「iPadは単なる板」だからSurfaceを開発した

文●石川温

2019年07月01日 09時00分

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 マイクロソフトは日本の一部メディアに対してシアトルにある本社の一部を公開した。

 マイクロソフトと言えば「Windows」や「Office」の印象が強いが、ここ数年はハードウェア事業にも注力している。一般企業でSurfaceを社員用のパソコンとして導入しているところも増えている。

 アップルは、OSとともにハードを手がける垂直統合のビジネスを強みとしていた。一方、Windowsは、様々なパートナーであるPCメーカーが対応パソコンを作っていたが、マイクロソフトとしてもアップルを意識してか、Surfaceで垂直統合型も行うようになってきた。

 マイクロソフトのデバイスデザイン担当コーポレートバイスプレジデント、ラルフ・グローネ氏は「ソフトを使うにはハードが必要だが、ハードとソフトが統合され、連携して動くことが大切だ。そのために我々はソフトを快適に使ってもらうために自社で開発したハードを提供している」という。

 Surfaceを開発する上で、当然のことながら、意識したのがiPadだ。

●iPadは意識したがアップルのマネはしていない

 「2010年にiPadが発売されたが、『これは単なる板で机の上では使いづらい』と感じた。食事をしながら『背面にキックスタンドをつければいいのではないか』というアイデアが浮かんだ。さらに『着脱式のキーボードはどうか』という案も浮かんだ。すぐにエグゼクティブであるパノス・パノイに提案。ゴーサインが出たので開発をスタートさせた」(ラルフ氏)

マイクロソフト デバイスデザイン担当コーポレートバイスプレジデント ラルフ・グローネ氏

 その後、キックスタンドの傾きが一段階から二段階、さらに無段階へと進化していく。また、キーボードも改良が加えられていった。

 Surfaceの特徴として「Surface Connect」という端子が存在する。いわば電源端子でマグネットで本体に固定されるようになっている。かつてはMacBookなどでもマグネットが採用されていたため、「マイクロソフトがアップルを真似したのか」かと思いきや、実はそうではないらしい。

 ラルフ・グローネ氏は「このやり方は、日本の炊飯器がヒントになっている」と語った。確かに日本の炊飯器やポットは、電源ケーブルと本体をつなぐところがマグネットになっていることが多い。引っ掛けてもすぐに外れるという点においては優れた工夫というわけで、Surfaceに取り入れられたというわけだ。

 ちなみに、ここ最近、多くのノートパソコンでUSB-Cが採用されている。SurfaceシリーズのなかではSurface GoがUSB-Cに対応するが、それ以外のデバイスでの対応はないのだろうか。

 「多くの人が様々なデバイスを使いたいと思っている。最新のテクノロジーがいいとは限らない。いまのところはSurface Connectのほうがいいのではないかという判断だ」(ラルフ氏)とのことだった。

●オープンソースでソフトを開発

 ハードがソフトに寄り添っていく一方で、当然のことながらソフトの側もハードに溶け込むように開発されている。Office 365は、生産性を上げるための道具だが、デザイン&リサーチ担当 コーポレートバイスプレジデントであるジョン・フリードマン氏は「我々は人間を中心としたデザインを心がけている。人が中心にあって、その周りにデバイスがある」と語る。

マイクロソフト デザイン&リサーチ担当 コーポレートバイスプレジデント ジョン・フリードマン氏

 Office 365からのアプローチとしても当然のことながら、ハードとソフトが溶け込むようにデザインされているというわけだ。Windowsのみならず、iOSやAndroid、Mac、Webなど様々なプラットフォームで提供されているが、それぞれのハードを意識しながらも「すべての体験を統一的なものにする」という難しいバランス感覚でデザインされている。

Microsoft Office 365

 マイクロソフトでは現在、ソフトウェアの開発はほとんどがオープンソースだという。

 「これまではすべてのチームが100%、コードを書いていたが、いまでは90%がオープンソース。一人がデザインすると深みがないが、様々なデザイナーがコラボすることで素晴らしいデザインが誕生する。全く新しいデザインの仕組みを作った。我々にとって大きな変革になったといってもいい」(ジョン・フリードマン氏)。

 Office365においては「効率化」を目指した使い勝手の追求が進んでいる。

●AIもマイクロソフトの力

 たとえば、Wordで文章を書いている際、「このフレーズは誰に確認しておこう」という場合は、一度、Wordを保存し、メールアプリを立ち上げWordファイルを添付して、メールの文書を書くなんてことをしなくてはいけない。しかし、将来的にはWordの文章のなかに@を入れて相手の名前を入れれば、そこで、メールと共に文書が一緒に送られるようになるという。

 これにより、ユーザーは文書の作成に集中できるようになる。

 また、PowerPointではAIの連携が更に進んでいる。

 たとえば、プレゼン作成中、地名が出てくれば、その場所にあった写真を選び、挿入してページを自動的にデザインしてくれたりする。リストを表示させる際も様々なパターンが存在するが、そうした候補も一覧で見せてくれ、ユーザーは自分でデザインすることなく、候補を選ぶだけで美しいレイアウトが完成するようになる。

 また、日本語でプレゼンしている途中に、英語に翻訳して字幕をつけてくれると言ったことも可能だ。AIの力によって、生産性や効率性、利便性がさらに上げていくというのが、いまのマイクロソフトのやり方なのだ。

 まさに「デザイン」といってもハードだけの話ではなく、ソフトにおける使い勝手の部分でも重要であり、そこにもAIの存在感が増してきているのだ。


筆者紹介――石川 温(いしかわ つつむ)

 スマホ/ケータイジャーナリスト。「日経TRENDY」の編集記者を経て、2003年にジャーナリストとして独立。ケータイ業界の動向を報じる記事を雑誌、ウェブなどに発表。『仕事の能率を上げる最強最速のスマホ&パソコン活用術』(朝日新聞)など、著書多数。

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