ヘルスラボでの研究がスマートウォッチでの測定の正確さに反映
ファーウェイは東莞市に148万平方メートル(ちなみに東京ドーム約30個分)にも及ぶ広大なキャンパス(研究開発施設)を構えている。そのキャンパスはヨーロッパの街並みを模して設計されていて、テーマパークのような趣きだ。
そこから近い場所にあるのが「HUAWEIヘルスラボ」だ。ここはヨーロッパ風ではなく、近代的な体育館といった印象。ウェアラブル製品の研究開発のために、さまざまな実験をしたり、データを計測したりする施設だ。中国では、ここのほかに西安にもあり、2023年にはフィンランドにも開設したという。
館内の中央には、バスケットボールやテニス、バドミントンなどのコートを設営できるフィールドがあり、それを囲むようにランニングのトラックがあり、屋外へと続いている。さらに、その周囲に高地トレーニング、水泳、ゴルフ、ボルダリングなどのコーナーが並んでいた。
取材に訪れた際には、体育大学の学生のような、いかにもアスリートといった体格の青年たちが被験者となって、データが計測されていた。しかし、実際には、普段あまり運動をしない人も含め、さまざまなタイプの人が運動した場合のデータも計測しているとのこと。中国の政府機関である国家体育総局とも協力関係にあり、オリンピックに出場するような選手が参加することもあるそうだ。
一般的な体育館と大きく異なるのは、多くのカメラが設置されている点。たとえば、バスケットボールなどの球技のエリアには、28台の高性能カメラを設置。プレイヤーの動きをモーションキャプチャで捉える。床の一部にもセンサーが搭載されていて、足の動きや圧力などが記録される。こうしたデータを統合して、スマートウォッチのワークアウト計測のプログラムに生かされているそうだ。
スマートウォッチ開発に対する本気をあらためて実感
ファーウェイは2019年以降、米国からの制裁によって、スマートフォン事業で苦戦を強いられることになった。中国国内の市場ではスマホ事業が復調し、シェアを回復しているようだが、グローバルでは依然として厳しい状況にある。そこで注力しているのがウェアラブルだ。スマートウォッチの世界市場におけるシェアでは、この数年、常に上位を維持している。
HUAWEI TruSenseは、製品の競争力を高めて、よりシェアを拡大するための挑戦だろう。ウェアラブル製品の開発のために、自社でここまでの施設を構えている企業を、筆者はほかに知らない。
スマートウォッチに搭載されるセンサーの精度やデータ分析のアルゴリズムは、一般ユーザーが評価するのは難しいが、ファーウェイがスポーツ・ヘルスケア分野の研究において、こうした投資と研究によって他社にリードしていることは間違いないだろう。