「instax WIDE Evo」は富士フイルムが発売したハイブリッドインスタントカメラだ。インスタントカメラとしてだけでなく、デジタルカメラとしても楽しめ、スマートフォンと連携するとスマホプリンターにもなるという三刀流の「ハイブリッド」カメラだ。
「instax mini Evo」(2021年発売)はミニフォーマットフィルムを採用したモデルだったが、「instax WIDE Evo」はワイドフォーマットに対応したモデル。迫力ある大画面が楽しめるのが魅力の一つとなっている。今回、富士フイルムから実機を借りることができたので、使用感を中心に紹介しよう。
フィルムカメラのような操作感で
多彩なエフェクトが楽しめる
撮像素子は1/3型CMOS原色フィルターで、35mmフィルム換算で16mm相当F2.4の単焦点レンズを搭載する。測光方式はTTL256分割測光・マルチ測光、AFはシングルAF・顔認識AF(ON/OFF可)で、撮影可能距離は10cm~∞、シャッタースピード(1/4秒~1/8000秒)、撮影感度(ISO100~1600)は自動切替となっている。
ボディカラーは黒を基調にしたスタイリッシュなデザイン。メタリック素材を配するなど高級感のある仕上がりになっているのも好印象だ。30代男性がメインターゲットはというのもうなずける。
サイズはinstax WIDEフィルムの大きさもあって、手のひらよりも大きいスクエアボディになっている。やや大きいなと感じるサイズ感だが、実際にはinstax「チェキ」のアナログカメラよりもコンパクトにおさめられていて、奥行き62.8mmというのもホールドしやすい厚さだ。

中央のカバーの下にはmicroSDカードスロット、USB Type-Cコネクター、リセットボタンが設けられている。バッテリーは内蔵タイプでパワーデリバリーに対応。給電しながらの撮影やプリントができる。
「instax WIDE Evo」の最大の魅力は多彩なエフェクト機能だ。エフェクトの選択は、右側面の「フィルムダイヤル」と左側面の「レンズダイヤル」を組み合わせて行う。それぞれ10種類ずつのエフェクトが搭載されているので、組み合わせて100通りの撮影表現を選択できる。
さらにレンズ鏡筒部のダイヤルがエフェクトの強弱を調整できる「度合い調整ダイヤル」になっている。「度合い調整」機能はinstaxシリーズで初めて搭載された機能で、光の入り方や色のグラデーションなどを100段階で微調整することができる。10種類のフィルムエフェクト×10種類のレンズエフェクト×100段階の度合い調整、これだけで1万通りの組み合わせになる。
さらにボディ上部には6種類の「フィルムスタイル」を切り替えることができる「フィルムスタイルボタン」、レンズ右下には標準(通常モード)と広角を切り替える「広角スイッチ」がある。
標準モードでの撮影時には、背面のセレクトボタンを上下させることでズーミングが可能だ。このほかストロボのON/OFFや露出補正などの設定も可能。記録できるのは JPEG画像のみで、エフェクトによっては書き込みに多少時間がかかるように感じた。

シャッターレバー。すぐ右には「セルフタイマーランプ/充電ランプ」がある。レンズ鏡筒部を回すとエフェクトの「度合い調整」ができる。レンズ右脇にある銀色のミラーが「セルフィーミラー」。その上にフラッシュがある。
ファインダーは搭載されていないため、エフェクトやフレーミングの確認は背面の液晶モニターで行う。液晶モニターは固定式になっているため、自撮りをする際にはレンズ右上の「セルフィーミラー」でフレーミングを確認できるが、エフェクトの効果までは確認することができない。
ボディ正面、レンズ左上にあるレバーを押し下げるとシャッタが切れる。レバー脇には「セルフタイマーランプを兼ねた「充電ランプ」がある。「フィルムダイヤル」と「レンズダイヤル」を回してエフェクトを選択して、「度合い調整」で効果を調整。さらに「フィルムスタイル」を切り替えることもできるので、撮影前にすることは少なくない。
シーンによってはシャッターチャンスを逃しかねないが、この不便さこそが「instax WIDE Evo」の楽しみ方の一つと言えるものなのかもしれない。次項で詳しく説明するが、エフェクトは撮影時にしか設定できない(プリント時に変更ができない)ので、気になるシーンはエフェクトを変えて何カットか撮っておくのがオススメだ。好きなエフェクトの組み合わせをファンクションボタンで登録しておくこともできる。
選んで回しての操作の後に
じんわり絵が出てくるインスタントプリント
撮影したデータは内蔵メモリー(約45枚)かmicro SDカードに保存されるので、撮影したその場でプリントする必要はない。あとでじっくり選んで、気に入ったものだけをプリントすればいい。これがハイブリッドカメラのいいところだ。
背面の「PLAYボタン」で画像再生モードに切り替え、左端の「選択ボタン」を左右に動かして画像を選択していく。右端の「MENU/OKボタン」を押すか、「プリントクランク」をクルクル回すと、表示されている画像が上に消え、プリントが上部に排出されるようになっている。ジーというモーター音とともにフィルムがゆっくりと出てくるアナログ感はなんとも言えない。
プリント時には「ダイレクトメニュー」で画像の回転やトリミング、明るさ調整(明るくはできるが暗くはできない)などの調整ができる。プリント画質は従来画質の「instax-Naturalモード」と「instax-Richモード」から選択できるが、エフェクトによっては差が分かりにくいものもある。余裕があればプリントして比べてみるといいだろう。ちなみに初期設定は「instax-Richモード」だ。
プリントの排出自体は電動で行われるので、実際にフィルムを出す操作をしているわけではない。もう少し引っ掛かりがあった方がアナログ感があっていいように感じた。プリントは真っ白な状態で排出されるが、約16秒ほどでじんわりと映像が現れてくる。濃度感や解像感はインスタントフィルムらしいソフトな印象で、モニターで見るよりもライトな描写になっている。
気をつけないといけないのは、10万通り以上あるエフェクトが撮影時にしか使えないことだ。エフェクトの効果の強弱はもちろん、「フィルムスタイル」の変更もできない。プリント時にできるのはプリントの調整のみだ。
あとでやればいいやというわけにいかないところが、デジタルカメラとは大きく違う点だ。撮影の時点で仕上がりを考えて、全てを決めなくてはいけない操作感こそが、このカメラの楽しみ方でもあり、使い方のポイントと言えるだろう。
スマートフォンと連携すれば
スマホプリンターにもなる
「instax WIDE Evo」とスマートフォン専用アプリ「instax WIDE Evo」を使ってBluetooth接続すると、「instax WIDE Evo」のダイレクトプリント機能でスマートフォンで撮影した画像をプリントしたり、リモート撮影をすることができる。
「instax Pal」や「instax mini Evo」など、機種によって対応するアプリが違うので、ダウンロードする際には注意が必要だ。プリントした画像は「チェキプリント画像」としてスマートフォンに保存が可能。背景の色や画像を編集して、SNSなどで共有できる。
さらに専用アプリには、世界中のユーザーが投稿したチェキプリント画像とエフェクトを閲覧できる「Discover Feed」機能が搭載されている。気に入ったエフェクトの組み合わせは、カメラ本体に登録することで簡単に再現して撮影することができるほか、スマートフォンで撮影した写真のプリントにも対応させることができる。

「Discover Feed」は、世界中のユーザーが投稿したチェキプリント画像とエフェクトを閲覧できる機能。気に入ったエフェクトの組み合わせは、カメラ本体に登録することができる。「instax WIDE Evo」の「お気に入り」は5件まで登録が可能だ。
「instax WIDE Evo」は多彩な表現が楽しめるハイブリッドインスタントカメラだ。なんとなく撮影したり、使ってみて感じたのは、とりあえず撮っておこうというのでは、その機能を十分に使いこなすことはできそうにない。
フィルムカメラで撮る時のように、撮影時に仕上がりのイメージを持って撮る必要がありそうだ。その緊張感を心地いいと思えたら、きっといい写真が撮れるに違いない。