iPhone SE4ではなく、iPhone 16シリーズの一員として発表された「iPhone 16e」。ただし、廉価版であることは間違いないわけで、画面上部のノッチやカメラの数などに上位モデルのiPhone 16とは機能差・性能差がある。そのほか、どんな細かな違いがあるか、いろいろ根堀り葉掘り見ていこう。
まず、前述したような主要な部分については、別記事(「【詳細表でわかる】iPhone 16eとiPhone 14/15/16/SEを詳しくスペック比較」)も合わせて確認してほしい。本記事では、そこには載っていないような細かな部分を紹介する。
【CPU】同じ「A18」だけど、GPUのコア数が少ない!
まずはCPU。iPhone 16eは廉価モデルなのに、標準モデルの「iPhone 16」と同じCPUを搭載して、高い処理性能を持つとともに、日本語でも4月初旬から対応する「Apple Intelligence」も利用可能だ(Apple IntelligenceはiPhone 15でも対応しないのでスゴい!)。
そして以下の画像の上半分がiPhone 16eでのA18の説明、下半分がiPhone 16。「6コアCPU」「16コアNeural Engine」については共通だが、GPUはiPhone 16が「5コア」なのに対して、16eは「4コア」になっている。
GPUのコアを1つ減らした仕様にすることで、歩留まりが向上するのか、製品の差別化のためか、理由はハッキリしないが(Macでも同種のコア数違いはよくある)、まったく同じ性能でないことは間違いない。
実際のところはA18の性能をフルに活かしきったようなスマホ用ゲームは現時点ではほぼ登場しておらず、性能差を感じる場面はほとんどないのも確かだろう。
【USB-C】画面出力機能が省略されている
続いてはもう少し影響がありそうな部分。端子がLightningではなく、USB-Cになったのは大歓迎だが、同じくUSB-Cを採用しているiPhone 15や16と異なり、DisplayPortに非対応。つまり、画面出力機能は備えていないと考えられる。
DisplayPortに対応したiPhoneであれば、汎用のUSB Type-CーHDMIケーブルを購入することで、iPhoneの画面をテレビやPC用ディスプレーで表示したり、iPhone用ゲームの実況をする場合にキャプチャーユニットに接続すればよかったが、それは不可能となる。
無線でのAirPlayは引き続き可能とは言え、ケーブル接続で以上のような使い方を考えているなら、iPhone 16を選ぶべきだろう。
なお、USBの速度が、USB 2.0相当(480Mbps)なのは標準モデルも同じ。4K動画の撮影データなど、iPhoneとPC/Macとの間で大容量ファイルを転送する場合は、10Gbps対応と高速なProモデルを選びたい。
【5Gモデム】定評のあるクアルコム製からアップル製に変更
スマホのキモとなる通信機能。特にモバイルネットワークへの接続は、国ごとに異なる多数のバンドとその無数の組み合わせ、2G/3G/4G/5Gと複数世代の併存が絡まり、極めて複雑な領域。そのため「モデム」とも呼ばれる、モバイルネットワーク接続用のチップセット、特に5G対応タイプは限られたメーカーのみ(クアルコム、サムスン、MediaTek、とファーウェイ?)が提供している。
iPhoneでは、5G対応モデル以降、それまで訴訟で激しく争っていたクアルコムと和解し、同社のチップを採用してきたが、iPhone 16eではついにアップル自社製の「C1」を搭載することを発表した。
そのアップルは完全に一から開発したのではなく、2019年にインテルのモデム事業を買収。5年のときをかけて開発を進めてきた。もっともインテルは、5Gモデム開発がうまく行かなかったからこその事業売却であり、また4G時代にアップルはiPhoneにインテル製モデムを採用していたものの、決して評判は良くなかった……。
アップルは、C1を採用するメリットとして省電力をアピールしており、自社製品(iPhone)向けに最適化できることを考えると実際にそうなのだろう。さらにiPhone独自の各種機能を実現する上でも自社製であることは影響が大きいはず(CPUでのアドバンテージは極めて大きい)。最初から順調な滑り出しを見せるのか、細かな接続性の問題でキャリアが苦慮することになるのか、発売されてみないと正直よくわからない。
【対応バンド】国内独自の4Gの1.5GHz帯に非対応
これについては別記事で詳しく紹介しているが(「【ドコモ大丈夫!?】iPhone 16eは1.5GHz帯に非対応 どういう意味を持つ?」)、iPhone 16eは最近のiPhoneと異なり、4Gで日本独自の1.5GHz帯に非対応となっている。
特にドコモのネットワークでは、1.5GHz帯はかなり用いられている。ただ、1.5GHz帯で通信できないことがユーザーレベルでどのくらい快適さに影響があるかはハッキリとわからない。それでもプラスの要素とも考えにくい。
なお、ネットワーク関係では、Wi-Fiについても、iPhone 16のWi-Fi 7対応に対して、16eはWi-Fi 6止まり。ただし、高価なWi-Fi 7&6GHz帯対応ルーターとその性能が十分活きるネットワーク環境も含めて必要なことを考えると、そこまで大きな問題ではないかもしれない。さらに超広帯域無線(UWB)もiPhone 16eは非対応だ。
【MagSafe】ワイヤレス充電には対応したのに……MagSafe非対応
iPhone 16eはiPhone SEシリーズでは対応していなかったワイヤレス充電が利用できる! ……のにMagSafeには対応していない。なので、基本的にはパッド型充電器の上に置いて充電することになりそう。
ちなみに、アリエクなどの海外ECサイトやアマゾンでは、以前から「ワイヤレス充電は可能だが、MagSafe非対応」のAndroidスマホ向けに、MagSafe機器が使えるようにするリングを内蔵したケース類が多数販売されていて、すでに完全に市場ができている。
とは言え、「充電」という危険もともなう部分だけに微妙な製品は使いたくない。やっぱりMagSafeには対応していてほしかった!
【カメラ】光学手ぶれ補正が通常タイプに
カメラが1個となりつつも、4800万画素センサーで画質を落とさない2倍望遠撮影が可能など、iPhone 16eのカメラは(超広角を必要としないなら)十分以上と言ってもいい性能を持っている。
細かな部分での差を見ると、iPhone 16では光学手ぶれ補正が「センサーシフト式」となっていたのに、iPhone 16eではその記述がないので一般的なレンズシフト式と考えられる。歩きながらでの動画撮影などでは差が出るかもしれない。また、マクロ撮影も非対応だ。
【バッテリー】標準モデルよりも長い最大26時間
ややネガな話が続いたので、標準モデルと比べての大きな強みを最後に。ニュースリリースで「画期的なバッテリー駆動時間」とうたうように、バッテリーの持ちは確かのよう。
ビデオ再生時の動作時間では、iPhone 16の22時間に対して、iPhone 16eは26時間。省電力性能での改良もあるだろうが、おそらくはカメラユニットが占める領域が少ない分、バッテリー自体が大型化しているのではないだろうか。
機能差があるのは、価格差があるので当然ではある
それよりCPUが最新でApple Intelligence対応が大きい
どうにもネガな話が多くなったが、価格差がある両モデルなので、機能差があるのは当然のこと。また、細かな話が中心だ。
一方で上位モデルと基本的に同じCPUを搭載し、Apple Intelligenceに対応する点は大きく、特にiPhone 16eが今後キャリア経由で割安に販売されることがあれば、オトク感はグッと増す。あとはユーザーがどの部分を重視するかだろう。