最近、新たなディスプレーのひとつとして注目されているのが「スマートグラス」である。どんなに狭い場所でも目の前に大画面を表示できること、携帯性が高いという点がモバイルディスプレーに対する大きなアドバンテージだ。
今回レビューする「ASUS AirVision M1」は、ASUS初のスマートグラスだ。「ROG Ally」や、Windows搭載ノートPC、Windows搭載デスクトップPCに対応しており、「AirVisionアプリ」をインストールすれば、マルチスクリーン設定や瞳孔間距離などきめ細かなセッティングが可能となる。
ASUSから試用機を借りたので、使い勝手にスポットを当ててレビューしていこう。
「ASUS AirVision M1」を使うには
Windowsマシンが必須だ
「ASUS AirVision M1」はUSB Type-C経由で映像入力可能なスマートグラスだ。設定アプリ「AirVisionアプリ」はWindows専用なので、「ROG Ally」、Windows搭載ノートPC、Windows搭載デスクトップPC対応と謳われている。
スマートフォンやゲーム機などほかのデバイスでも映像出力可能だが、ファームウェアアップデートには「AirVisionアプリ」が必要なので、Windowsマシンが最低1台は必須ということになる。
ディスプレーパネルはマイクロOLED(0.49インチ)。解像度は1080p、アスペクト比は16:9、リフレッシュレートは72Hz、輝度は1100ニト(標準値)、色域はDCI-P3 95%、視野角は38度となっている。
本体サイズは171×53×170mm、重量は87g。3DoFヘッドトラッキングに対応しており、スマートグラス内に表示した映像を空間内で固定可能。オーディオ機能としては1Wスピーカー×2、マイク×2(ノイズキャンセリング対応)を装備している。
付属品は充実している。
専用キャリングバッグ×1
USB Type-Cケーブル×1
インサートレンズフレーム×1
ノーズパッド×2(サイズ違い)
ライトシェード×1
クリーニングクロス×1
クイックスタートガイド×1
に、保証書が同梱される。度付きレンズを装着可能なインサートレンズフレームが同梱されているので、視力に合わせて最適化できるわけだ。
専用の「AirVisionアプリ」
仮想視聴距離や瞳孔間距離も調整できる
「ASUS AirVision M1」には専用アプリ「AirVisionアプリ」が用意されており、初めてPCに接続した際に自動的にアプリのダウンロードとインストールが開始される。同時に本体のファームウェア・アップデートも実施されるので、初回セットアップはネット接続環境が必要だ。
「AirVisionアプリ」には、「デバイス情報」、「仮想ディスプレイ設定」、「表示設定」、「距離設定」、「その他」、「アプリを閉じる」のアイコンが用意されており、素早く各種設定にアクセスできる。
左側面のタッチパッドでもある程度の設定変更は可能だが、初回セットアップは大きな画面で調整できる「AirVisionアプリ」のほうがオススメだ。
飛行機や電車のなかでも
マルチディスプレーで作業できるのは非常に快適
「ASUS AirVision M1」を実際に使ってみた感想だが、装着感は良好。筆者は頭囲64cmと頭がかなり大きめだが、ツルが大きく開くおかげで窮屈さは感じなかった。
本体重量が実測88.58gなのでサングラス感覚とまでは言えないが、長時間装着してもストレスは感じない。
「ASUS AirVision M1」は3DoFヘッドトラッキングに対応しており、マルチスクリーン表示が可能だ。たとえば「仮想ディスプレイ設定」で「仕事モード」を選択すれば、メイン画面の両側に仮想ディスプレーを配置し、左右の画面で資料やウェブページを見ながら、真ん中の画面で書類作成などを行なえる。物理的なモバイルディスプレーと違い、飛行機や電車のなかでもマルチディスプレー環境で作業できるのは非常に快適だ。
ただ実際に使ってみて、いくつか気になった点がある。まずひとつは視野角(画角)が38度と狭いこと。最新のスマートグラスのなかには視野角が50度の製品もある。「ASUS AirVision M1」では一度に見渡せる範囲が狭いわけだ。
また3DoFヘッドトラッキング有効時に、鼓動や呼吸により細かな揺れが発生する点も気になった。3DoF対応最新スマートグラスのなかには、装着者の細かな揺れを補正する製品が登場してきている。この揺れ問題については、ソフトウェアアップデートで改善してほしいところだ。
一方、タッチパッドのジェスチャーは操作しやすいと感じた。大きなタッチパッドには、手探りで小さなボタンを探すストレスはない。1本指、2本指によるタップ、ダブルタップ、長押しに各種機能を割り当てられるので、さまざまな機能に素早くアクセスできる。このあたりの作り込みはASUSならではだ。
Windows PCに最適化されたスマートグラス
「ROG Ally」にもってこい
「ASUS AirVision M1」は、携帯性に優れ、場所を選ばずに目の前に大画面を表示できるスマートグラスだ。軽量設計と快適な装着感に加え、マルチスクリーン表示と3DoFヘッドトラッキングにより、移動中でも生産性の高い作業環境を実現する。
直感的なタッチパッド操作や、度付きレンズ対応など、使いやすさも追求されている。他OSのパソコンや、スマートフォン、タブレットなどではフル機能を活用できないが、Windows PCや「ROG Ally」などのユーザーには、魅力的なスマートグラスである。