サムスン本社では開発担当者によるトークセッションがあり、改めてカメラとGalaxy AIについて説明があった。
Galaxy S25のカメラ担当者が語る進化の哲学
AIとハードウェア融合で実現する「誰もがプロ」の世界
サムスン電子 MX(Mobile eXperience)事業本部 ビジュアルソリューションチーム長・副社長のジョシュア・チョ氏は、Galaxy S25のカメラ開発において「誰もが手軽に良い写真を撮れて、同時にプロフェッショナルユーザーも満足できるカメラ」を目指したと語った。その実現のために、「最高のハードウェア」「すべてのユーザーを満足させる機能」「AIを活用した編集ツール」という3つの原則に焦点を当てて開発を進めたという。
Galaxy S25には、現時点で最も優れたセンサー構成(200MP広角、50MP超広角、50MP望遠、10MP望遠)が採用されており、特に超広角センサーの50MP化により、マクロ撮影の画質が4倍向上。また、Galaxy S24比でNPUが40%、CPUが37%、GPUが30%向上し、より高度な画像処理能力を実現している。レンズも改良され、取り込める光量が34%増加。これらのハードウェア進化に加え、AIモデルの強化により100倍ズームの画質も向上している。
特筆すべきは、カメラのシャッターが押されてから保存されるまでのすべての過程で、Galaxy S24より40%多い、160種類ものAIモデルが稼働している点だ。これは、CPU性能の飛躍的な向上によって可能となり、良い画質とユーザー体験の提供に貢献しているという。
具体的なAI機能としては、高速シャッター時でも動きのある被写体のノイズを処理し、鮮明なポートレートを実現する技術や、トレンドに基づいたスキントーン表現、そして顔を中心としたHDR補正の強化が挙げられる。また、5000枚以上のアナログ写真を学習したAIフィルターは、フィルムスタイルの質感やグレインノイズの強度調整も可能にした。Nightography Videoも、ジャイロセンサーと、独自のノイズ除去フィルターを組み合わせることで、低照度環境でのノイズが大幅に低減されている。
プロフェッショナル向け機能も充実しており、Expert RAWアプリでは仮想的に絞り(F1.4~F16相当)を変更し、深度を制御できる「仮想絞り」機能が初めて搭載された。さらに、ポストプロダクションでの色編集に適した「Logビデオ」撮影に対応し、ビデオ撮影は、HDR10レベルの10bitがデフォルトとなった。
編集機能も進化し、AI生成編集では被写体だけでなく影も除去したり、消去部分の背景を自然に補完できるようになった。動画の「オーディオ消しゴム」機能は、動画中の音源を分析し、個別に音量調整したり、主役の声を強調したりすることが可能だ。
今後の展望については、レンズ選定は長年の先行研究に基づき、その時代の最適な組み合わせを選択しており、ハードウェア進化とAI技術発展の両軸を追求していく方針だという。また、他社カメラブランド(ライカなど)とのコラボレーションについても、さまざまな形で検討を続けていると述べた。
「真のAIフォン」を目指すGalaxy
Galaxy AIの未来と日本市場
サムスン電子 MX事業本部技術戦略チーム長・常務 ソン・インガン氏に、Galaxy AIのビジョンや最新フラッグシップモデル「Galaxy S25シリーズ」に搭載されたAI機能について話を聞いた。
ソン氏は「私たちが追求する“真のAIフォン”は、三つの要素で定義できます。1つ目は、従来のテキスト中心から脱却し、テキスト、画像、音声などを同時に認識・理解し、人が見て、聞いて、話すように実行できる“マルチAIエージェント”。2つ目は、グーグルなど多様なパートナーとの協力で実現した、アプリケーションと有機的に連携する“統合型AIプラットフォーム”。そして3つ目は、ユーザーひとりひとりに最適化された“パーソナル化されたAI体験”の提供です」と語り、この3つを真のAIフォンの柱として重視していることを強調した。
Galaxy S25では、このビジョン実現のため次世代AIプラットフォームとOne UI 7.0を搭載し、AIを「ユーザーの実生活に役立つもの」「簡単に使えるもの」「データを安全に保護するもの」という3つの軸で進化させている。
たとえば、以前は複数のアプリを操作して行なっていたスポーツ観戦スケジュールの検索、カレンダー登録、友人への共有といった一連のタスクも「次週の〇〇の試合日程を確認して、カレンダーに登録し、息子に送って」と自然な言葉で指示するだけで、AIエージェントがまとめて実行してくれる。また、写真検索も「昨年、子供が赤い傘を持って手をつないで歩いている写真を探して」といった自然な言葉で直感的に検索できるようになった。
これは、スマートフォンがユーザーの「見る」「聞く」「話す」「テキスト入力」を同時に理解するマルチモーダルに対応したことで可能になったという。
日本市場におけるAIの現状については、日常的にAIを利用するユーザーは約6%とほかの地域に比べて低いが、それだけに大きな潜在力があると考えている。AI利用の目的としては、生産性や創造性に加え、他地域ではコミュニケーションが多いのに対し、日本では「健康」への関心が高いという特徴が見られるという。Samsung Healthアプリは長年開発を続けており、今後はさらに多様なAI機能を連携させることで、個人化されたインサイト提供に注力していくとした。
一方で、AIに関する懸念としては「個人情報の脅威」が圧倒的に多く、データ保護への高い関心がうかがえる。この懸念に対し、Galaxy AIは安全性を最優先していると言及。ユーザーの利用データから好みを理解する「個人データエンジン」は、クラウドではなくオンデバイスにのみ保存され、ハードウェアベースの強固なセキュリティプラットフォーム「Knox」で保護される。さらに、より拡張された体験のためにクラウドAIを利用するか、オンデバイスAIに留めるか、ユーザー自身が簡単に選択できる透明性も提供している。
AI普及に向けた戦略としては、日本市場特有のニーズに対応するため、各地域の研究拠点を通じて日本語の精度向上など、言語の完結性を追求する努力を続けていくという。
他社AIとの差別化については、「ハイブリッドAI」と「オープネス(Openness)」を挙げた。自社のAI技術だけでなく、パートナー企業のAIも活用し、オンデバイスAIとクラウドAIを組み合わせることで、最も有用なAI体験を提供する「ハイブリッドAI」のアプローチを取っている。今後もさまざまなパートナーと協力しながら最適なAI体験を提供していく方針とした。
AIスマートフォンの業績への貢献については、「フラッグシップモデル(Sシリーズ、折りたたみ)が市場シェアを拡大している要因の1つにAIがあると認識している」という。特定のデバイスに偏るのではなく、エコシステム全体がともに成長していくのが理想的な姿であり、Galaxy AIを通じて多様な機器とともに成長していくことを目指していると締めくくった。