巨大施設と投資で研究を進める ファーウェイのスマートウォッチが目指す世界とは? (2/2)

文●村元正剛(ゴーズ) 編集● ASCII

2024年10月20日 12時00分

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ヘルスラボでの研究がスマートウォッチでの測定の正確さに反映

 ファーウェイは東莞市に148万平方メートル(ちなみに東京ドーム約30個分)にも及ぶ広大なキャンパス(研究開発施設)を構えている。そのキャンパスはヨーロッパの街並みを模して設計されていて、テーマパークのような趣きだ。

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東莞市の松山湖エリアにあるファーウェイの開発研究基地はテーマパークのような雰囲気だった。詳細は別稿でレポートする

 そこから近い場所にあるのが「HUAWEIヘルスラボ」だ。ここはヨーロッパ風ではなく、近代的な体育館といった印象。ウェアラブル製品の研究開発のために、さまざまな実験をしたり、データを計測したりする施設だ。中国では、ここのほかに西安にもあり、2023年にはフィンランドにも開設したという。

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HUAWEIヘルスラボの外観。正式名称は「華為運動健康科学実験室」

 館内の中央には、バスケットボールやテニス、バドミントンなどのコートを設営できるフィールドがあり、それを囲むようにランニングのトラックがあり、屋外へと続いている。さらに、その周囲に高地トレーニング、水泳、ゴルフ、ボルダリングなどのコーナーが並んでいた。

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内部は広めの体育館といった雰囲気

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3コースのトラックがあり、トレッドミルなども並んでいた

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トラックは屋外にまで延びていた

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スイミングの研究・測定エリア。スイミング中はウォッチが動きやすいので、それも踏まえて、正確な心拍数・ストロークの回数などを計測するためのデータ測定が行われている

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多目的な運動の計測をするエリア。心拍数などを計測するほか、カメラで動きも撮影する

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実際にスマートウォッチを装着して、ほかの方法で取得した心拍数データなどとも比較する

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ファーウェイのスマートウォッチには「ロッククライミング」モードもあり。ロッククライミング中の正確な心拍数の血中酸素レベルを速やかに計測する研究も行われている

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HUAWEI WATCH GT 4から強化している「ゴルフ」モードの研究エリアもあった

 取材に訪れた際には、体育大学の学生のような、いかにもアスリートといった体格の青年たちが被験者となって、データが計測されていた。しかし、実際には、普段あまり運動をしない人も含め、さまざまなタイプの人が運動した場合のデータも計測しているとのこと。中国の政府機関である国家体育総局とも協力関係にあり、オリンピックに出場するような選手が参加することもあるそうだ。

 一般的な体育館と大きく異なるのは、多くのカメラが設置されている点。たとえば、バスケットボールなどの球技のエリアには、28台の高性能カメラを設置。プレイヤーの動きをモーションキャプチャで捉える。床の一部にもセンサーが搭載されていて、足の動きや圧力などが記録される。こうしたデータを統合して、スマートウォッチのワークアウト計測のプログラムに生かされているそうだ。

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コートを囲むように多数のカメラが設置されている

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パッと見ではわからないが、中央の3つの板にはセンサーが仕込まれている。「なぜ全面に敷かないのか?」と聞いたら、「1枚あたり2000万円くらいかかる」のだとか

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カメラやセンサーによって、こういうデータを取得できるそうだ

スマートウォッチ開発に対する本気をあらためて実感

 ファーウェイは2019年以降、米国からの制裁によって、スマートフォン事業で苦戦を強いられることになった。中国国内の市場ではスマホ事業が復調し、シェアを回復しているようだが、グローバルでは依然として厳しい状況にある。そこで注力しているのがウェアラブルだ。スマートウォッチの世界市場におけるシェアでは、この数年、常に上位を維持している。

 HUAWEI TruSenseは、製品の競争力を高めて、よりシェアを拡大するための挑戦だろう。ウェアラブル製品の開発のために、自社でここまでの施設を構えている企業を、筆者はほかに知らない。

 スマートウォッチに搭載されるセンサーの精度やデータ分析のアルゴリズムは、一般ユーザーが評価するのは難しいが、ファーウェイがスポーツ・ヘルスケア分野の研究において、こうした投資と研究によって他社にリードしていることは間違いないだろう。

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