スマホ「実質0円」禁止は逆効果だったのではないか

文●石川温

2018年08月13日 09時00分

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 NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの決算が出揃った。いずれも「増収増益」であり、スマホブームが一段落したと言っても、依然としてキャリアが儲かっている構図が浮かんでくる。キャリアの決算会見を取材していてふと思う。最近、総務省が「キャッシュバック」や「0円端末販売」を規制していたが、本当に良かったことなのか。かなり疑問を抱いてしまうのだ。

キャッシュバック廃止で黒字化

 たしかに最新のスマホが0円で購入できたり、MNPで乗り換えれば数万円分の商品券などがもらえるという構図は行きすぎた感があった。しかしそれも顧客の獲得競争の1つであることは間違いない。

 キャッシュバックに関しては、特にNTTドコモが「仕方なくやっている」という雰囲気を醸し出し「キャッシュバックは不健全であり、できればやめたい」というスタンスをとっていた。NTTドコモはシェアが高く、ユーザーを囲い込むことに精一杯なキャリアだ。他社がキャッシュバックで攻めてくれば、対抗せざるを得ない。キャッシュバックによる顧客獲得合戦がなくなれば、ユーザーは流出せず、安定した経営ができるようになる。NTTドコモが真っ先にキャッシュバックに反対するのも無理はない。

 一方、攻める立場のソフトバンクやKDDIはキャッシュバックに前のめりであった。特にKDDIは、当時の田中孝司社長が「割と気持ちいい、適切なキャッシュバック」という名言を残すほど、キャッシュバックでの顧客獲得に注力していた。

 しかしそれも長くは続かず、ソフトバンクは総務省の会議などで「できればやめたい」と本音を漏らすなど、キャッシュバック戦争から逃げ出したい感があった。

 キャリアがキャッシュバックを嫌がるのは、収益に大きな影響を与えるからだ。実際NTTドコモの決算を振り返ると、ここ数年、端末機器販売収支は年間で数百億円規模のマイナスを計上し続けていた。

 しかし8月1日発表の2019年3月期第1四半期決算を見てみると、販売関連収支は40億円のプラスに転じている。

 これまで端末販売は赤字だったはずが、ここ最近は見事に黒字となっているのだ。

 KDDIも、5月に開催した決算説明会で「端末販売手数料が下がったことによる端末販売収支の改善があると考えている」と発言。

 つまり、キャリアが儲かっている背景には、キャッシュバックの廃止などで端末販売手数料が下がったことが1つの要素としてありそうだ。

ユーザーは損して、キャリアが得する構図

 総務省としては、キャッシュバックなどに使っていた原資を通信料金の値下げに回させることで、国民における通信料金の負担を軽減させようというねらいで、キャッシュバック叩きをしていたとされる。

 たしかに、「通信料金を値下げさせる」という効果は実際に出ているようだ。

 たとえばKDDIは昨夏に、使った分だけ支払う「auピタットプラン」提供を開始している。直近の決算によれば、モバイル通信料収入が前年同期比112億円のマイナスとなった。つまり通信料収入が下がったということは、それだけユーザーの支払う金額が下がったということだろう。

 しかしKDDIでは新料金プランの影響は一時的で、ユーザーのデータ利用量も増える傾向にあり、定額制であるauフラットプランの契約割合も増加していることから、将来的には収益は回復できると見ている。

 auピタットプラン、auフラットプランは、端末の割引を受けない代わりに通信料金が安くなる、端末代金と通信料金を分離するプランとなっている。

 まさに総務省が理想とするところなのだが、「将来的に、ユーザーが支払う通信料金が上がる」ということは、ユーザーは端末の割引を受けない一方、高い通信料金を払うことになる。結局のところ、ユーザーは損し、キャリアが得をする構図になるようだ。

業界活性化にも疑問がある

 そう考えると、キャッシュバックや実質0円端末で、キャリアが端末販売関連で赤字を出し、ユーザーに還元してくれていた方が、ユーザーにとってよっぽどメリットが大きかったように思う。また実質0円での販売があれば、機種変更が促され、新製品が売れるメーカーも喜び、キャリアショップもありがたいはずだ。

 機種変更が増えればそれだけ中古端末が増え、中古市場も活性化する。結果として「中古端末を買い格安SIMと組み合わせて使う」という、安価に賢く使いたい人の需要も満たせるようになるはずだ。

 キャッシュバックや0円販売をやめさせたことで、本当に、ユーザーの負担は下がり、業界が活性化したのか。改めて、検証する必要がありそうだ。


筆者紹介――石川 温(いしかわ つつむ)

 スマホ/ケータイジャーナリスト。「日経TRENDY」の編集記者を経て、2003年にジャーナリストとして独立。ケータイ業界の動向を報じる記事を雑誌、ウェブなどに発表。『仕事の能率を上げる最強最速のスマホ&パソコン活用術』(朝日新聞)など、著書多数。

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