老舗メーカー「Meizu」もスマホから撤退……しかし!?
中国のスマートフォンメーカー、Meizu(魅族)がスマートフォン事業からの撤退を発表しました。Meizuはまだシャオミが生まれる前からスマートフォンを中国市場に展開した老舗のメーカー。しかし近年は苦戦しており、2022年には自動車メーカーのGeely(吉利汽車)傘下に。同年のMeizuのスマートフォン新機種数はゼロでした。
2023年3月には新体制の元に「Meizu 20」シリーズを投入。11月にはSnapdragon 8 Gen 3を搭載する「Meizu 21」を出しており、これから果敢に市場を攻めていくかと思われました。しかしスマートフォンの販売数は目標に届かなかったと思われます。中国の家電量販店に行ってもMeizuの製品を見ることができず、せっかく新機種が出てきてもそれを購入する前に体験できないのです。
大手メーカーの製品なら実機を触らずオンラインで買っても外れることはないでしょうが、1年間も新製品を出していなかったメーカーの製品を、いきなり買う人は中国でも少ないのではないかと考えます。
とはいえ、Meizuそのものが消滅するのではなく、従来型のスマートフォンの開発を中止するとのこと。その代わりに投入するのがAIデバイスです。ウサギ型のAIエージェントを使うrabbit社の「rabbit r1」のような製品を今後出していくようです。もしかするとポスト・スマートフォンになるかもしれない製品だけに、Meizuも本気でこの分野に参入しようとしているのでしょう。
ロードマップとしては、2024年中にAI OSを完成させモバイルデバイスを投入。2025年には全天候型というスマートグラスのようなモデルも出すようです。そして2026年には中国国内でのAIデバイストップメーカーを目指すとしています。3年かけてスマートフォンメーカーからAIデバイスメーカーへと完全に転身を計るわけです。
果たしてrabbitのような小型デバイスになるのか、あるいは見た目はスマートフォンだけど中身はAI OSなんて製品になるのか、どんなものが出てくるか楽しみです。
実はMeizuの最近のイチオシ製品はARグラスの「MYVU」。現状ではスカウター的な使い方しかできませんが、今後AI OSを搭載した製品に生まれ変わると思われます。ARグラスからAIグラスへ進化すると、スマートフォンとの連携も含めより便利な製品になりそう。
Meizuのスマートフォンが搭載していたAndroidベースの自社開発OS「Flyme OS」は自動車向けに「Flyme Auto」として新たな進化を進めています。MeizuのAIデバイスが成功すれば、そのAI OSも自動車向けへと転用されるでしょう。AIでナビゲーションや車内エンタメ制御のできるスマートな自動車はファーウェイやシャオミも開発中でしょうから、MeizuとGeelyも本気で開発を進めるはずです。
Meizuの動きに合わせ、ほかのスマートフォンメーカーからもAIデバイスが出てくる可能性もあります。そうなれば、Meizuも開発の動きを加速させるでしょう。新しいデバイスが早く出てくるためには競争も必要です。果たしてMeizuの挑戦はロードマップ通りに進むのか!? しばらくは同社の動きを静観したいところです。
「スマホ好き」を名乗るなら絶対に読むべき
山根博士の新連載がASCII倶楽部で好評連載中!
長年、自らの足で携帯業界を取材しつづけている山根博士が、栄枯盛衰を解説。アスキーの連載「山根博士の海外モバイル通信」が世界のモバイルの「いま」と「未来」に関するものならば、ASCII倶楽部の「スマホメーカー栄枯盛衰~山根博士の携帯大辞典」は、モバイルの「過去」を知るための新連載!
「アップルも最初は試行錯誤していた」「ノキアはなぜ、モバイルの王者の座を降りたのか」──熟練のガジェットマニアならなつかしく、若いモバイラーなら逆に新鮮。「スマホ」を語る上で絶対に必要な業界の歴史を山根博士と振り返りましょう!