MWCのKDDIブースではデータセンターの構想をアピール
AIがアラームの内容を分析して、自動で対処する
MWC25でのKDDIブースを紹介。まず中央に展示していたのが、AI時代におけるデータセンターのあり方を提案する水冷式データセンターの構想。
AI処理の高度化により、サーバーから発生する熱量が飛躍的に増大している現状に対し、KDDIは水冷システムを導入することで、効率的な冷却と省エネルギー化を目指している。ブースでは、実際に使用される熱交換器の模型が展示され、その内部構造や冷却の仕組みを詳細に解説していた。
この水冷式データセンターの建設において、シャープが液晶パネル製造に用いていた堺工場を再活用するというユニークなアプローチを世界にアナウンス。通常2~3年を要する建設期間を約半年にまで大幅に短縮できる見込みとのこと。
ネットワーク運用においては、ゼロタッチオペレーションによる障害復旧と、生成AIを活用したインシデントリカバリーサポートを紹介。
24時間365日体制で監視をする運用チームのモニター画面を模した展示では、過去に発生した障害が自動的に復旧した事例がグレー表示で示され、現在発生中の障害に対してAIがどのように対応していくかを紹介している。
生成AIが大量のアラームの中から根本原因を特定し、復旧に向けた分析をするシミュレーションでは、障害が発生した状況を生成AIに入力すると、関連するサービスやプラットフォームの相関情報が図式化され、さらに自然言語で状況が表示され、オペレーターはこの分析結果を基に、より詳細な調査や復旧作業へと進むことができる。
復旧手段の提案と、それぞれの復旧にかかる想定時間もAIから提示され、オペレーターは状況に応じて最適な手段を選択できる。メールのフェールオーバーを例とした復旧デモンストレーションでは、オペレーターがAIの提案に基づき対応を選択し、システムが復旧するまでの流れが示された。
ネットワーク運用でもAIを最大限活用
イベント時はAIが過去の例から基地局パラメータ設定を提案
ネットワーク運用の将来に関する展示では、インテントドリブンネットワーキング(Intent-Driven Networking: IDN)と生成AIを組み合わせたユースケースが紹介された。
大規模イベント発生時における通信品質の維持・向上を想定したデモンストレーションでは、鎌倉の花火大会を例に、運用者がAIチャットを通じて対策を検討する様子をシミュレート。
運用者は、イベントの開催日時や場所といった簡単な情報を自然言語で入力するだけで、AIがそれらの情報から必要な要件を自動的に抽出。従来のIDNでは、運用者が専門的な知識を必要とする「インテント」と呼ばれる設定情報を直接入力する必要があったが、このシステムでは、AIが要件をインテントに変換するため、専門知識のない運用者でも容易にネットワーク設定を行うことができる。
AIは、抽出された要件に基づき、基地局のパラメータ設定を提案。シミュレーションの結果、特定のエリアで通信品質の低下が予測された場合には、移動基地局の追加を提案するなど、インタラクティブに対策を最適化していく。
AIを活用したコンビニの未来化も
コンビニバイトが苦労するドリンクの補充を自動化
AIを活用したデジタルサイネージのデモンストレーションでは、コンビニエンスストアの一角を再現。AIカメラが来店客の動きを解析し、手に取った商品に応じて、関連性の高い広告やキャンペーン情報、価格情報などをディスプレイに表示する様子が実演された。たとえば、抹茶ラテを手にした客に対しては、抹茶ラテの広告が流れるといった具合。
このデジタルサイネージの導入は、顧客体験の向上だけでなく、紙媒体の広告やキャンペーン情報の削減、そしてそれらを設置する店舗スタッフのオペレーション負荷の軽減にも貢献する。KDDIは、今年の春夏からローソンの一部店舗に導入する予定としている。
さらに、コンビニにおける飲料品の自動補充するロボットシステムを展示。青いアームを持つロボットは、先端に搭載されたカメラによる画像認識技術を活用し、棚の商品の品切れ状況を把握する。一方、補充棚にいる別のロボットは、重量センサーによって各商品の在庫数を管理している。これらの連携により、売れ筋の商品が自動的にバックヤードから補充され、常に棚が最適な状態に保たれる。
日本のコンビニでは、毎日大量のペットボトル飲料が販売され、その陳列作業は店舗スタッフにとって大きな負担となっている。特に、バックヤードは冷蔵されており、寒冷な環境での作業となる。このロボットシステムの導入により、店舗スタッフは陳列作業から解放され、より顧客対応に注力できることが期待される。
未来の顧客体験として提案されたのが、無人コンビニを搭載した自動運転車。スマートフォンアプリを使った商品の読み取りから決済までの流れを紹介していた。
地方における人口減少とリアル店舗の減少という社会課題に対し、KDDIはAIを活用した次世代リモート接客のソリューションを提案。コンビニなどの身近な場所に設置されたAIアバターを通じて、情報リテラシーが低い層でも容易にオンラインサービスを利用できる環境を提供する。
腰痛に悩む高齢者がAIアバターに話しかけると、オンライン診療の案内を受けたり、携帯電話の故障で困っている人が修理や機種変更の窓口に繋いでもらったりといった具合に、顧客の発話内容をAIが認識し、適切なサポートへと導く。さらに、この案内先のサービス自体もリモート接客で提供されるため、場所や時間に制約されることなく、様々な困り事を解決できる。