今年はiPhone XRを選んでおけば間違いない

文●松村太郎 @taromatsumura

2018年10月23日 22時00分

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 iPhone XRの先行レビューです。

 ブラックのiPhone XRを受け取って、まだ2日と立たないうちに情報解禁が訪れるとあって、1日中触って、本体の写真を撮って、iPhone XRで写真を撮って、一生懸命考える、という週末を送っていました。

 結論から言うと、「iPhone XS Maxよりもイイかも」という感想。もう少し踏み込んで言えば、2018年は「iPhone XRを選んでおけば間違いはない」という評価に至りました。

 理由はいくつかありますが、アップルのフィル・シラー氏(ワールドワイドプロダクト担当シニアバイスプレジデント)とiPhone XRについて話した際、このモデルが非常に重要であるということを強調していたからです。

 シラー氏は過去のアップルのラインアップを紐解き、iMacやiPod mini、iPod nanoといったカラフルな製品は、最上位モデルではなかったものの、最高の製品として多くの顧客に受け入れられたことをふりかえっていました。

 その話を引き合いに出すということは、iPhone XRは「X世代のiPhoneを爆発的に広める」という、アップルにとって非常に戦略的な意味が込められていることのあらわれだったからです。

 ちなみにみなさんはどの色を選びたいですか? 冒頭でお知らせしたとおり、レビュー用の貸出端末はブラックでしたが、個人的にはブルーが気になる色でした。

 ちょうど、欧州のセダンのパフォーマンスモデル、たとえばAudi RS4やBMW M3に、落ち着きつつも鮮やかなちょうど良いブルーがラインアップされていたのを思い出して、軽いあこがれを抱いていたのかもしれません。

 ただ、一番面白い色はコーラルでしょう。サーモンピンクにもオレンジにも見える絶妙な色合い。ちょうど、iPhone XRにはピンクもオレンジも用意されませんでしたので。

●自動車のグレードを想起させる「R」

 さて、まず気になるのは名前の話。真正面から「R」の意味は?と問うても「特別な意味は持たない」というのが公式見解でした。しかし話を聞くと、筆者の想像はさほど間違っていなかったようです。

 何度か「自動車のグレードを想起させる」という言葉をブリーフィングで聞くことができました。

 たしかに「S」や「R」は、自動車の上位グレードに添えられることが多いですよね。先述のAudiなんて、A4 → S4 → RS4と、SもRもつけられていますし。

 ただ、エンジンや足回りだけを固めても、いい車にはなりません。ベースのグレードからして、車体の善し悪しがハイパフォーマンスモデルにも響いていきます。

 このたとえで若干違和感があるのは、先行して発売したiPhone XSよりも、iPhone XRの方が安いからでしょうか。確かにコストカットする部分はディスプレーや2つ目の望遠カメラ、ギガビットLTEなどに現れています。

 しかしA12 Bionic、高速化・大型化したカメラセンサー、ビールやワインでも耐えられる防塵・防水機能、P3の高色域に対応するオールスクリーンデザイン、TrueDepthカメラによるFace ID認証、デュアルSIM対応は、iPhone XSの仕様やデザインを引き継いでいました。

 裏を返せば、X世代のiPhoneにとって重要な要素がここに詰まっており、コストカットしたとしても、外せない機能だった、ということになります。それにしても、アップルが「コスト削減」を堂々と語っている点は珍しかった、と感じました。

●並べてみれば確かに違うが

 iPhone XRは長さ150.9mm、幅75.7mm、厚さ8.3mm、重さ194gというサイズのデバイスです。ちょうどiPhone XSとiPhone XS Maxの間で、長さで比べると約7mm間隔で3モデルが並んでいることが分かります。

 そして、これら3モデルは、4.7インチのiPhone 8と、5.5インチのiPhone 8 Plusの間におさまっているという、興味深いサイズ展開です。

 長さはともかく、幅はスマートフォンを握る上で重要な要素となります。幅で比べると、iPhone XS Maxの77.4mmと2.3mm差であるのに対し、iPhone XSの70.9mmとは4.8mm差で、6.5インチモデル寄りの幅となっていました。

 理由は、ディスプレー方式の違いにあります。iPhone XRのLiquid Retinaディスプレーは、ふちなしのオールスクリーンを液晶ディスプレーで実現するチャレンジをしており、ガラスを角を丸めてカットしたり、TrueDepthカメラに沿って切り抜いたり、かなり苦労した結果、有機ELと同じシェイプを実現しました。

 しかし液晶ディスプレーはサイドにライトを配置しなければならず、画素ごとに発光する有機ELディスプレーのように、ふちを狭くしにくくなっています。おそらくそのために、画面サイズの割に幅が大きくなってしまった、と考えられます。

 iPhone XS Maxと比べると、iPhone XRではノッチ周辺は特に、画面の端からボディーの端までの長さが目立ちます。また、有機ELモデルの458ppiという画素の細かさに対して、iPhone XRはiPhone 8と同じ326ppi。

 並べてみれば、額縁も、画面の精細さや発色も、黒の引き締まり方もたしかに違います。しかしiPhone XR単体で使っていて、これらが問題になるかと言われれば、そうとも言えません。

●カメラはむしろ良いんじゃないか

 グーグルが先に発売したPixel 3は、ハイエンドに複数のカメラは不要、あとは機械学習で補うとして、素晴らしい品質のシングルカメラによるカメラ性能をアピールしました。暗いところでの撮影、超解像ズームはさすがの一言です。

 iPhone XRもまた、シングルカメラとA12 BionicのISP+ニューラルエンジンを活用した絵作りにより、2つのカメラがあるiPhone XSと同様にポートレートモードを実現するなど、進化を与えています。

 iPhone XRで撮影を続けていると、通常の写真撮影でも、「iPhone XSよりも好みの写真になっている」と感じる場面が多々ありました。センサーは、大型化・高速化されたiPhone XSと同じものを用いていると言いますが、レンズ群は新たなモノを採用しているそうです。

 スペック面では26mm/f1.8で同じだし、どちらが正しいというわけではないのですが、よりたくさん光を集めたような仕上がりになるiPhone XRのカメラの方が、個人的な好みだった点は意外でした。

 シラー氏は、「メーカーやカメラごとに特性があり、それは善し悪しの問題ではない」と指摘していましたが、iPhone XSとiPhone XRにも同じことが言えそうです。望遠f2.4のレンズの代わりに、1つしかない広角f1.8の明るいレンズを生かせるポートレートモードも、暗所に強く、またバストアップよりも引いた構図で撮影できる点も、扱いやすいと感じました。

 店頭という環境でその差に気づくことは難しいかもしれませんが、必ずしもiPhone XSが上位モデルで、カメラの写りがいいというわけではなさそうだという点を気にしながら、試してみても良いかもしれません。

 望遠レンズがあり、マクロ撮影などを楽しむならiPhone XSの方が良いはずでした。カメラで選ぶならiPhone XSと個人的にも考えていました。しかしiPhone XRのカメラはとても魅力的で、キラキラした光あふれる写真に仕上がる印象……。

 好みの問題ではありますが、広角レンズだけで比較すると、やはりiPhone XRの方が好き、という結論にたどり着きました。

 そう考えると、筆者にブラックのiPhone XRをレビュー用に貸し出された理由が分かりました。実はカメラにものすごい力を秘めており、カラフルなiPhoneより黒い方が、撮影する際に映り込みが少なく目立たないからかもしれません。

 まあ、考えすぎでしょうが。

●色とともに難しい選択に

 iPhone XSにはディスプレーの明らかな優位性と、より大きな画面サイズというオプション(iPhone XS Max)があります。これに対して、iPhone XRには、魅力的なカメラの写りと、本文では触れませんでしたが、カタログ上iPhone XS Maxよりも長いバッテリー持続時間があります。

 そして、iPhone XRには6色ものバリエーション……モデルが出そろってきて、ますます選ぶのが難しいというのが、2018年のiPhoneです。

 はっきりしているのは、ゴールドを選びたければ、iPhone XS以外に選択肢がなくなり、ゴールド、ホワイト、ブラック以外の色ならiPhone XRに絞られる、という点です。


筆者紹介――松村太郎

 1980年生まれ。ジャーナリスト・著者。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。またビジネス・ブレークスルー大学で教鞭を執る。米国カリフォルニア州バークレーに拠点を移し、モバイル・ソーシャルのテクノロジーとライフスタイルについて取材活動をする傍ら、キャスタリア株式会社で、「ソーシャルラーニング」のプラットフォーム開発を行なっている。

公式ブログ TAROSITE.NET
Twitterアカウント @taromatsumura

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