末岡洋子の海外モバイルビジネス最新情勢

急拡大からの急落、アップル/テスラに本気で対抗しようとした中国LeEco、閉鎖の危機に (1/2)

文●末岡洋子 編集● ASCII編集部

2017年07月26日 12時00分

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 創業13年のLeEcoが存続の危機に面している。2016年7月に米国のテレビメーカー、Vizioを買収して自信満々に米国進出の狼煙をあげたのもつかのま、2016年末には財務状況が苦しくなった。そして今年7月、創業者がCEOに続き、会長職も引責辞任した。今後は電気自動車事業にフォーカスするというが……。

Twitter上での最後のツイートでは、電気自動車のテストの状況について紹介しているのだが……

自動車からスマホまで、事業分野を急速に拡大

 今回紹介するLeEco(Leshi Internet Information & Technology)は2004年に創業、当初は「letv.com」としてNetflixのような動画配信ビジネスを本業としていた(そのため”中国のNetflix”と呼ばれていた)。詳細は1年前の本連載を参照いただくとして、2015年にはスマートフォン事業に参入。「Le」ブランドのAndroidスマートフォンを揃えた。

LeEcoのハイエンドスマホ。一時期は高いコスパで話題になった

 エコシステム(Eco)を社名に入れているとおりに、さまざまな端末のエコシステム構築を図っており、スマートフォンのほかにも、自動運転車のLeSEE、スポーツ放送のLeSports、音楽のLeMusic、VRのLe VR、映画スタジオのLe Vision Pictures、ライドシェアリングYidao Yongcheなど、あらゆる事業に進出を果たしていた。

 そしてピークと言っていいのが、2016年7月のこと。20億ドルでVizioを買収することを発表した。Vizioは日本で大型テレビがよく売れていた時代に国内でもニュースになる機会が多かったファブレスのテレビメーカーで、同社の買収により、ブランド、そして流通網など米国進出に必要な足がかりを手に入れるとされていた。人材の雇用も進め、Samsungなどから幹部を引き抜いた。

 この戦略を展開してきたのは、創業者のJia Yueting氏だ。黒いフードにジーンズがトレードマークの44歳で、Forbesの億万長者リストに入ったこともあった。

財務状況が急激に悪化
「少し時間をくれないか」と創業者

 米国企業の買収、さまざまな分野への拡大と大胆な動きはメディアの大きな関心を集めたが、2016年末には早くも雲行きが怪しくなり始める。2016年末、Yueting氏は従業員宛ての書簡で事業が思うような成果を挙げておらず、マネージメントに問題があるという問題意識を明らかにしていたという。

 その頃から、LeEcoに出資した金融機関などから、返済がないという話が持ち上がるようになる。それでもYueting氏は拡大計画を進めた。

 その後も実際に債務不履行にまつわるニュースが続いた。たとえば今年2月末、2015年にスポーツ放送のLeSportsが1億ドル以上の価格で放映権の4年契約を交わしていたアジアサッカー連盟(AFC)が、未払いを理由に契約を終了させた。

 そして7月の初めには、中国の招商銀行(CMB)の書類を受けてYueting氏の12億3700万人民元(約203億円)相当の資産を凍結させたと各紙が報じた。スマートフォン事業向けの投資に対して、返済がなかったことが原因という。2016年にLeEcoが最大株主になったCoolpadは2017年度の財務報告書の発表を遅らせている。

 すでにLeEcoのCEOから退いていたYueting氏は7月、会長職からも退くことを明らかにした。今後は自動車事業にフォーカスするという。

 Yueting氏はWeChatで「LeEcoにもう少し時間をくれないか。LeEcoの自動車事業にももう少し時間をいただきたい。我々は必ず返済するから」と記したとのことだ。なお、自身の報酬は2016年末に15セントに”減俸”済みだ。New York Timesは、LeEcoが借り入れた総額は最低でも60億ドルと見積もっている。

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