アップルが2025年の世界開発者会議「WWDC」で「iOS 26」を発表しました。日本は世界的に見てもiPhoneのシェアが際立って高いユニークな市場であると言われています。秋に正式リリースを迎える新しいiOS 26が、iPhoneユーザーのスマホライフにどんなインパクトをもたらすのでしょうか。
革新的でありながら
ユーザーに迷わせない一貫したデザイン
今回のWWDCでは2013年にリリースされたiOS 7の「フラットデザイン」以来となる、大規模なソフトウェアのデザインアップデートが発表されました。コンセプトの名称は「Liquid Glass(リキッドガラス)」。透明色の表現を活かし、平面のディスプレイ空間に奥行きを意識させる、イマーシブエクスペリエンス時代の新デザインです。
詳細についてはWWDC特集のほかの記事でも語られているので、ここで繰り返し触れることはしません。筆者がWWDCの取材を通して得たリキッドガラスデザインの印象としては、現在のiOS 18から操作性やユーザー体験が大きく様変わりすることは、よい意味であまりなさそうです。
と言うのも、シニアの方にも広く使われているiPhoneが「デザインが変わって、使い方がわからなくなる」という心配がないように、従来のiOSとルックスや体験の一貫性を確保しているからです。OSをアップデートしたら「うちの祖父母が使い方がわからなくなったから、また教えに行かなくちゃ」ということにはならないと思います。
「カメラ」アプリのアップデートには要注意
反対に、ユーザーインターフェースが一新されるiOS 26の「カメラ」アプリは変化の幅がもう少し大きいような気がしています。ビデオと写真の切り替えが直感的にできるものの、それぞれの発展型である「シネマティック」や「ポートレート」のようなほかの撮影モードや、アスペクト比、タイマーなどの機能設定に入るためにスワイプ操作が伴います。
慣れてしまえば何てことはないはずですが、UIのルックスに少なからぬ変化があります。カメラアプリについてはiOS 26が正式リリースされる秋以降、筆者はiPhoneユーザーである母が暮らす実家に戻って一度はレクチャーすることになりそうです。
「写真」アプリには、従来の2D写真を3D写真に空間化する機能が楽しみです。Apple Vision Proによる空間写真・空間ビデオの没入体験が、iPhoneの画面上で擬似的に味わえる魅力的な機能だと思います。
新しいリキッドガラスデザインは、iOS以外の“26世代”のOSに広く採用されるものです。完全に透明なメニューバーや、半透過表示のメニュー画面をアプリの画面上にレイヤーを重ねて、デバイスのディスプレイエリアをより広く使いながら、たくさんの情報をユーザーに伝えるリキッドガラスデザインは、これからアップルが発売するデバイスのプロダクトデザインにも大きな影響を与えそうです。
完全にベゼルレスなiPhoneにiPad、あるいはMacが誕生する瞬間は思いのほか近いのかもしれません。
迷惑電話からユーザーを守る
iOS 26の「電話」と「メッセージ」
Apple Parkで行なわれたWWDCでは「電話アプリ」の新機能である、迷惑電話を阻止することを目的とした「通話スクリーニング」と、コールセンターなどに電話する時の待機時のストレスを緩和する「保留アシスト」が発表された瞬間、大きな歓声がわき起こりました。
通話スクリーニングはiOS 18から搭載する「ライブ留守番電話」の発展型です。電話をかけてきた相手が留守電に切り替わった後、名前と要件を吹き込んだ時に、初めて着信音を鳴らしてiPhoneユーザーに受話の選択を委ねるという機能です。同じように、iOS 26のメッセージアプリには不明な送信者からのメッセージをスクリーニングする機能が追加されます。
このごろ、筆者のところにも電話とメッセージの両方からiPhoneに不審な連絡が飛び込んでくることがあります。私自身は対処方法を心得ているつもりですが、やはり高齢になる筆者の母が近年迷惑電話の被害にあいました。秋以降、カメラアプリと一緒に、電話とメッセージアプリのスクリーニング機能については使い方をしっかり教えようと思います。
保留アシストは筆者自身も待ち望んでいた機能です。しばらく待機したあと、コールセンターなどのオペレーターが電話に出たらユーザーに知らせて、オペレーター側にも間もなく受話することを自動応答してくれます。iOS 26のリリースとともに日本でも利用できるようです。
Apple Intelligenceが
外国語によるコミュニケーションを支援
コミュニケーション系の新機能には、メッセージ/FaceTime/電話アプリでApple Intelligenceが外国語のリアルタイム通訳をこなす「ライブ翻訳」があります。この中からメッセージのライブ翻訳のみ、iOS 26のローンチ時に日本語対応になります。FaceTimeと電話アプリのライブ翻訳は音声による入出力もできる便利な機能です。日本語をサポートしたらぜひ試してみたいです。
ほかにもApple Intelligenceのビジュアルインテリジェンスが、iPhoneの画面キャプチャのイメージ検索やChatGPTによる詳細検索に対応を拡大します。Androidの「かこって検索」に近い機能ですが、iOS 26の場合は対象を囲うジェスチャー操作が不要な代わりに、画面をキャプチャするひと手間が入ります。
iOS 26では「CarPlay」に関する大きなアプデートも発表されていますが、こちらはまた詳細をWWDCの現場で取材したあとに別記事を紹介したいと思います。

筆者紹介――山本 敦
オーディオ・ビジュアル専門誌のWeb編集・記者職を経てフリーに。取材対象はITからオーディオ・ビジュアルまで、スマート・エレクトロニクスに精通する。ヘッドホン、イヤホンは毎年300機を超える新製品を体験する。国内外のスタートアップによる製品、サービスの取材、インタビューなども数多く手がける。