5Gスマートフォンのチップセット「Dimensity」シリーズで知られているMediaTekは、「COMPUTEX TAIPEI 2025」のメイン展示エリアと言えるホール1の4階に大きなブースを構え存在感をアピールした。
AI性能を高めたスマホ用チップ「Dimensity 9400」
スマートフォンのチップセット市場でクアルコムを抜き、シェア1位を独走するMediaTek。近年はエントリーやミドルレンジ向けだけではなく、AI機能を強化したハイエンドチップセット市場でも存在感を高めている。
同社のハイエンドチップセット「Dimensity 9400」シリーズはDimensity 9400、その上位モデル9400+に加え、COMPUTEX直前に性能を若干落とし価格を抑えた9400eも発表している。ブースではこのDimensity 9400のAI機能をデモしていた。
AIによる写真、動画の撮影支援デモでは、100倍クラスの超高倍率デジタル静止画撮影を実際に体験できる。生成AIを活用し望遠写真にAIが学習する補正機能を加え、ズーム時のブロックノイズを補正し、極めてシャープな画像を実現する。
また、AIスナップショットは鳥の羽の羽ばたきなど高速に動くオブジェクトがあってもブレなく撮影できる。さらに、動画撮影時に背景ノイズをAIが消去し、主音声だけをクリアに記録できるAIオーディオフォーカスもデモンストレーションされていた。
世界は6Gに向かっている! 6G関連の展示も
次世代通信関連の展示では、NVIDIAと共同開発した「6GハイブリッドAIコンピューティング」のコンセプトを披露した。「Next-Generation Agentic AI Hybrid Processing on 6G」と題し、6G時代におけるエッジクラウドの新しい形を提案。デバイスクラウドとRANクラウドを統合することで、端末から基地局、クラウドまでをシームレスにつなぎ、AI処理やデータ処理を分散・最適化できる仕組みを実演した。
なお、この技術は低遅延、キャリアグレードのプライバシーと個人データ管理、そして動的な計算リソースの割り当てを実現できるという。
昨今注目を集めている衛星通信関連では、世界初の商用LEO(低軌道)衛星を用いた5G NR-NTN(非地上系ネットワーク)接続の実証デモを行なった。「MWC Barcelona 2025」で展示されたものと同じものであり、MediaTekの5G NR-NTN対応テストチップを使い、NTNのエミュレータから衛星電波を飛ばしスマートフォンの画面でビデオ通話を行うデモが行なわれた。
テストにはLEO衛星を運用するEutelsat/OneWeb、OneWeb衛星の設計・製造を担当するAirbusが加わり、シャープはKuバンド位相アレイ地上局用フラットパネルアンテナを開発。地上と衛星ネットワークのシームレスな連携を目指す。
新プロセッサ「Kompanio Ultra 910」搭載Chromebook
Chromebook Plus向けのハイエンドチップセット「Kompanio Ultra 910」を搭載したモデルも参考出展された。ODMメーカーCOMPALが開発・製造したモデルで、詳細スペックの説明はなく、同チップセットのデモ用に展示されていた。製品化時期なども未定だ。
Kompanio Ultra 910はTSMCの第2世代3nmプロセスを採用、Cortex-X925を含むオールビッグコア構成、最大50TOPSのAI性能とChromebookの性能を大きく引き上げることができる。Wi-Fi 7、Bluetooth 6.0にも対応。高AI処理能力と省電力性を両立している。
NVIDIAとはAIで協業している
NVIDIAとはAI向けスーパーコンピューティングプラットフォームで協業しており、「NVIDIA DGX Spark」と「GB10 Grace Blackwell Superchip」も展示された。GB10 Grace Blackwell Superchipは最大1000TOPSを実現、最大2億パラメータの大規模言語モデルも単体で動作する。最大4TBのNV MeストレージやWi-Fi 7など豊富なI/Oに対応。MediaTekのArmベースCPU設計などで電力効率とパフォーマンスを高めている。
NVIDIA DGX SparkはGB10 Grace Blackwell Superchipを搭載し、150×150×50.5mm、重量1.2kgと小型設計ながら、大規模AI開発が可能なスーパーコンピューター。AIの実運用や開発用途に向いている。