6月26~28日まで中国・上海でMWC上海2024が開催された。毎年2月にスペイン・バルセロナで開催されるMWCの中国版で、会場には中国大手キャリアやネットワークベンダーなど多くの企業が出展をした。
もちろんスマートフォンの展示も多く、中国以外では見ることのできない製品も数多く出展されていたので、MWC上海2024会場で見つけたスマートフォンを紹介しよう。
中国自動車メーカーのスマホ「NIO Phone」
「NIO Phone」は中国の新興EVメーカーであるNIOから登場したスマートフォンだ。NIOは創業9年目のEVメーカーであり、自社EVにはAIアシスタント「NOMI」を搭載するなど、自動車本体だけではなくスマートカー向けのシステム開発もしている。
そのNIOが、2023年9月にスマートフォンを投入。EVとのシームレスな操作が可能であり、NIO Phoneから自動車のドアロック操作やシートポジションの操作なども可能。もちろんNIO Phoneで目的地を検索して、そのままナビ情報を自動車に転送もできる。
NIO Phoneの主なスペックは、チップセットがSnapdragon 8 Gen 2、ディスプレーは6.81型で解像度は3088×1440ドット、バッテリーは5200mAh。5Gの対応バンドはn1/n3/n5/n8/n28/n41/n77/n78/n79。ミリ波非対応だがn79に対応しているのがポイント。
カメラは5000万画素+5000万画素(超広角)+5000万画素(2.8倍望遠~となかなかのスペック。カメラ部分だけが若干盛り上がっている独特のデザインだ。
価格は高めでメモリー12GB+ストレージ512GBモデルが6499元(約14万1000円)、ストレージ1TBモデルが6899元(約14万9000円)、背面をヴィーガンレザーにしてスポーティーなデザインにしたEPeditionが7499元(約16万2000円)。ターゲットはNIOのEVユーザーで、プレミアム感をつけることで購入意欲を沸かせようとしているのだろう。
DxOMARKで1位のファーウェイの最新フラッグシップは
「P70」ならぬ「Pura 70 Ultra」
中国国内では昨年からファーウェイのスマートフォンの販売が好調だ。2024年4月に発売した「Pura 70」シリーズは久々となる子会社HiSiliconのチップセット「Kirin 9010」を搭載、高性能カメラに高級感ある本体仕上げ、上位モデルは衛星通信にも対応するなど中国国民が「待っていた」モデルといえる。
その最上位モデルとなる「Pura 70 Ultra」はディスプレーが6.8型(2844×1260ドット)、バッテリーは5200mAhで100Wの有線、80Wの無線の急速充電に対応する。カメラは5000万画素+4800万画素(超広角)+5000万画素(3.5倍望遠)を搭載する。このカメラはAI性能が強力で、高速に移動や回転する被写体もブレのない写真に仕上げてくれる。
また、画像編集ではいわゆる「消しゴムマジック」機能が強力で、広場にいる多数の人物を自然に消すこともできる。カメラ性能はDxOMARKでも堂々の1位だが、AI関連機能は他社のスマートフォンを寄せ付けないほどだ。
価格はメモリー16GB+ストレージ512GBモデルが9999元(約21万7000円)、同ストレージ1TBモデルが1万999元(約23万8000円)。ただし発売から3ヵ月がたっていることもあり、現在は1000元(約2万2000円)値下げして販売されているようだ。中国のハイエンドスマートフォンの中で最も人気のある機種とも言われており、上海の街中でもPura 70 Ultraユーザーを多く見かけたほどだ。
レノボの独自AIを搭載した
中国モトローラの「razr 50 ultra」「razr 50」
モトローラの縦折りスマートフォン「razr」シリーズ。最新モデル「razr 50 ultra」「razr 50」は中国でも6月25日に浙江省の杭州で発表会が開催され、すでに販売中だ。1年前に登場した「razr 40」は3999元(約8万7000円)と中国の折りたたみスマートフォンの中でも最安値で驚きを与えたが、今年のrazr 50は3.6型のアウトディスプレーを搭載しながらも3699元(約8万円)と値段を下げ、業界に衝撃を与えている。4.0型とアウトディスプレーを大型化した「razr 50 ultra」の価格は5699元(約12万3000円)だ。
中国販売モデルとグローバルモデルではハードウェア性能に差はないが、内部ソフトウェアに違いがある。グローバルモデルはAI機能にグーグルのGeminiを搭載しているが、中国モデルはモトローラの親会社であるレノボが開発した独自AI「Lenovo Xiaotian」を搭載している。このためAI機能はグローバルモデルと異なっている。
Lenovo Xiaotianは文書の要約や翻訳、画像生成、トラベルアシスタント、画面認識機能などを搭載。中国販売のレノボのPCにも同AIが搭載されており、レノボ独自のAIの進化はいずれグローバルモデルにも反映されるだろう。
裸眼3Dの動画配信に対応する
ZTE「ZTE Yuanhang 3D」
スマートフォンやタブレットなどの3Dコンテンツはなかなか普及していない。ところが中国ではすでに大手動画配信サイトが3Dコンテンツの配信を始めている。2022年の冬季北京オリンピックから本格化しており、現在はスポーツ中継や大自然のドキュメンタリーなどの3Dコンテンツが配信されているのだ。スマートフォンは裸眼3D表示が可能なものが数機種販売されているが、その1つがZTEの「ZTE Yuanhang 3D」だ。
価格は1499元(約3万5000円)と安価で、スマートフォンとしてのスペックはエントリークラスに抑えている。チップセットはUNISOC T760、メモリー6GB、ストレージ128GBの構成でバッテリーは4500mAh。カメラは5000万画素でサブカメラとして500万画素を搭載する。ディスプレーは6.58型(2408×1080ドット)。「Neovision 3D Anytime」技術により2Dコンテンツの3D化も可能だという。
3Dコンテンツはbilibiliなど大手サイトのほか、中国キャリアの中国移動がMiguといったサービスで配信している。中国移動は3Dコンテンツ視聴サービスを月18元(約390円)で提供。なお裸眼3D非対応のiPhoneなど他社スマートフォンには、ディスプレーに貼り付ける3D表示可能なフィルムも販売している。
5Gフィーチャーフォンや
フリップ式折りたたみスマホも展示
KUMI TECHNOLOGYは開発中のモデルを展示していた。「KUMI A1」は5Gに対応したフィーチャーフォンで、チップセットにUNISOCのUMS9158を搭載する。ディスプレーは3.5型(480×320ドット)、バッテリーは3000mAhだ。
カメラを搭載するが画素数は不明。カメラは3つ並んでいるようだがシングルで、ほかはスピーカーなどになっている。中国では5G普及率が実質50%を超えており、フィーチャーフォンも5G対応を求める声が高まっているとのこと。
縦折りスマートフォンは「KUMI X2」。チップセットはMediaTekのHelio G99を搭載する4Gモデルだ。開いたときのディスプレーサイズは6.9型。メインカメラに1億800万画素を搭載、バッテリーは4000mAhとのこと。価格は他社の折りたたみモデルよりも安くなる予定だという。
本体カラーは紫、緑、ピンク、黒などで、パステル系の色合いがかわいらしい。円形のアウトディスプレーはタッチパネルになっており、ウィジェットが動くほかにカメラを起動するとプレビュー画面として使える。折りたたみモデルを低年齢層にも広げようとする意欲的なモデルだ。
20Mpbsデータ通信可能な衛星タブレット「SATPAD」
StarWinは開発中の衛星通信対応タブレット「SATPAD」を展示した。一見すると普通のタブレットに見えるが、大型の衛星アンテナを搭載している。なお、5G通信にも対応しており、地上では5G、そして5Gカバレッジのないエリアでは衛星通信を利用できる。
SATPADは横から見ると背面側にもタブレットと同サイズのパネルが搭載されている。このパネルに衛星通信用のアンテナが内蔵されているのだ。ヒンジの角度を変えることで、パネルの向きを変えて衛星のある方向にアンテナを向けることができる。
衛星通信の周波数であるKaとKuバンドに対応し、多くの衛星通信サービスに対応することが予定されている。通信速度は最大で下り20Mpbs、上り5Mbpsとのこと。発売時期などは不明。