サムスン電子の縦折り型スマートフォン新機種「Galaxy Z Flip6」は、ハード面で従来抱えていた不満要素の改善を着実に進めながらも、新たに「Galaxy AI」を導入したことで、縦折り型のスマートフォンをより楽しく便利に活用できる機能の充実が図られている。
実機からその進化ポイントを確認してみよう。
デザインは変わらずもサブ画面のカスタマイズが向上
まずは外観を確認すると、Galaxy Z Flip6は開いた状態のメインディスプレーが6.7型、閉じた状態のサブディスプレーが3.4型で、サイズは開いた状態で71.9×165.1×6.9mm、閉じた状態では71.9×14.9×14.9mm。重量は187gとなる。
縦折り型のGalaxy Z Flipシリーズは、前機種の「Galaxy Z Flip5」でサブディスプレーが大型化されるなど、大きな変更がなされている。そうしたこともあってGalaxy Z Flip6は外観に関して言うと、Galaxy Z Flip5から大きく変わっていない印象を受け、カラバリは変化しているもののデザイン面でも大きな違いはない。
ただ1つ、変化したと感じるのがメインディスプレーの折り目の“しわ”が抑えられたこと。Galaxy Z Flipシリーズは従来、この“しわ”が目立つとの声が多かっただけに、ヒンジなどの改良によってそれが抑えられたことは、見栄えや使い勝手の面からもうれしい進化といえる。
サブディスプレーに関しても改良がなされている。それは1つの画面に複数のウィジェットを配置できるようになり、カスタマイズ性が高まったこと。従来通り1つの画面で1つのウィジェットを利用することももちろん可能だが、4つまでのウィジェットを設置し、それぞれをタップすることで必要に応じた機能を利用できるようになった。
側面のインターフェースを確認すると、開いた状態で右側面に音量キーと電源キー、左側面にSIMスロット、底面にUSB Type-Cが備わっている。
広角カメラが大幅強化!
Galaxy AI活用の編集機能も楽しい
カメラを確認すると、背面のメインカメラは5000万画素/F値1.8の広角カメラと、1200万画素/F値2.2の超広角カメラの2眼構成で、フロントカメラは1000万画素/F値2.2。構成自体はGalaxy Z Flip5と大きく変わっていないのだが、広角カメラの画素数が前モデルの1200万画素から5000万画素へと、大幅にパワーアップしている。
最近ではハイエンドモデルだけでなく、ミドルクラスのモデルでも5000万画素以上のイメージセンサーを搭載するものが増えており、広角カメラに1200万画素のセンサーを採用していたGalaxy Z Flip5はやや時代遅れな感も否めなかった。
それだけに、ようやくイメージセンサーが強化されたことは、とりわけカメラのニーズが大きいGalaxy Z Flip6にとってメリットだろう。
中でも大きなメリットとなるのがズーム撮影だろう。Galaxy Z Flip6では高い画素数を活かして光学2倍相当のロスレスズームが可能となっており、撮影シーンの幅が広がった。
もちろん大きくなったサブディスプレーを活用したセルフィーの撮影や、折り曲げられることを活かした三脚不要の固定撮影など、フレキシブルな撮影ができる点はGalaxy Z Flip5から変わっていない。幅広いシーンで楽しく撮影できるのは、やはり折りたたみスマートフォンならではだ。
だがGalaxy Z Flip6は撮影だけでなく、Galaxy AIを活用した編集機能の充実も進められている。「Galaxy S24」シリーズと同様、生成AI技術を活用して被写体を移動し、その跡を生成AIで埋める機能などはもちろん利用可能だが、他にもAI技術を活用した新たな機能がいくつか加わっている。
その1つが「AIスケッチ」だ。これは写真上に簡単な絵を描くと、描いた絵に応じたオプジェクトを写真上に追加してくれるもの。写真にマッチするリアルなオブジェクトを生成するだけでなく、写真の内容を理解してオブジェクトの位置やサイズを写真に合わせて配置してくれることから、違和感のない仕上がりを実現してくれるのが大きなポイントだ。
実際に試してみると、車や船、そして犬や猫などはリアルな形で写真の中に追加することが可能。かなり雑なスケッチからリアルなオブジェクトを生成してくれるのには驚きがあるが、形やポーズなどはスケッチに忠実に再現してくれるわけではないので、スケッチは何を追加するかを指示するためのもの、と考えておいた方がよさそうだ。
ただし生成できないものもあるようで、その代表例が人間である。いわゆる“棒人間”を描いてもピクトグラムなどが生成されてしまうし、より人間らしい絵を描くと「この内容で生成することはできません」というメッセージが現れ、生成を拒否されてしまった。
そしてもう1つが「ポートレートスタジオ」である。これは撮影したセルフィーから、さまざまなタッチのイラストを生成してくれる機能で、「3Dアニメ」「水彩画」など複数のタッチを選んで生成できる。
顔写真からイラストを生成すると聞くと、かつてのGalaxyシリーズに搭載されていた「AR絵文字」機能を思い起こす人もいるかもしれないが、こちらはAR絵文字のように動いたりポーズを取ったりすることはないものの、生成AI技術の活用でよりリアルなイラストにしてくれる。
顔写真に特化した機能だけあって、実際に試しても顔が崩れたりすることなく、さまざまなスタイルのイラストを作成してくれることから、複数人で試すと盛り上がりそうだ。
ただし、どのスタイルを選んでも全体的に絵柄がリアル調の仕上がりになってしまうので、たとえば日本のアニメ風のタッチにするなど、デフォルメ化、キャラクター化を期待している人には残念な結果になるかもしれない。