6月4~6日まで幕張メッセで開催中のドローン専門展示会「Japan Drone 2025」には、さまざまな企業が出展し、最新の技術や活用事例を紹介。ドローン市場が盛り上がっていることが見てとれた。本レポートでは、通信キャリアの立場を活かしたモバイル通信可能なドローンを展開するソフトバンクとドコモビジネスの展示内容を中心に紹介する。
ドローン機体選定から導入までがワンストップ!
ソフトバンクのドローンサービス「SoraBase」
ソフトバンクブースでは、同社が日本全国で取り組んできたドローンの活用事例や、最新ドローンの展示、デモンストレーションなどを実施した。展示ブースでは、ソフトバンクのドローンサービス総称である「SoraBase」が紹介された。SoraBaseは、顧客のドローン機体選定から導入までをワンストップで提供するサービスで、講習や警備といった分野のソリューションも含まれる。
同社は全国各地でドローンの実証実験に取り組んでおり、福島県や和歌山などでの取り組みを紹介し、ビジネスとしての実現可能性を検証している状況をパネルで伝えていた。
特に注目だったのが、展示ブースからフィンランドにあるドローンをリアルタイムで遠隔操縦するデモンストレーション。これは約1.2万km離れた場所にあるドローンを操作するもので、発災時の現場確認や巡視などを操縦者が遠隔地からスムーズに行なうことを想定した内容だった。
展示機体としては、点検、物流、測量など、あらゆる業務に特化したドローンが紹介された。SIMを挿入でき、モバイル回線とバッテリーが続く限り飛び続けられるドローンや、バッテリー駆動に加えガソリンも使用する国産ハイブリッドドローンも展示され、積載物なしで約240分の長時間飛行が可能であること、3kgまでの積載能力を持つことなどが説明された。3kg積載時でも2時間程度飛行できるとのこと。
また、災害時の避難誘導を想定した、スピーカー(拡声器)付きのドローンや、風力点検用のハードウェアとソフトウェアを組み合わせたソリューションも展示されていた。
ソリューションとしては、法人向けの高精度測位サービス「ichimill」や、ドローンで撮影した映像から3Dデジタルツインを作成する「TRANCITY」などが紹介された。レスキューソリューションとして、スマートグラスとドローンを連携させた「3rd-EYE(サードアイ)」は志摩市に導入され、消防や警察が初動確認や駆け付け用としてドローンを導入している事例などが挙げられた。
モバイル通信に関しては、上空でのモバイルネットワーク利用を可能にする「LTE上空利用プラン」に言及し、通信事業者がドローン分野に参入してきている状況(KDDI、ドコモも参入)に触れた。Wi-Fi規格での飛行限界がある一方、モバイル通信を積載したドローンは基地局がある範囲ならどこまでも飛行できる利点があるとされ、上空での通信は今後ますます必要になるだろう。
ソフトバンクが展示しているドローンは売り物だが、サイトなどで一般販売する形ではなく、案件ごとの要望に応じて必要な機体を選定し、販売というよりはサービスとセットで提供するケースが多いとのこと。展示されている機体には非常に高価(1000~2000万円程度)なものもあるが、これがヘリコプターだと購入に2億円、メンテナンスに1000万円、1回飛ばすのに100万円程度かかるらしいので、ヘリの代替となりうる価格帯と言えそうだ。
ドローン「Skydio」を用いたソリューションがメイン
ドコモビジネス「docomo sky」
ドコモは“ドコモビジネス”としてブースを構えていた。主な展示内容は、Skydio社の最新ドローンポート「Skydio Dock for X10」や、対応機種である「Skydio X10」など。
開閉のギミックが男の子に大受けしそうなドローンポート、Skydio Dock for X10。これを活用した国内初のレベル3.5飛行事例(特定の場所で補助者なしで目視外飛行をする)が紹介された。これは、福島県昭和村でドローンポートを活用し、遠隔監視下で完全無人のレベル3.5飛行に成功した事例である。また、Skydio X10を用いた点検・巡回、災害対策など、さまざま分野での最新活用事例もあわせて紹介された。ブースでは、Skydio X10のマニュアル飛行デモンストレーションも実施されていた。
また、ドコモと連携して提供する「LTE上空利用プラン」についても詳しい説明があった。このプランは、上空のモバイルネットワークを利用できるサービスで、2025年4月15日より料金タイプや利用可能な機体が拡大されたとのことである。料金プランも決まっており、定額無制限で月額4万9800円、従量制課金で月1万2500円からの2プランが用意されている。
ソフトバンク、ドコモという両社の展示からは、通信事業者がドローンを単なる通信手段として捉えるだけでなく、機体、プラットフォーム、ソリューション、サービス提供、さらには上空における通信環境整備までを含めた総合的な事業として展開を加速させている様子がうかがえた。なお、KDDIは自社でドローンイベントを開催したので、Japan Drone 2025の参加は見送ったようだ。