アップルがApple M3チップを搭載する新しい「iPad Air」を間もなく発売します。2024年5月にM2搭載iPad Airが出たばかりな感じもしますが、新旧モデルで「どこが変わったのか・変わっていないのか」も含めて、M3搭載iPad Airの実機レポートをお届けします。
M3チップを搭載する初のiPad誕生
iPad AirはフラグシップのPro、スタンダードの無印の中間に位置するモデルです。多彩な機能とポータビリティの良さを兼ね備え、Appleシリコン搭載モデルは4月に日本語対応となる「Apple Intelligence」が楽しめます。
今回、筆者は11インチのパープル、ストレージ1TBのモデルをテストしました。
アップルはM1チップを搭載するiPad Airを2022年3月、M2搭載iPad Airは2024年5月にそれぞれ発売しました。M1からM2の間は2年ほど待たされたり、M2搭載モデルに大型の13インチが登場したこともあって大きな変化を感じたものですが、今回M3搭載モデルは「着実に、静かな進化」を遂げたと言えます。
最大の見どころは、Apple M3チップの搭載によりパフォーマンス向上を実現したことです。M3チップは2023年にデビューしていますが、これを搭載するiPadはこのAirが初めてです。
筆者はM3を搭載する14インチのMacBook Proを使っています。8コアCPU、10コアGPUを搭載するMacBook ProのM3チップに対して、iPad AirのM3チップは8コアCPUと9コアGPUという構成です。ベンチマークソフトの「Geekbench 6」でパフォーマンスを測定したところ、MacBook Proの方がGPUのMetalスコアがやはり若干勝りましたが、実力はほぼ同等と評価できる数値でした。
Apple Intelligenceや高負荷な映像処理が軽快
機械学習用のNeural Engineは16コア。構成はM1チップのNeural Engineと同じですが、M3チップはCore MLタスクのパフォーマンスが60%改善されているとアップルは説明しています。
「写真」アプリの「クリーンアップ」ツールを使って、写真に写り込んだ不要な被写体をApple Pencil Proでなぞりながら消してみます。クリーンアップは4月の日本語対応を待たずして、すぐに試せるApple Intelligenceの便利機能のひとつです。
なるほど快速処理でした。同じ写真を読み込んだA17 Proチップ搭載のiPad miniでクリーンアップしてみると、ほんのわずかにM3搭載iPad Airの方が処理が速く感じられました。
M3チップの強化された「メディアエンジン」により、映像ファイルの処理パフォーマンスに体感の変化が少し濃く現れそうです。筆者は今回試せていませんが、HEVCフォーマットの8Kビデオファイルの処理、ProResフォーマットによるビデオのデコード・エンコード、ならびに高圧縮AV1フォーマットのビデオをハードウェアデコードできる機能などが追加されています。iPad版Final Cut Proアプリなどを使って、iPadを持ち運びながらビデオファイルの編集などをこなしたいクリエイターにも新しいAirは最適です。
M3搭載iPad Airは、11インチと13インチのモデルがどちらもオールスクリーンデザインのLiquid Retinaディスプレイを搭載しています。画面の大きさ以外では、13インチのモデルはSDR輝度が100ニト高いところが差分です。両サイズともP3ワイドカラー、True Tone、反射防止コーティングなどを備えています。
Apple Pencilは高機能なProがオススメ
専用デジタルペンは昨年新しく登場したApple Pencil Proと、USB-CのApple Pencilが使えます。Apple Pencil Proは本体のタップ操作によるペンと消しゴムツールの切り替えなど、頻繁に使う操作に対する触覚フィードバックがあることがやはり一番のメリットです。
どちらのペンを買うべきか、迷う前にApple Pencil Proを選ぶことを強くオススメします。
Apple Pencil Proで文字を書いたり、イラストを描いたり。M3搭載iPad Airも期待に応える快適さでした。ただ、上位のiPad ProだけがディスプレイにProMotionテクノロジーを搭載しているので、Apple Pencil Proによる書き味はいっそう滑らかです。画面スクロール表示のチラつきも抑えてくれます。特にiPad Airで頻繁にApple Pencil Proを使う予定がある方は、少し背伸びをしてiPad Proに手を伸ばす選択もアリだと思います。
ペン先の動きに対して描画が遅れずに付いてくる書き味を、ぜひApple Storeの実機展示などで確かめてください。細かい線で網掛け模様を描いてみたり、線画で図形を描いてから中をマーカーペンツールでベタ塗りしてみると、連続するペン先の動きに対するディスプレイの反応がわかりやすいと思います。
前世代のiPad Airにも対応する新しいMagic Keyboard
M3搭載iPad Airの発売に合わせて、アップルは本機専用の新しいMagic Keyboardを発売します。キー運びが1mmのシザー構造、フローティングカンチレバー方式のスタンドやパススルー充電ができるUSB-Cポートを引き続き備えています。バックライトキーは非搭載となりましたが、代わりに14のファンクションキーを加えました。
ルックスと操作感はM4搭載iPad ProのためのMagic Keyboardにも似ています。パームレスト部分の素材はポリウレタンです。トラックパッドが少し大きくなったのでマルチタッチジェスチャーの操作は安定します。
iPad Airでビデオや音楽を楽しむ時にもMagic Keyboardが役に立ちます。11インチのキーボードは3000円、13インチのキーボードは1万円も前のモデルよりも安くなったので、今が絶好の買い時だと思います。M2搭載iPad Air、第5・第4世代のiPad Airとの互換性も確保されているので、ここまでMagic Keyboardの購入をガマンしてきたM2モデルのユーザーはラッキーかもしれません。
Magic Keyboardを装着した11インチのiPad Airは、質量が約1.08kgでした。全体の厚さサイズは1.5cmです。筆者が持っている13インチのM1搭載MacBook Airは質量が約1.29kgで、本体の最も厚い部分が1.61cmです。
iPad Airの方が12MP広角アウトカメラ付きで、Apple Pencilによる手書き入力ができたり、5G対応のセルラー通信機能内蔵モデルも選べます。
近くモバイルノートとしてMacBook Airの購入を検討している方は、iPad Airも選択肢に入れて比較してみるとよいでしょう。自分にとって必要な機能、使い勝手の面で重視するポイントが明快に見えてくると思います。