実際に手にしてみるとわずかに剛性が柔いようにも感じるが、適度な深みのあるグリップでホールド感は抜群だ。
EVFの解像度は369万ドットと現在では標準的だが、Zシリーズ初期からの、こだわったファインダー光学系によるクリアでヌケの良い視認性が気持ちいい。
ただし「撮影直後の画像確認」をオンにしたときに、再生画像が表示されるまで1秒近く待たされるのは相変わらず。とはいえ「Z7/Z6」のような価格帯のカメラではイラっとしたが、「Z5」はエントリー機ということもあって不思議と許せてしまう。
シャッター音は少し静かになっているが高級感に欠ける気もする。ここは好みが別れるところかもしれない。
「Z5」とともに注目なのが、キットレンズとして登場した「NIKKOR Z 24-50mm f/4-6.3」だ。ズーム倍率は約2倍で開放F値も暗めだが、沈胴式で収納時は全長約51㎜、重量も約195gしかない。 どうしても大柄になってしまうフルサイズ用のレンズとは思えないほど軽量コンパクトで、気軽なお散歩写真に最適。画質も優秀で、スペック以上の魅力があるレンズだ。
キットレンズの「NIKKOR Z 24-50mm f/4-6.3」は沈胴式で、収納時はスリムになるので持ち運びがしやすい。ISO感度や露出補正などの機能を割り当てられるコントロールリングが搭載されているのも何気に嬉しい。
マウント部はプラスチックっぽいが、これほど軽量なら心配はないだろう。簡易的ではあるが防塵防滴に配慮された設計なので、多少の雨なら安心だ。
ちなみに専用フードは別売で3850円。
また同時に発売されるエクステンショングリップ「Z-GR1」(1万4300円)にも注目。ホールド感の向上にくわえ、Fマウントレンズアダプター「FTZ」使用時に、三脚に干渉する問題も解決してくれる。「Z7/Z6」にも使用できるオプションなので、フルサイズZシリーズユーザーにはオススメだ。
「FTZ」装着するとボディー下部にはみ出すので、三脚使用時着け直さなければならなかったが、エクステンショングリップ「Z-GR1」を使用すれば問題は解決。アルカスイス互換のクイックシューとしても使用でき、装着したままバッテリーの交換も可能。
Zクオリティーの絵作り
表面と裏面照射の差はあるのか?
「Z6」が2450万画素の裏面照射型なのに対し、「Z5」では通常の2432万画素の撮像素子を採用している。気になる画質はシャープ感が強く、最近のニコンの傾向に沿ったキレのある絵作りになっている。
広角側24㎜で1段絞ってF5.6で撮影。中心部は解像感が高く、周辺部でも像は乱れていない。使用レンズNIKKOR Z 24-50mm f/4-6.3・絞りF5.6・シャッタースピード1/50秒・ISO100・WBオートピクチャーコントロールオート。
絞り開放(焦点距離28㎜なのでF4.5になってる)で撮影。ピントの合った石造の質感がキリっと表現されている。使用レンズNIKKOR Z 24-50mm f/4-6.3・絞りF4.5・シャッタースピード1/500秒・ISO100・WBオートピクチャーコントロールオート。
望遠側50㎜絞り開放で撮影。F値はF6.3と暗いが、フルサイズだけあっていい感じで背景はボケてる。使用レンズNIKKOR Z 24-50mm f/4-6.3・絞りF6.3・シャッタースピード1/100秒・ISO100・WBオートピクチャーコントロールオート。
最短撮影距離はズーム全域で35㎝。望遠側50㎜ならそこそこアップで撮れる。使用レンズNIKKOR Z 24-50mm f/4-6.3・絞りF6.3・シャッタースピード1/1000秒・ISO100・WBオートピクチャーコントロールオート。
木漏れ日に照らされた草木がキレイだったので、露出をアンダー目に撮影してみた。フルサイズだけあって明暗差の階調再現の幅も広い。使用レンズNIKKOR Z 24-50mm f/4-6.3・絞りF6.3・シャッタースピード1/125秒・ISO100・WBオートピクチャーコントロールオート。
逆光でのレンズ描写を見たかったので、太陽を画面に写しこんでみた。ゴーストは発生しているが、フレアは目立たない。使用レンズNIKKOR Z 24-50mm f/4-6.3・絞りF16・シャッタースピード1/60秒・ISO100・WBオートピクチャーコントロールオート。
キットレンズの解像感も高く細部まで精細に再現してくれる。広角側絞り開放F4では少し周辺光量落ちを残しているが(周辺光量補正標準の場合)、描写の乱れはごくわずかである。
F5,6まで絞ると画面全体が整ってくる。望遠側も絞り開放F6.3からシャープでF8まで絞ると画質はピークを向かえる。また絞り値を大きくしたときに発生する回折現象も抑えられ、F22でもほとんど目立たない。
試しにカメラ内の回折補正をオフにして撮ってみたが、それでも回折現象による画質低下はそれほど気にならないので、レンズ性能によるものだろう。軽量コンパクトでも侮れない画質だ。
広角24㎜絞り開放で撮影。青空などフラットな状況で、周辺光量補正が標準だと、少し光量落ちが残る。使用レンズNIKKOR Z 24-50mm f/4-6.3・絞りF4・シャッタースピード1/1250秒・ISO100・WBオートピクチャーコントロールオート。
広角24㎜絞りF5.6で撮影。周辺光量落ちは、ほぼ解消されている。使用レンズNIKKOR Z 24-50mm f/4-6.3・絞りF5.6・シャッタースピード1/640秒・ISO100・WBオートピクチャーコントロールオート。
望遠側50㎜で撮影。絞り開放からシャープな画質だ。使用レンズNIKKOR Z 24-50mm f/4-6.3・絞りF5.6・シャッタースピード1/640秒・ISO100・WBオートピクチャーコントロールオート。
絞りF5.6(写真左)とF22(写真右)で撮影した画像の一部を等倍に拡大して比較。回折現象による解像感低下はごくわずか。なお望遠側だとさらに絞ることができるが、F32を超えるとさすがに描写は甘くなっていた。
高感度の常用最高はISO51200と「Z6」と同じだが、拡張では「Z6」がISO204800なのに対し「Z5」はISO102400になっている。感度別の画質を見てみると、ISO12800までは実用範囲だが、ISO25600を超えると急激に画質劣化が目立ってくる。この辺りは裏面照射型の「Z6」との差ということだろう。
感度別に撮影した画像の一部を拡大して比較。左上からISO1600・ISO3200・ISO6400・ISO12800・ISO25600・ISO51200。ノイズ処理は標準。
またノイズ処理も少し強めのように感じる。個人的にはノイズより解像感を重視したいので、高感度で撮影するときはノイズ処理オフのRAWで撮影し、感度に応じて現像時に調整するのがベストだと思う。
ISO12800で撮影した画像のノイズ処理による違いを比較。左からノイズ処理標準、ノイズ処理弱、ノイズ処理オフ。
ボディー内手ブレ補正の効果は約5段分と「Z7/Z6」と同等。キットレンズの開放F値が暗めなので、夜間のスナップなどでは手ブレが心配だったが、しっかり構えれば広角24㎜では1/2秒、望遠50㎜でも1/4秒程度までは安全な範囲だった。
広角側24㎜で撮影。シャッタースピード1/2秒だったが、手ブレは起こしていない。使用レンズNIKKOR Z 24-50mm f/4-6.3・絞りF8・シャッタースピード1/2秒・ISO400・WBオートピクチャーコントロールオート。
望遠側50㎜で撮影。同じくシャッタースピード1/2秒で撮影。ギリギリセーフな気もするが、余裕があるなら1/4秒程度に留めておいたほうが安全かも。使用レンズNIKKOR Z 24-50mm f/4-6.3・絞りF11・シャッタースピード1/2秒・ISO800・WBオートピクチャーコントロールオート。
ただし暗所で撮影しているとAFが少し迷うことがあった。AF検出範囲が「Z7/Z6」では-6EVなのに「Z5」は-3EV(ともにローライトAF時)なので、像面位相差AFの性能の違いだろう。
なおAFエリアモードがピンポイントやシングルでAFが迷う場合でも、ワイドエリアに変更すると改善されることがあった。状況によって工夫してみるといいだろう。
夜の公園、街灯があったのでそれほど暗くはなかったが、被写体のコントラストが低いせいかシングルAFではピントが合いにくかった。ワイドエリアAFに切り替えると無事合焦してくれた。使用レンズNIKKOR Z 24-50mm f/4-6.3・絞りF5.6・シャッタースピード1/5秒・ISO6400・WBオートピクチャーコントロールオート。
夜景の光芒を写したくて絞りをF16に設定。回折現象の心配がないので安心して撮れる。使用レンズNIKKOR Z 24-50mm f/4-6.3・絞りF16・シャッタースピード1/13秒・ISO1600・WBオートピクチャーコントロールオート。
解像感を重視したかったのでノイズ処理をオフにした。気軽に高感度で撮影できるので、キットレンズの開放F値の暗さは気にならなかった。使用レンズNIKKOR Z 24-50mm f/4-6.3・絞りF11・シャッタースピード0.4秒・ISO6400・WBオートピクチャーコントロールオート。
これからフルサイズミラーレスしたい
一眼レフユーザーにピタリなのだ
その他では連写速度が最高秒4.5コマ(「Z7/Z6」は拡張で最高秒12コマ)に。4Kで動画撮影する際は画角が1.7倍クロップされる(フルHDではクロップ無で撮影可)などが主なスペックダウンしている点だ。
またZシリーズ全般に共通している、AF-Cモードでは、合焦マークが表示されない点も相変わらず。コチラはそろそろ改善して欲しいところである。
ハイエンドを求める人には物足りない部分もあるが、リーズナブルな価格にダブルスロット、コンパクトズームとのレンズキットなど、購入するのに十分な魅力がある。
特にFマウントは所有しているが、まだZマウントデビューしていないニコンファンにとっては、大きく背中を押してくれる一台になるだろう。