亡くなって4年で2度も映画化される伝説の男
「スラムドッグ$ミリオネア」(2008年)でアカデミー賞の作品賞、監督賞など8部門を受賞したダニー・ボイル監督の最新作「スティーブ・ジョブズ」を観てきた。ジョシュア・マイケル・スターン監督による「スティーブ・ジョブズ」が2013年に公開されており、ジョブズ本人が亡くなったのが2011年。ほんの4年の間(ボイル版の「スティーブ・ジョブズ」は米国では2015年に公開されている)にAppleの創業者でありMac、iPod、iPhoneを生み出した伝説の男は2度も映画化されたというわけだ。
「スラムドッグ$ミリオネア「127時間」「トレインスポッティング」などで知られるダニー・ボイル監督による映画「スティーブ・ジョブズ」。ジョブズ役にはマイケル・ファスベンダー。2月12日(金)より全国公開 |
ほかにも「スティーブ・ジョブズ 1995~失われたインタビュー~」や「Steve Jobs: The Man in the Machine」といったドキュメンタリー映画があり、「みんな、どんだけジョブズのことが好きなんだよ……」と、正直、驚きを隠せない。まぁ、それだけジョブズがパーソナルコンピューティングの世界を開拓/牽引してきたのは確かだ。また虚実は定かでないものの、神話的だったり伝説的だったりするエピソードにこと欠かない魅力的な人物であったということも否定できないだろう。
かくいう筆者も長らく「MacPower」という雑誌の編集に携わり2001年から2007年まで編集長を務めたという経歴があるので、Appleのたどってきた歴史、そしてジョブズという人物には少なからず関わりを持っている。
少なからずどころか、1992年に就職して最初にもらったボーナスで「Centris 650」という機種を初めて購入し、いまだに「MacBook Air」で原稿を書き、「iPhone」を肌身離さず持ち歩いているわけだから、なかばジョブズに人生を狂わされたと言っても過言ではないかもしれない。
したがってスターン版の「スティーブ・ジョブズ」もボイル版の「スティーブ・ジョブズ」も、さまざまな経緯を業界の渦中で身近で見聞きしただけに、ごくごく普通の感覚で素直に楽しめなくなっている。
もちろんジョブズのプレゼンを生で何度も見ているとはいえ、彼と直接会って話したことなどないわけだから、筆者が知っているのはあくまでもジョブズがAppleに復帰するまでの状況に過ぎない。だが、今回は映画にかこつけて、筆者が体験したジョブズ復帰前後のAppleのことを書いてみようと思う。