アップルは2025年の世界開発者会議(WWDC)で次期プラットフォーム(OS)に関連するいくつかの重要な発表をしました。筆者が最も注目したのは「iPadOS 26」です。macOSのように複数のウインドウを立ち上げてマルチタスキングが快適にできたり、「プレビュー」アプリで写真ファイルを簡易に編集したり。念願かなって「iPadがMacBookになる日」がやって来ます。
やっと実現! 快適なマルチウインドウ対応
一番大きな感動は、やはりiPadOSによるマルチタスキングが劇的に快適さを増す「新しいウインドウシステム」の登場です。当初、iPadは画面全体を使って1つのアプリを表示するフルスクリーンUIが基本でした。
2015年のiPad向けiOS 9から、画面を分割して2つのアプリを同時に表示する「Split View」と、別のアプリを小さいフローティングウインドウで表示する「Slide Over」を追加。2022年以降にはiPadOS 16から「ステージマネージャ」でマルチウインドウ管理がしやすくなりました。
iPadOS 26から、iPadの画面にアプリのウインドウを複数立ち上げて、自由にリサイズしたり、場所移動もできるようになります。OSの画面に表示するアプリアイコンを少なくしたり、レイアウト調整も自由にできることから、もう見た目にはmacOSの画面にそっくりです。
ウインドウを選んで動かしたり、リサイズ操作は画面タップとキーボード・マウスによるポインタ操作の両方からできます。MagicKey boardのタッチパッドを使う場合、ひとつのアプリの使用中に4本指または5本指で画面を左右にスワイプすると、アプリを切り替えるジェスチャー操作になります。アプリの使用中に画面の下端から上にスワイプするとOSのホーム表示に戻ります。
立ち上げたウインドウの左上端にポインタをホバーすると、macOSでおなじみの信号機のような色分けのウインドウコントローラーが表れます。赤いアイコンで閉じる、黄色が最小化、緑が最大化です。最小化したウインドウはアプリのアイコンをタップすると元の表示に戻ります。
ウインドウを画面全体に配置する際には、画面を1対1に2分割したり、3分割、4分割のタイル表示も選択できます。さらに、その上に別アプリのウインドウをSlide Overのように重ねて表示もできるようになることも、Macユーザー的にはかなりグッドです。
ファイルの「ドラッグ&ドロップ」操作も、たとえば写真アプリから写真を選んで「メール」に貼ることもできます。Adobe Photoshopなどアップルのサードパーティーによるアプリとの連携がどこまでできるのか楽しみです。
iPadのスクリーンのトップにポインタを運ぶと、アプリごとの機能を「メニューバー」に表示します。このあたりも、MacユーザーにはとてもうれしいiPadOSの大事な進化です。
新しいウインドウシステムに対応するのは、秋に正式リリースを予定する「iPadOS 26に対応するすべてのiPad」です。当然ながら、いまの入門機であるA16チップ搭載のiPadや、A17 Proチップを搭載するiPad miniも対象です。
アラフィフの筆者としては、やはりたくさんのウインドウを立ち上げるなら画面の大きなiPadを選びたいところですが、11インチiPad ProにMagic Keyboardを装着して「一番コンパクトなMacBook」のように使いこなせたら、かなりiPadライフが気持ちよくなりそうです。Wi-Fi+セルラーモデルなら「5Gに常時接続できるMacBookのようなiPad感覚」も満喫できます。
簡易な写真編集ができる
iPad初登場の「プレビュー」がイチオシ
iPadがMacBookのようになる、iPadOS 26の注目機能はほかにもたくさんあります。「ファイル」アプリも大胆にパワーアップします。フォルダの色分けや絵文字などを貼り付けてカスタマイズできる機能も楽しみですが、仕事のファイルなどをまとめて「Dockにフォルダを配置」できたり、フォルダの中のファイルを「アプリを指定して開く」使い方ができることもMacユーザーのツボにハマりました。Dockに置いたフォルダを開くと、中味が扇状に展開します。
macOSで人気のPDFビューア兼編集ツールである「プレビュー」アプリがiPadOSに発登場します。これがとても素晴らしい。画像やPDFファイルをプレビューアプリから開いたりできるのですが、特に画像は幅や高さ、解像度を簡易に調整して書き出したりもできるのが魅力。
筆者の場合、iPhoneで撮影した写真をiPad Proに同期して、プレビューで簡単に手直しして、原稿と一緒に付けて納品するまでの作業が、Macよりも機動力の高いiPadでできたら「働き方改革」が大きく前進しそうです。
もうひとつビデオ会議やポッドキャストコンテンツの収録などにも役に立ちそうな、iPadOS 26における「オーディオとビデオの処理能力の進化」にも注目しました。「オーディオ入力セレクタ」の機能により、iPadの内蔵マイクのほか、Bluetooth等で接続した複数のマイクデバイスがアプリごとに指定して使えるようになります。
iPadOSのコントロールセンターを引き出すとマイクを選択するメニューが表れ、iPadの内蔵マイクやペアリングしたAirPods Proのマイクなどが選べます。AirPods Proのソフトウェアアップデートとして、AirPods 2とAirPods 4シリーズは離れた場所からAirPodsのステムのリモコンを長押しすると、カメラアプリによるビデオ撮影の開始・停止のリモート操作ができるようになります。
周囲の環境ノイズからマイクを使う話者の「声を分離」して、はっきりクリアに収録する機能も使えるので、AirPods Proがあればスタジオ品質のボーカル録音も可能です。
新しいiPadOS 26以降からiPadの操作性がMacBookライクになり、もともとMacよりも優れていたポータビリティーを活かして仕事が劇的にはかどりそうです。7月に予定するPublic Betaのローンチが今から待ち遠しくてたまりません。

筆者紹介――山本 敦
オーディオ・ビジュアル専門誌のWeb編集・記者職を経てフリーに。取材対象はITからオーディオ・ビジュアルまで、スマート・エレクトロニクスに精通する。ヘッドホン、イヤホンは毎年300機を超える新製品を体験する。国内外のスタートアップによる製品、サービスの取材、インタビューなども数多く手がける。