ファーウェイがモバイル/通信業界から、自動車へと業態を拡大しようとしている。以前から開発を進めてきた自動車向けソリューション「Huawei HI」を採用した自動車が上海モーターショーに登場。「Huawei Inside」戦略で、転換期にある自動車市場にかける。
スマートカー向けソリューション「Huawei HI」を昨秋発表
ファーウェイが自動車向けにソリューションとして技術を体系化した「Huawei HI」は、2020年秋に発表された。Huawei HIはHuawei Intelligent Automotive Solutionの略。インテリジェントな自動車向けソリューションで、自動運転やコックピット、車体制御システムなどのプラットフォームが含まれている。コックピットはHarmonyOSを土台とし、エコシステムパートナーによる多様なアプリケーションを用意する。
目下開催中の上海モーターショーでは、コックピット、そしてインテリジェントな運転処理プラットフォーム「MDC 810」、4Dイメージングレーダー、自律運転クラウドサービスプラットフォーム「Octopus」、インテリジェントな熱管理システムなどのモジュールも含むフルスタックとして紹介した。
合わせて、BAIC Group(北京汽車)がHuawei HIバージョンモデルの「ARCFOX Alpha S」を発表した。5G対応でファーウェイのLiDAR技術も採用している。
自動車分野の戦略は「Huawei Inside」
しかし、自動車自体は作らない
ファーウェイはスマートフォンメーカーだが、自動車についてはハードウェアには手を出さないと宣言している。この動きは、同社の全体の戦略であるソフトウェアへのシフトを反映したものでもある。
同社は4月12日に本社で開催した「Huawei Analyst Summit(HAS)」で、5つの戦略的イニシアティブの1つに、「ポートフォリオの最適化」を挙げ、そこでの取り組みの1つとして自動運転ソフトウェアを紹介している。
テスラが主な契機となり、自動車業界ではEV、ソフトウェア制御へのシフトが進んでいる。ファーウェイの輪番会長Eric Xu氏は、自動車業界のトレンドを「コネクテッド」「インテリジェント」「電子化」などとし、ファーウェイが「自動運転ソフトウェアに集中投資することで、自動車とICTとの統合というトレンドを加速する」とコメントしている。立ち位置は「インテリジェントな自動車のコンポーネントプロバイダー」であり、長期的に事業チャンスをもたらすものとしている。
なお、Xu氏によると自動車分野の研究自体は2012年から開始していたとのこと。その間の自動車業界の変遷(「トレンドがEVから自動運転に推移」)、自動車メーカーとのやり取りを受けて、2018年の経営者会議で車両の製造はしない決断に至ったと語っている。
ファーウェイのアプローチは「Huawei Inside(HI)」として、ファーウェイの自動運転ソリューションを採用した車両にHIロゴをつけるというもの。ICT企業として、「厳選した自動車OEMパートナーがサブブランドを構築するのを支援する」と戦略を語っている。
Xu氏はまた、ファーウェイのインテリジェント・オートモーティブ・ソリューション(IAS)事業部は、販売、納入などすでに包括的な機能を備えた事業部となっており、コンシューマー事業部と同レベルとしている。IASはすでに5000人規模の組織となっており、今後はR&Dセンターを日本やドイツに展開する計画も明かしている。
現時点ではHIのターゲットは中国のみだが、将来的には中国外の市場にも拡大する。だが、すでに巨大な自国市場に支えられていることは間違いない。Xu氏によると「中国は毎年3000万台の自動車を製造しており、今後も成長が見込まれる」とのこと。1年で10億ドルを超える規模を研究開発に注ぎ込んだとして、「自動車1台あたり1万元(約16万円)の収益が得られれば十分なものになる」との試算を打ち出している。