AndroidからiPhoneに乗り換える理由

文●松村太郎 @taromatsumura

2018年10月02日 09時00分

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 街を見渡すと、ほとんどの人の手元にスマートフォンがあります。この状態から思いつくことは、スマートフォン市場の飽和。簡単に言えばスマートフォンが販売される場合、新たにスマホを買う人が少なく、買い換えがほとんどという状態になるということです。

 世界のスマートフォン市場でアップルは15%程度のシェアにとどまっており、Androidの牙城をいかに切りくずしていくかが鍵となります。アップルが現在発売以来トップシェアを守っているのはタブレット市場におけるiPadのみ。MacもiPhoneも登場以来販売台数が成長していますが、それ以上に市場拡大のスピードが速く、シェアが低下し続けるパターンが見られます。

 アップルによるAndroidユーザー取り込みの話をする前に、そもそもAndroidと、iPhoneに用いられるiOSについて考えておきましょう。

●AndroidとiOSについて

 AndroidはGoogleが開発するモバイルOSで、世界最大のユーザーベースを誇っています。2017年5月のGoogle I/O 17では月間アクティブユーザー数が20億人であることが発表されました。また2018年1月には23億人になっているとみられています。

 アップル以外のほぼすべてのスマートフォンメーカーがAndroidを搭載するデバイスを開発しています。マイクロソフトのWindows Phoneや、リサーチ・イン・モーションから社名が変わったブラックベリーなど、スマートフォン黎明期を支えたプラットフォームもありましたが、マイクロソフトに買収されたノキアも、ブラックベリーも、Androidベースのスマートフォンを出荷するようになりました。

 ハイエンドモデルから100ドルを切るデバイスまで、非常に多彩なメーカーが、多様なマーケットに合わせ、膨大な数のAndroidスマートフォンを製造しています。

 そうした環境の中、現在唯一生き残っているモバイルOSがアップルのiOSです。iOSが動作するスマートフォンはiPhoneのみで、そのiPhoneも年に1度、2~3機種が発売されるだけ。Androidスマートフォンの端末の種類に比べると、非常に限られた存在です。

 しかもハイエンドモデルを発売し、昨年以前のモデルの値段を下げて併売することで5~6モデルを取り揃える戦略を続けているため、インドなどのアジア太平洋地域では型落ちのモデルでも価格が高すぎ、需要を取りこぼしている様子が見受けられます。

 一方、ハイエンドモデルの新技術導入のスピードも、Androidスマートフォンが勝っています。年に1度の発売タイミングしかないiPhoneに対し、Androidは各メーカーがそれぞれのタイミングで新製品を投入するため、新技術がより速く採用されるのです。

 たとえば3G、4Gといった次世代通信規格はiPhoneよりもAndroidスマートフォンが先に登場しました。その他にも高画素化や複数のレンズを搭載したカメラ、有機ELディスプレー、ワイヤレス充電などもAndroidで当たり前になったころiPhoneにもたらされました。

 アップルのティム・クックCEOは「最初ではなく最高を目指す」とたびたび指摘しており、そもそも新製品投入のスピードで勝負していないと言いますが、最新の技術や機能を試したい人は、Androidに注目していくことになるはずです。

●慣れているものが使いやすい

 iPhoneは限られた種類のデバイスで、多様性がひろがるAndroidスマートフォンを切りくずしていかなければなりません。そのためiPhoneの強みで推していく戦略以外には取りようがありません。

 では、ここ最近AndroidからiPhoneに乗り換えた人々は、どんな点を魅力に感じているのでしょうか。

 米PC Magazineが、プラットフォームを乗り換えた人々「スイッチャー」についての調査結果を紹介しています。記事によると、AndroidからiPhoneに移行した人は18%、逆にiPhoneからAndroidに移行した人は11%。乗り換えていない人はそれ以外の71%の人々でした。意外とOSの乗り換えを経験していない人が多いです。

 たしかにAndroidを使いはじめた人は、Androidの使い勝手がなじんでいます。後述する強い動機がなければ、Androidを使い続けた方が楽だし便利だと感じるでしょう。逆も然りで、iPhoneユーザーはiPhoneを乗り換え続けた方が、面倒くさくないでしょう。

 しかも、長く使えば使うほど、iPhoneならApp Store、AndroidならGoogle Playストアで購入したアプリの数は増えていきます。アプリストアの購入履歴の互換性がない以上、乗り換えると膨大な数のアプリを再購入しなければならなくなります。

 結果的に、乗り換えレートは今後下がり続けると考えています。

●「ユーザー体験」が最大の乗り換え理由

 使い勝手や購入済みアプリなど、ハードルがいくつもある中で、プラットフォームを乗り換えた人の動機はどこにあるのでしょうか。

 まずiPhoneからAndroidに乗り換えた理由は、より良いユーザー体験が30%、価格の安さが29%、カメラ・デザインなどの機能の良さが24%でした。

 一方、AndroidからiPhoneに乗り換えた理由を見ると、より良いユーザー体験が47%、より良い機能が25%、価格が11%となっていました。

 前述の通り、ユーザー体験は慣れによって構成される部分が大きい中、AndoridもiPhoneもユーザー体験が乗り換えの最大の理由になっている点は興味深いポイントです。アップルもグーグルも、ユーザー体験の良さがスイッチする人を増やす突破口になるのかもしれません。

 それぞれの強みを考えれば、Androidはカスタマイズする自由度が高く、Googleアシスタントを生かしたより賢いパートナーとなり得る点を強調すべきでしょう。

 一方アップルは、体験の一貫性、そしてプライバシー・セキュリティーなどに強みがあります。前述の人工知能については、グーグルとは異なる端末内でのSiriの活躍を拡げようとしています。人工知能については、単純な賢さで比較できない価値を帯びるかもしれません。


筆者紹介――松村太郎

 1980年生まれ。ジャーナリスト・著者。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。またビジネス・ブレークスルー大学で教鞭を執る。米国カリフォルニア州バークレーに拠点を移し、モバイル・ソーシャルのテクノロジーとライフスタイルについて取材活動をする傍ら、キャスタリア株式会社で、「ソーシャルラーニング」のプラットフォーム開発を行なっている。

公式ブログ TAROSITE.NET
Twitterアカウント @taromatsumura

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