人間とコンピューターが融合する未来
ソフトバンクが手がける脳オルガノイドが見られる
ソフトバンクが、未来のコンピューターとして研究開発を進める「BPU」を用いたイベントを開催した。「BPU」とは「Brain Processing Unit」の略。iPS細胞で作られる人工の脳細胞「脳オルガノイド」を用いたコンピューターだ。その概要については以前取材した記事「実用化は50年後!? ソフトバンクがいち早く研究を進める”脳細胞”を活用したコンピューター」を参照していただきたい。
今回のイベントは「ソフトバンク×真鍋大度×東京大学 特別展 Brain Processing Unit −生命とコンピューターが融合する未来−」と題して開催された。
ソフトバンク先端技術研究所は、2022年からアーティストの真鍋大度氏と、東京大学 生産技術研究所 池内与志穂 准教授と共同で研究を進めている。これまでの研究の成果を、アートとして披露した形だ。
出展された作品は3つ。まず「細胞の耳」という作品。人の耳は複雑な音楽の要素を瞬時に分析し、その特徴を認識することができる。そこで、脳オルガノイドが音楽を認識することができるか否かが実験された。
脳オルガノイドには“耳”はない。そこで、人の内耳での周波数を分析し、音楽を光刺激に変えて、脳オルガノイドに与えて反応を観察したという。音楽のジャンルによって反応が異なることを確認でき、人が音楽を聴いて感じる余韻と同じように、刺激を停止した後の反応にも差が認められたという。
2つ目の作品は「神経細胞による自律型ロボット制御実験」。3.5m四方の囲われたスペースで犬型ロボットを歩かせて、脳オルガノイドによる制御によって、壁にぶつかることなく歩く様子が披露された。
ロボットが自由に動ける状態では電気刺激が与えて、障害物を認識すると刺激を減らし、衝突する直前には刺激が完全になくす。その繰り返しによって、人の脳と同じように障害物を回避する方法を学習する仕組みだ。
3つ目は「生命とリズム」という作品。人は音楽を聴くと自然に身体を揺らしたりするように、意識することなくリズムを刻んでいる。心臓の鼓動、呼吸などにも一定のリズムがある。脳オルガノイドを用いて、生命が持つ根源的なリズムと、外部からのリズムカルな音楽的刺激への反応の関係性を探るのが狙いだ。
脳オルガノイドにリズムパターンを電気信号として入力する。1分間サイクルの前半30秒で定期的な刺激によってリズムパターンを入力し、後半30秒では刺激を停止して、脳オルガノイドの自律的な活動を観察。脳オルガノイドの活動は特徴的なパターンを形成し、リアルタイムで可視化するとともに、音響信号へと変換される。
与えたリズムに対する脳オルガノイドの応答と、その後の自発的な活動変化を継続的に観察。さらに、脳オルガノイドの応答結果をフィードバックして、そのループによって新たなリズムパターンが生成されることも披露された。