Tensor G4はさらに「AI推し」、変化の根幹にあるGemini Nano
Pixelは、2021年発売の「Pixel 6」あたりから大きく変わった。グーグル開発のプロセッサーである「Tensor」シリーズを採用し、パフォーマンスに対する考え方を変えたためだ。
Pixel 9シリーズも「Tensor G4」を搭載し、同じ考え方を踏襲する。CPU、GPUでわかりやすくハイエンドと並ぶ性能を目指すのではなく、AIの推論処理に求められる要素を強化する、いわゆる「NPU重視」路線だ。PCも含め、各社が「AI搭載」をいたうようになった現在、この方針は業界全体のトレンドになった、と言ってもいい。
Tensor G4の性能はまだ判然としない。だが、発表会の中でグーグルは、CPU性能もGPU性能もほとんど言及せず、AI推論の性能だけをアピールした。ということは、より「AI推し」ということなのだろう。
もちろん、一般的な性能自体も重視されている。発表会のキーノートでは言及がなかったものの、別途海外プレス向けに開かれた会見では、「ゲームは重要な要素であり、中でもPixel 9 Pro Foldでは画面の広さを活かして快適に遊べることを重視している」とコメントしていた。ハンズオン取材ではわかりにくいところなので、実機レビューのタイミングにでも確認したいところだ。
Pixel 9で動作する「Gemini Nano」を活用した機能はもちろん、Tensor G4を生かしたものである。
特に目立つのは「英語」からスタートする新機能群だ。
日本の視点で見ると、どうしても今回のPixel 9シリーズは「単価アップして性能アップした製品」に見えてくる。写真や動画関係の機能は相変わらずエグい進化だが、そこに興味がないと「またカメラか」と思うかもしれない。
しかし実際には、「今年のPixelはカメラだけでなく普段使いのAI」が進化している。ただ残念なことに、その多くがまだ英語向けである……ということなのだ。時間はもう少し必要だろうが、これが日本語に対応してくるのは間違いない。
特に大きいのは、通話音声を自動的に書き起こしてサマリーを作る「Call Notes」と、スクリーンショットに含まれる文字や内容を認識、検索・分類する「Pixel Screenshot」だろう。
昨年から各社は「生成AI推し」だった。画像生成も翻訳もその成果であり、たしかに魅力的ではある。一方で、それらの機能を「毎日使う」という人は限られている印象も強い。しかし、通話機能の改善や情報の分類に類する機能は、より一般性があって多くの人に刺さる可能性が高い。
これらはデバイス内で独立して動作するGemini Nanoを使う。理由はプライバシー保護だ。NPU重視の流れはほとんど、このためにあるようなものでもある。
さらに、こちらはクラウド処理になるが、音声での(ほぼ)リアルタイム対話を実現する「Gemini Live」もスタートした。これらを組み合わせると、以下の3つが同時に実現する。
・電話はメール並みに「確認して再利用可能なコミュニケーション手段」へ
・スマホ内で起きたことはすぐ記録に残し、AIで検索して利用可能に
・スマホは「常に画面をタッチしている」存在でなく、音声インタラクションがさらに活用される
これがちゃんと実用的なレベルで可能なら、たしかにスマホの「パラダイムシフト」である。