日 09時00分

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 2月最終週、いくつかのクラウドサービスの障害に悩まされました。2月24日に発覚したのは「CloudBleed」問題。以前、OpenSSLのバグを指摘した「HeartBleed」と同じGoogleのセキュリティチームが指摘したことから、「CloudBleed」という名前がつきました。

 こちらはオープンソースのソフトウェアの問題ではなく、CloudFlareという企業のソフトウェアのバグに起因するセキュリティー問題でした。CloudFlareは、コンテンツ配信やセキュリティー対策のサービスを提供する企業で、DoS攻撃を防ぐ仕組みなども提供していました。

 この問題では、CloudFlareを利用しているサービスの顧客情報が流出し、検索エンジンのキャッシュに蓄積されていたという、恐ろしいことが起きていました。CloudFlareによると、2016年9月以降、330分の1のHTTPリクエストが影響を受けているといいます。

 CloudFlareを利用しているのは、Uber、FitBit、OKCupidといった著名企業や、米国でアニメのサイマル配信を行なっているCrunchyRollが含まれます。すべての企業の顧客データが流出しているわけではありませんが、念のため、2段階認証やパスワード変更といった対処をしておいた方が良いでしょう。

 加えて、この原稿を書いている2月28日(米国時間)には、Amazon Web Serviceの障害で、いくつものサービスが止まってしまいました。たとえば筆者がブログを開設しているサービスMediumや、ウェブサービス同士を繋ぐIFTTT(イフト)、ビジネス向けチャットサービスSlackなどが影響を受けています。

 また、AppleのApp Store、Apple Music、iBookstore、iCloud Drive、iCloudバックアップなどのサービスも、Amazon Web Serviceの影響を受けていました。確かにApple Musicでいくつかの曲が再生できなかったり、ストリームが遅く途切れてしまうトラブルがありました。

クラウドって、さらに分かりにくくなった?

 クラウド(Cloud)という言葉は「雲をつかむような話」とは、よく聞くシャレです。ただ、今「クラウド」という言葉を聞くと、過去の定義と少し混乱する部分があるようです。

 たとえば筆者が副校長を務めるコードアカデミー高等学校では、Google Appsあらため、G SuiteとGoogle Classroomを使用して通信制高校の授業が進められています。この例はわかりやすいです。

 普通の学校は、校舎があって、教室があって、フィジカルな”場所”が特定されています。しかし通信高校は旧来は郵送での添削課題が中心でした。郵送先の住所こそ在りますが、どこから課題入りの封筒を発送してもいいし、学習の場所を意識する必要はありません。

 コードアカデミー高等学校では、封書がクラウド上のサービスに置き換わっただけです。ただ、郵送というタイムラグが発生する手段を介さなくなったことで、より場所の概念が薄れたようにも感じます。それ故に、どのように学習が進むのか、どんな学校生活なのか、イメージしにくい、という問題点ははらんでいますが。

 そうした生徒に、クラウドの話をすると、面白い疑問が返ってきます。

 一般の消費者が利用しているクラウドサービスを思い浮かべると、AmazonやGoogle、Appleという具体的な企業名が上がってきます。そのため、過去の「サーバの場所を意識しないで利用できるネットサービス」というざっくりとしたクラウドの定義を見た若い人から、「いやいや、どこのサーバーだか、ちゃんと名指しで特定できているじゃないか」という反論に遭うのです。確かに。

 長時間オフラインにならなくなったことが支えるクラウドではないサービスを使うことの方が、現在のスマートフォンを中心としたインターネットサービスでは希なことというわけです。そのため、ローカルや自前のサーバーと区別する意味で使われていた「クラウド」という言葉の存在価値が薄れていることの現れかもしれません。

 またモバイルデバイスの特性として、処理能力や保存容量が限られていること、端末自体をなくしてしまう可能性があることを考えると、クラウド活用は不可欠と言えます。

 モバイルでのコンピューティングは、使用する場所が動きます。そのため、場所にとらわれない利用はメリットが大きいといえます。我々は普段の生活の中で、長時間オフラインにならなくなったことも、クラウドが当たり前のコンピューティングを支えていると言えます。

 その分、モバイルネットワークを含め、常にオンラインになるためのコストを支払わなければなりませんし、今回のいくつかのクラウドに関する障害の際、セキュリティーやデータを守るための対処をあらかじめ行なっておく必要があります。

フライト前のオフライン支度

 筆者は1~2ヵ月に1度、サンフランシスコから東京へ、飛行機で移動します。飛行機の中は、基本的にはオフラインの環境です。普段オンラインであり続ける生活を続けていると、オフラインになる「準備」が必要になります。

 まず、音楽やビデオはストリーミングできないので、iPhoneやiPadにダウンロードして見られるようにておかなければなりません。必要であれば、空き容量の確保も必要になります。

 また、普段クラウド上のアプリやファイルを編集しているのであれば、MacやiPadにダウンロードし、ローカルで動くアプリで編集できる環境を整えておく必要があります。

 ちょっと暇になったときのために見るWikipediaすら、ダウンロードしてオフラインで読めるアプリを用意しなければなりません。いや、飛行機のエンターテインメントサービスとして、Wikipediaが個人の画面で楽しめる仕組みは、早く導入すべきだと思うのですが。

 ちなみに筆者が普段使っている日本航空のサンフランシスコー羽田便で使われる機材は、機内Wi-Fiサービスを採用しており、9時間前後の飛行時間中は、JALカード決済で16.5ドルでインターネットを容量無制限で利用できます。

 ストリーミングは難しいですが、ファイルのクラウド同期やメール送信くらいであれば十分可能です。スピードは出ませんが、コストは十分に安いレベルに抑えられている、という印象です。

精査すべきオンライン・オフライン・ブレンド

 筆者は定期的に長時間オフラインになる経験があるため、ありがたいことに、オンラインとオフラインの感覚のバランスが取れているように感じます。

 オフラインにならないとしても、必要な資料やファイルは手元のMacやiPadに入れておくようにしているし、音楽も集中して聴きたいアルバムは定期的に手元のデバイスにダウンロードしています。

 米国のT-MobileはApple Musicなどの音楽ストリーミングサービスのデータはカウントされない(無制限)ですが、日本に戻るとT-Mobileの無償ローミングでは初期の3Gレベルの速度ですし、格安SIMも月々3GBしか契約していないので……。

 普通のライフスタイルにあっても、ある程度オンラインとオフラインのブレンドが必要だと感じていますが、例えばスマートホームや自動運転といった、よりセキュリティや安全性に関わるサービスを利用するようになれば、よりシビアにオンライン・オフライン・ブレンドを考える必要があります。

 たとえば、完全に通信を前提とした自動運転システムにしてしまうと、オフラインの場所に入り込んだとき、あらかじめセットしておいた情報を使い切った後に何が起きるか分かりません。またスマートホームにしても、クラウドサービスに障害が起きたから家の鍵が開きませんでは困るわけです。


筆者紹介――松村太郎

 1980年生まれ。ジャーナリスト・著者。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。またビジネス・ブレークスルー大学で教鞭を執る。米国カリフォルニア州バークレーに拠点を移し、モバイル・ソーシャルのテクノロジーとライフスタイルについて取材活動をする傍ら、キャスタリア株式会社で、「ソーシャルラーニング」のプラットフォーム開発を行なっている。

公式ブログ TAROSITE.NET
Twitterアカウント @taromatsumura

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