ドコモが住信SBIネット銀行を連結子会社化、デジタル金融サービスの革新目指す

文●スピーディー末岡 編集●ASCII

2025年05月29日 21時20分

金融と通信の連携強化
ドコモと住信SBIネット銀行の協業が加速

 日本電信電話(NTT)とSBIホールディングスは、両グループのアセットを活用した幅広い領域での協業関係構築を目指し、資本業務提携契約の締結を発表した。これに伴い、NTTの子会社であるNTTドコモ(ドコモ)は、住信SBIネット銀行の普通株式に対する公開買付け(TOB)を実施し、同行を連結子会社とすることを目指す。これは、住信SBIネット銀行、三井住友信託銀行株式会社、SBIホールディングスとの基本契約及び業務提携契約と合わせて決議されたもの。

 会見にはNTTドコモ 代表取締役社長 前田義晃氏、NTT 代表取締役社長 島田 明氏、SBIホールディングス 代表取締役会長兼社長 北尾吉孝氏、住信SBIネット銀行 代表取締役社長 円山法昭氏の4人が登壇した。

NTTドコモ 代表取締役社長 前田義晃氏

NTT 代表取締役社長 島田 明氏

SBIホールディングス 代表取締役会長兼社長 北尾吉孝氏

住信SBIネット銀行 代表取締役社長 円山法昭氏

 資本提携として、NTTはSBIホールディングスが実施する第三者割当増資を引き受け、約1100億円を出資する予定だ。これは両グループの資本業務提携の紐帯となることを目的としている。SBIホールディングスの北尾会長は「この資金を主にM&A案件と借入金の返済に充当する見込みである」と述べた。

 ドコモによる住信SBIネット銀行に対するTOBは、5月30日に開始され、7月10日まで実施される。買付価格は普通株式1株あたり4900円で、応募株式の全部が買付けされる。住信SBIネット銀行の取締役会は本TOBに賛同し、株主に応募を推奨することを決議しており、提示価格は株主が十分に納得できるものと判断されたためだ。

 TOB成立後、一連のプロセスを経て、住信SBIネット銀行の株式は、持株比率ではドコモが65.81%、三井住友信託銀行が34.19%を保有し、議決権比率ではドコモと三井住友信託銀行が50%ずつを保有することになる。住信SBIネット銀行は実質支配力基準に基づき、2025年第3四半期頃にドコモの連結子会社になるとのこと。

 ドコモは、住信SBIネット銀行をグループに迎えることで、銀行業に本格参入する。これにより、以下4点を実現することを目指す。

1、銀行口座と決済・証券等の金融サービスを一体提供し、スマホ1つで完結するより便利でオトクな金融サービスの提供。

2、銀行データと他金融サービスデータを組み合わせたデータの活用による、顧客理解を通じた最適なサービス提案。

3、銀行機能を取り込むことによる金融サービス全体の顧客数増大、顧客との繋がり深化を伴う顧客基盤の強化。

4、ドコモの販売チャネルを通じた口座・預金獲得強化、グループとしての成長加速を目指す金融事業の成長加速。住信SBIネット銀行を、経営基盤の安定性や先進的なAI・デジタル技術を持つ「最良のパートナー」「ベストな選択」であるとした。

 また、住信SBIネット銀行との業務提携により、以下のシナジーが期待される。

1、ドコモの顧客基盤や販売網を活用した口座数伸長、メインバンク化促進。

2、ドコモのサービス・販売網を活用したモーゲージ(mortgage、住宅ローン)プラットフォーム事業の競争力強化。

3、ドコモグループの法人ネットワークを活用したBaaS事業のプラットフォーム、及びケイパビリティ拡大。住信SBIネット銀行側も、新規顧客獲得の7割がBaaS経由であり、ドコモの法人ネットワークに大きな期待を寄せた。

4、テクノロジーを活用した次世代金融サービスの協業を検討。住信SBIネット銀行は、テクノロジー投資やBaaS戦略を成長ドライバーとしてきたが、メガバンクのデジタルバンキング参入が進む中、次の手が必要なタイミングであり、ドコモの顧客基盤や補完機能を得ることで、さらなる成長が実現できると確信していると述べた。

好評な住信SBIネット銀行のUIは参考にしつつ
ドコモ側の使い勝手を改善していく

 両グループは、既存の提携関係も維持・強化する方針だ。住信SBIネット銀行とSBI証券の提携関係を維持・強化する。また、ドコモがすでに提携しているマネックス証券についても、顧客中心主義に基づき、公平かつ公正に扱い、顧客の利便性を損なわないようにすることが双方で合意されているという。どちらの証券会社を使うかはお客様が決めることであり、双方が関与せずお客様が判断できる状況を作るとした。

 金融領域を中核としつつ、両グループは資産運用、セキュリティトークン、保険分野での新サービス、NTTデータによるSBIグループの金融システム開発・保守連携、そして通信と放送の融合を含むネオメディア生態系といった幅広い領域での連携も検討する。SBIホールディングスの北尾会長は、地域金融機関との「第四のメガバンク構想」についても、住信SBIネット銀行の連結子会社化がマイナス影響を与えることはなく、NTTグループも地域を重要顧客と考える点で同じ考え方であると述べた。

 ドコモはdアカウントの使い勝手改善を進めており、住信SBIネット銀行のUIなどを参考に、連携時のボトルネックとならないよう取り組むとしている。

 今回の提携はドコモが住信SBIネット銀行を傘下に収めることで、通信と金融の融合がさら進みそうだ。auのじぶん銀行、ソフトバンクのPayPay銀行と並び、携帯キャリアの経済圏争いがより一層激しくなるだろう。

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