三つ折りスマホが中国から世界へ! ファーウェイが再び世界の覇者となる日も近い!?

文●村元正剛(ゴーズ) 編集●ASCII

2025年02月21日 09時05分

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 ファーウェイがマレーシア・クアラルンプールで「Innovative Product Launch(革新的な製品の発表)」と銘打った発表会を開催。昨年、中国で先行して発売され、大きな話題となった三つ折りスマホ「HUAWEI Mate XT ULTIMATE DESIGN」のグローバル展開を開始する。価格は3499ユーロ(約55万円)。マレーシア、タイ、フィリピン、インドネシア、香港、カンボジアで順次発売される。現時点で、その他の国・地域での発売は未定だ。

発表会の目玉は世界初の三つ折りスマホ

 HUAWEI Mate XT ULTIMATE DESIGN(以下、HUAWEI Mate XT)は、世界初の三つ折りのスマホだ。折りたたんだ状態では6.4型(2232×1080ドット)、本を開くように開くと7.9型(2232×2048ドット)、さらに、後ろ向きになっている部分を手前に回して完全に開くと10.2型(2232×3184ドット)を使える。

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カラバリは中国版と同じ2色

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折りたたみ時のサイズは156.7×73.5×12.8mmで、重さは298g。やや重いが、フツーのスマホと同じように操作できる

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開くとウェブや地図などを見るのにちょうどいい画面サイズになる

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完全に開くとタブレット並みの大画面で、マルチタスク作業もスムーズにできそうだ

 普段は折りたたんで持ち歩いて、フツーのスマホの感覚で使い、一般的な2つ折りスマホのように大画面スマホとして使ったり、高性能なリアカメラで自分撮りをしたりもできる。そしてタブレットに匹敵する画面でビジネスタスクやクリエイティブワークもこなせるわけだ。

 筆者は中国向けのHUAWEI Mate XTにも触れたことがあるがデザインは共通のようだ。

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ハンズオン会場にはHUAWEI Mate XTを分解した部品も展示されていた

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耐久性が重視されるヒンジには、これだけの部品が使われている

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開閉は軽く力を入れる必要があったが、安定感があり、不安なく扱える

 ファーウェイは、近年にリリースしたモデルのSoCを公開していないが、HUAWEI Mate XTのSoCも非公表。おそらく自社で開発したものを搭載しているはずだ。スペック表では対応ネットワークは4Gまでとなっている。

 OSはEMUI 14.2。中国向けはAndroidからの脱却をめざす「Harmony OS」を採用しているが、グローバル向けはAndroidベースのEMUIを継続しているようだ。Googleモバイルサービス(GMS)には対応せず、アプリはファーウェイ独自の「HUAWEI AppStore」から入手するが、Android向けアプリを使う方法もあると推測される。

 カメラはメイン(5000万画素)+超広角(1200万画素)+望遠(1200万画素)の3眼で、メインカメラはF値1.4~4.0の可変絞りに対応。メインと望遠は光学式手ブレ補正にも対応している。

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カメラの性能の高さも魅力。800万画素のフロントカメラも搭載している

 バッテリーは5600mAhで、最大60Wの急速充電にも対応。さらに、最大50Wのワイヤレス充電にも対応している。

なぜマレーシアで発表したのか?
ファーウェイのアジア拠点がマレーシアだから

 ファーウェイは世界に複数の拠点を構えているが、アジアの拠点はマレーシアのクアラルンプールにあるそうだ。日本法人のファーウェイ・ジャパンは以前は「日本・韓国リージョン」に属していたが、現在は「アジアリージョン」に統合されているそうだ。HUAWEI Mate XTはマレーシアを含むアジアから発売となるので、クアラルンプールでの開催は自然な流れだ。

 発表会はMITEC(Malaysia International Trade and Exhibition Centre)で開催された。来場客は約800人で、そのうち約500人がメディアだったそうだ。中国を除くアジア各国のほか、ヨーロッパ、南米からの取材陣も参加。筆者は、ファーウェイがアメリカからの制裁を受ける前に、ファーウェイのグローバル発表会を何度か取材したことがあるが、今回の発表会は懐かしさを感じるほどに大々的なものであった。ちなみに、日本からの取材は22人。現在スマホをリリースしていないことを考えると、かなり多いだろう。

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会場となったMITEC

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世界からのメディアとパートナーが招待された発表会場は大賑わい

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発表会後のハンズオンも大賑わい

 今回の発表会の目玉であるHUAWEI Mate XTの発売国はマレーシア、タイ、フィリピン、インドネシア、香港、カンボジア。いずれも中華系が多い国・地域で、スマホ市場においても中国メーカーが強い印象。クアラルンプールのショッピングセンターをのぞくと、シャオミ、OPPO、Vivo、Realmeなどの店舗は軒を並べていた。ファーウェイは中国では市場シェアを回復し、1位をうかがう状況にある。ファーウェイのブランド認知度が高いアジアにおいてもシェア回復を狙いたいところだろう。

革新的なタブレットと
日本で先行発表されたイヤホンも

 今回の発表会ではHUAWEI Mate XTのほかに、2つの革新的な製品が発表された。

 まず、「HUAWEI MatePad Pro 13.2」というタブレットだ。革新性はディスプレーにある。光の反射を抑えるアンチグレア特性を持つ「HUAWEI PaperMatteディスプレイ」が搭載され、照明や太陽光の下でも高い視認性が得られるのが利点。触れるとサラサラとして感触で、ペンを使って絵を描くにも適している印象だ。

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一般的なディスプレーに光を当てると反射するが……

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PaperMatteディスプレイは反射しない

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PaperMatteディスプレイを使ってアーティストが絵を描くデモンストレーションも披露された

 HUAWEI MatePad Proには、タブレットを立てられるカバーとキーボードも同梱。ノートPCの感覚で使うことも可能。Microsoft Officeと互換性がある「WPS Office」がプリインストールされていて、ビジネスでも活用できる仕様となっている。

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 同梱のマグネット式キーボードを接続するとノートPCライクに使える。HUAWEI MatePad Pro 13.2の価格は、ノーマルタイプ(12GB+256GB+キーボード)が1049ユーロ(約16万5000円)、PaperMatteエディション(12GB+512GB+キーボード)が1199ユーロ(約18万8000円)。

 そして、もう1つは「HUAWEI FreeArc」というワイヤレスイヤホン。2月7日に東京で開催された発表会で、世界に先駆けてお披露目された製品だ。出荷台数が200万台を超えるヒットを記録した「HUAWEI FreeClip」に続く、オープンイヤー型イヤホンで、ファーウェイ製品では初めての耳掛けタイプを採用している。

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日本で先行して発表されたHUAWEI FreeArcは119ユーロ(約1万9000円)

 いわゆる正常進化の新製品ではなく、新しい技術を導入した製品に絞って発表したのは、ファーウェイの技術力をアピールする狙いがあったのだろう。

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発表会では、オマケ的にスマートバンドの新モデル「HUAWEI Band 10」も発表された。実機は展示されず、パッと見では前モデルからの大きな変化は認められなかったが、睡眠のトラッキング性能が向上しているとのこと

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ファーウェイのスマートウォッチがQRコード決済に対応することが発表されると、マレーシアのメディアから歓声が上がった。HUAWEI Band 10は日本でも発売されるそうなので、対応を期待したい

クアラルンプールの中心でイベントも開催

 発表会の翌日からは、クアラルンプールを代表する大規模商業施設「PAVILION」にてHUAWEI Mate XTに触れられるイベントも開催。PAVILIONの入口付近にあるデジタルサイネージには、HUAWEI Mate XTが飛び出すかのような映像が映し出され、通行人の目を引いていた。

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クアラルンプール屈指の繁華街、ブギッ・ビンタンにある「PAVILION」のサイネージにHUAWEI Mate XTが大きく映し出されていた

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PAVILIONに入ると、またまたHUAWEI Mate XTの広告がドカンと。赤いボックスの中は展示スペースとなっている

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発表されたばかりのHUAWEI Mate XTに自由に触れることができた

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これは三つ折りのHUAWEI Mate XTではなく、二つ折りのHUAWEI Mate X6だが、150kgのバイクを持ち上げられる強度を持つことを示す展示もあった

 HUAWEI Mate XTはファーウェイの最高峰のぜいたくなモデルなので、実際に購入を検討できる人は限られる。しかし、ファーウェイは従来から富裕層をターゲットにしたスマホやスマートウォッチを出しているので、3499ユーロでも欲しいという人は少なくないだろう。また、他社をリードする製品をアピールすることで、多くの人がファーウェイの技術力の高さを再認識することにもつながるはずだ。

 通信業界は5年先のことはわからず、10年も経てば状況は大きく変わる。ファーウェイのスマホが日本で好調にセールスを伸ばしていた当時、ファーウェイ・ジャパンの代表だった呉波(オリバー・ウー)氏は、日本市場での目標を聞かれると、いつも「生き残ることが重要」と答えていた。ファーウェイは今まさに世界市場でしぶとく生き残って、再び大きく飛躍する機会をうかがっているようにも見える。

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