ソフトウェアへシフトせよ――創業者の社内メモが報道される
HarmonyOSをiOS/Android対抗と見るのは、実は短絡的なのかもしれない。ファーウェイはHarmonyOSの特徴として、アプリをバックグラウンドで稼働でき、中断後にタスクをすぐに再開できること、省電力性、セキュリティとプライバシーなどをアピールしている。コンシューマービジネスグループCEOのRichard Yu氏は、「1+8+N」というキーワードのもと、さまざまな端末がつながるスマートライフという文脈で、HarmonyOSがシームレスにハンドオーバーする図を描いた。ファーウェイはすでに自動車向けにもHarmonyOSを提供している。
問題は、HarmonyOSを採用するメーカーがどのぐらいいるのかだろう。スマートフォンでは現時点でファーウェイ以外のメーカーはいないようだ。
そしてファーウェイは、HarmonyOSをはじめとしたソフトウェアに生き残りをかけている。5月にロイターは独自報道として、創業者である任正非(Ren Zhengfei)氏が社員に宛てたメモを報じている。そこでは、同社は高度なハードウェアの製造がままならないことから、「米国の支配の外にあり、ファーウェイが大きな自由と自律を持てる」ソフトウェアが将来だとしている(https://www.reuters.com/technology/huawei-founder-urges-software-push-counter-us-sanctions-2021-05-24/)。
そこではオープンソースのアプローチをとり、コミュニティーから「栄養素を吸収」("absorb nutrients")するようスタッフに呼びかけているという。
もっともハードウェア企業がソフトウェアにシフトして成功した例はあまりない。ただ、ファーウェイのことだからやってのけるのかもしれない。一方で、HarmonyOSはオープンソースとなる約束だがまだ公開されていない。スマートフォン版については、Androidのフォークという報道もあったが、どうなのだろうか?
筆者紹介──末岡洋子
フリーランスライター。アットマーク・アイティの記者を経てフリーに。欧州のICT事情に明るく、モバイルのほかオープンソースやデジタル規制動向などもウォッチしている