iOSやmacOSの進化が見えた! 「WWDC21」特集

アップルがハイレゾより空間オーディオを推す理由 (1/4)

文●本田雅一 編集●飯島恵里子

2021年06月10日 12時00分

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 アップルは6月中のサービスインを予告していたロスレス、ハイレゾ、空間オーディオの配信を開始した。追加料金は不要で、全7500万曲はすべてロスレスでのダウンロード及びストリーミングに対応。ハイレゾのマスターがある楽曲に関しては、ハイレゾ(最高192kHzまで)でも配信されている。

 空間オーディオの楽曲は当初数1000曲とアナウンスされているが、正確な配信数はわかっていない。しかしアーティストやエンジニアからの支持が得られており、毎日のように対応楽曲が増えている状況だ。

 空間オーディオで立体的な音源をミックスするツールはProtoolsのプラグインとして提供されているが、今年後半にはLogic Proにも対応音源の制作機能が追加される。自宅のMacで誰もが空間オーディオを活用した音楽を制作可能になれば、さらに実験的な作品も増えてくるかもしれない。

 立体音響を記録する形式としては国際標準のMPEG-Hという形式もあるが、アップルは劇場や家庭向けの映像用オブジェクト音源フォーマットのドルビーアトモスを選んだ。後述するが、ドルビーアトモスに対応した機器がすでに存在していることが大きい。

 アップルは空間オーディオで製作された楽曲が、音楽体験を次の世代に押し上げると考えており、ハイレゾ配信や全楽曲のロスレス形式対応などよりも興味を惹くと確信している。ハイレゾやロスレスでの音質向上は一部の高品位なオーディオ機器を所有していない限り体験できず、違いに気づかないリスナーも多いが、空間オーディオは確実に、音楽体験をアップグレードしてくれるからだ。

 筆者もこの考えには賛成している。個人的にはハイレゾ配信を高品位なオーディオ機器で楽しんでいるが、そこはあまり大きな価値を感じない人も少なくない。しかし、空間オーディオで作られた楽曲は、明らかにステレオで制作された楽曲とは異なる体験をもたらしてくれる。

 ただサービス開始直後の現在、言葉の使い方などの齟齬も感じられ、情報の錯綜もあるように感じている。そこでまずは空間オーディオ、次にハイレゾ/ロスレスの配信に関して、再生に必要な環境などをまとめ、最後にインプレッションをお伝えしたい。

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