スマホメーカー栄枯盛衰~山根博士の携帯大辞典

世界のスマホ市場が注目するOPPOやVivo その起源である中国・BBKとは何者なのか

文●山根康宏

2018年08月27日 17時00分

 このBBKから2003年にOPPOが音響機器メーカーとして分離し、MP3プレーヤーなどを手掛けます。OPPOのMP3プレーヤーは中国の同業他社が手掛ける格安・低品質品ではなく、高性能な音源チップの採用やファッショナブルなデザインを採用し、中国の若者の間で大人気となりました。2008年には携帯電話に進出。音楽機能を特徴とし同社のMP3プレーヤー利用者がこぞってOPPOの携帯電話を買ったと言われます。そして2011年にスマートフォンに参入し、今に至るのです。

 BBK本体もOPPOとは別に2007年から携帯電話市場に参入しました。

 「BBK音楽携帯」というキャッチフレーズで音楽機能に特化したフィーチャーフォンを立て続けにリリースしていったのです。OPPOのMP3プレーヤーが人気ならば、BBKはそれを携帯電話に内蔵した製品で対抗、ということだったのかもしれません。だとすると、BBKの携帯電話での成功がOPPOの携帯電話市場への参入を促したとも言えそうです。

 しかし2007年に登場したiPhoneは中国でも大きな話題となり、2008年にはグーグルがAndroidスマートフォンを投入。当時の中国はタッチパネルを搭載したフィーチャーフォンが数多く出回っていましたが、スマートフォンの時代がやってくることは明白でした。そこでBBKは2009年にスマートフォンを手掛ける子会社としてVivoを設立します。そのVivoが最初のスマートフォン「V1」をリリースしたのは2011年。本体背面にはまだBBKの名前も表示されていました。

 今や世界シェア上位に入るまで成長したOPPOとVivoは似たような会社と思われることもあります。ところが早くから製品・ブランドを中国の若者の間に認知させ、フィーチャーフォンから手掛けていたOPPOに対し、BBKの子会社として全く新しいブランドとして立ち上がったVivoとでは、その成り立ちは大きく異なるのです。

 さてVivoを設立した後も、BBKはフィーチャーフォンを製造していましたが、2011年9月に発表した「i780」を最後に携帯電話市場から撤退します。VivoのV1の発表直前に最後のモデルを出すことで、フィーチャーフォンからスマートフォンへの時代の流れを自ら推し進めたのです。ちなみにi780のスペックは3.2型タッチパネル対応320x480ドットディスプレー、320万画素カメラ、GSMのみ対応のフィーチャーフォンながらもWi-Fiも搭載し、高速にWEBブラウジングできました。当時のフィーチャーフォンとしてはかなり高いスペックの端末だったのです。

教育タブレットに参入、スマートウォッチを手掛け新ブランドでスマホも投入

 BBKは主力製品であったDVDプレーヤー市場が急速にしぼんでいく中、教育分野への製品を強化していきます。書籍型で印刷されたイラストを付属のタッチペンで触れると英語を発音するといった学習機器はすでに2008年から出していました。2013年にはタブレットタイプの製品も投入。「H8」は8型768x1024ドットディスプレー、Android OS4.1のWi-Fiタブレットで、有線接続のOCRスキャナーが付属し宿題のプリントなどの英単語を読み込むこともできる製品でした。

 中国の一人っ子政策だけではなく、中国人の所得そのものが高まる中で、教育関連への国内支出は急激に高まっていきます。その結果BBKの主力製品はこの教育タブレットとなっていきました。また低学年向けの教育機器メーカーとして「小天才科技」を立ち上げ、2014年には小学校低学年向けのタブレットも投入しています。

 なおこの小天才は今では子供向けスマートウォッチメーカーとしても中国ではメジャーで、海外でも展開しています。2017年7月にはクアルコムのSnapdragon Wear2100を採用したLTE対応、IPX8の防水対応「Z3」をリリース。2018年には500万画素カメラとWi-Fiも追加した「Z5」を発売。大人向けのスマートウォッチではアップルやサムスン、ファーウェイが有名ですが、中国で子供たちが腕にはめているスマートウォッチの多くがこの小天才のものなのです。しかもカメラも搭載するなど、大人向け製品顔負けの性能を有しています。

4GスマートウォッチのZ5はカメラやWi-Fiも搭載

 このように教育・子供向け製品を主力ビジネスとしているBBKがスマートフォンを手掛けない理由はありません。2016年に改めて「Imoo」を立ちあげ、教育スマートフォンとして久々に携帯電話市場に戻ってきました。

 2016年7月発売の「Imoo Study Phone」は5.5型1080x1920ドットディスプレー、MT6755クアッドコア2.0GHz CPUにメモリ3GB、ストレージ32GB、メインカメラ1300万画素、フロントカメラ500万画素のミッドレンジクラスの製品です。価格は2998元(約4万9000円)と、スペックからするとやや割高でした。これは教育向けということで親の懐が緩むことを狙っていたのかもしれません。

 著名な学習講師の教育コンテンツが搭載されているなど、手のひらに収まる学習塾という製品ですが、ハードウェアもカスタマイズされています。左側面に設置されたクイックボタンを押すとカメラが起動、テキストの英単語の上にカメラアプリ内の十字カーソルを合わせると一瞬で単語を翻訳してくれます。またOSはAndroid OS改変の「Study OS」を搭載しますが、OSのアイコンはOPPOのColor OSとそっくり。このあたりは関連企業ということで、OPPOの技術供与を受けているのでしょう。

5年ぶりに学習スマートフォンで携帯電話市場に再参入

 2017年には「Imoo C1」を発売。ディスプレーは同じ5.5型ながら720x1280ドットと解像度を下げ、一方カメラは1300万画素+800万画素と若干スペックを高めながらも価格は1798元(約2万9400円)と引き下げました。初代モデルはやはり割高感があったのでしょう。なお教育向けタブレットもそうなのですが、新製品の投入ペースは遅めです。これはハードウェアを進化させていく一般的な製品とは異なり、あとからコンテンツを追加できる教育用製品であるため、1~2年間隔の新製品投入ペースでも十分なのでしょう。

 Imooは海外には子供向けスマートウォッチも投入。BBKは今後しばらく、この分野の製品に特化したグローバル展開をしていくのでしょう。いずれ日本の学習塾と提携してスマートフォンを出す、なんて時代も来るかもしれません。

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