犯罪者の巧妙化で若者もオレオレ詐欺の被害に! 警視庁と携帯4社が特殊詐欺根絶で協力

文●佐野正弘 編集●ASCII

2025年05月24日 10時00分

特殊詐欺を許さない! 携帯4社と警視庁がタッグ

 ドコモ、KDDI(au)、ソフトバンク、楽天モバイルの携帯4社は23日、警視庁で「ストップ!詐欺」共同宣言を実施。現在もなお拡大を続けている特殊詐欺を、警視庁と4社が連携して根絶に向けた取り組みを進めることを打ち出した。

携帯4社は5月23日、警視庁で特殊詐欺根絶に向けた「ストップ!詐欺」共同宣言を実施。会場には警視庁のマスコットキャラクター「ピーポくん」も登場した

共同宣言の中身はこちら。この宣言を基に各社がさまざまな取り組みを進めていくとのこと

 同日に実施された記者会見に登壇した警視庁副総監の鎌田徹郎氏は、特殊詐欺の被害状況について説明。鎌田氏によると、東京都内における2024年の特殊詐欺の被害状況は、その認知件数、被害額ともに2023年を大きく上回っており「非常に厳しい状況」にあると鎌田氏は話す。

警視庁副総監の鎌田氏は、特殊詐欺が大幅に増え非常に厳しい状況にあるとし、その被害が幅広い層に広がっていると話す

 実際、2024年の東京都内の特殊詐欺被害件数は3494件、被害総額はおよそ153億1000万と、これまでの最高額であった2018年の88億7000万円を大きく更新し、過去最悪の金額を記録したという。2025年はさらにその状況が加速しており、2025年4月時点ですでに被害額が100億を超えるなど、依然深刻な状況にあるようだ。

オレオレ詐欺に騙される若者が増えている

 中でもここ最近目立って増えているのが、「警察官を装ったオレオレ詐欺」だと鎌田氏は説明する。その主な手口は被害者の電話番号に電話をかけ、警察を名乗って被害者をだまし、トークアプリなどに誘導して詐欺を働くというものだ。

 従来のオレオレ詐欺は固定電話を対象にしたものが多く、その被害者も高齢者に偏っていた。だが警察官を装った詐欺行為は携帯電話を対象としていることから、その被害もより若い世代へと広がっているそうで、スマートフォンに詳しいとされる20代、そして10代でも詐欺被害に遭うケースが出てきているようだ。

 一方で、そうした詐欺には国際電話番号、あるいは番号不明の電話番号からの発信が用いられることが多い。それだけに鎌田氏は「国際電話番号などからの携帯電話への着信対策が極めて急務と認識している」と説明し、今回の共同宣言によって携帯4社と協力し、被害を防ぐための対策を進める方針を示した。

 そのためには、具体的にどのような対策が必要なのか。携帯4社の代表が参加したパネルディスカッションでは、各社の詐欺対策に向けて進めている取り組みについて説明された。

詐欺対策の機能がスマホにはある
新しい手口が出たら4社で連携して対策

 楽天モバイルの取締役執行役員 COOの谷山信道氏は、フィッシング詐欺のメールやSMSを自動検知して受信拒否するサービスを無償で提供しいているほか、迷惑電話と思われる番号から着信があった場合は着信拒否するサービスなども提供していると説明。ただ、現在も新しい詐欺の手口が次々登場していることから、「4キャリア合同で連携し、お客様を守れるよう進めていければ」と話している。

楽天モバイルの谷山氏は、迷惑電話やフィッシング詐欺対策サービスを提供していると説明する一方、新たな詐欺に向けた対策の必要性も示した

 またソフトバンクの執行役員兼CCO 法務・コーポレートガバナンス部門 本部長である佐藤英幸氏は、詐欺対策に役立つスマートフォンの機能について説明。iPhoneやAndroidスマートフォンの一部では、登録した電話番号や、非通知の電話番号からの着信時に着信音やバイブレーターを鳴らさない機能が備わっているほか、一部のAndroidスマートフォンは、未登録の電話番号からの着信時に相手をけん制するガイダンスを出して自動録音する機能や、詐欺に関するワードが出てくると画面上に警告を出す機能、さらにはAIが応答して名前や要件を事前に聞いてくれる機能などを備えているという。

 それだけに佐藤氏は、今回の共同宣言によって携帯4社が、そうした詐欺対策の進んだスマートフォンの機能を店頭やウェブなどで顧客にわかりやすく説明することで、利用を浸透させ詐欺撲滅に取り組みたいと意欲を示している。

ソフトバンクの佐藤氏は、スマートフォン自体に詐欺対策に役立つさまざまな機能があると話す

 一方でドコモの代表取締役副社長である小林啓太氏は、詐欺行為そのものを未然に防ぐための携帯各社の取り組みについて、「本人確認の徹底、ここに尽きると思っている」と説明。犯罪者に携帯電話を不正契約させないための取り組みとして、マイナンバーカードによる公的個人認証の導入、1人が契約できる回線数の制限、「おかしい」と感じた契約のバックグラウンドを確認することなどに取り組んでいるほか、携帯各社と警察機関とで不審な契約や不正の手口の共有などをしながら、本人確認の徹底をより進めていきたいとした。

ドコモの小林氏は、携帯電話を不正利用されないよう、さまざまな手段で本人確認の徹底に力を注ぐとしている

 そしてKDDIのシニアディレクターコーポレート統括本部 総本部長の中里靖夫氏は、詐欺撲滅に向けた携帯各社の広報啓発活動について説明。中里氏はここまで各社が説明してきた機能やサービスも、個人が実際に設定などをして利用しなければ効果を発揮しないことから、「(携帯電話利用者の)1人1人が詐欺電話の手口を知り、対策を講じることが重要になっている」と話す。

 そのための取り組みとして、年代別のスマートフォン教室を実施して具体的な詐欺の事例などを説明して注意喚起したり、関係省庁や地方公共団体と連携して詐欺防止対策の重要性と、それを実現するための具体的な対策を伝えたりする活動を積極的に進めていきたいとしている。

KDDIの中里氏は、スマートフォンの詐欺対策機能やサービスを利用してもらうためにも、広報啓発が重要としている

 最近では電話による詐欺だけでなく、メールなどを通じたフィッシング詐欺による被害も大幅に増えており、幅広い年齢層の人達が被害に遭うことで社会問題となっている。それだけに一層、個々人が詐欺対策の意識を高め、さまざまな対策に取り組むことが重要となっているだけに、警視庁と4社の協力によって詐欺対策に取り組む人がより増えることが期待される。

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