クルマで聴く空間オーディオリスニングもオススメ
今回デモを体験したBMW X3では、ビルトインされた車載オーディオシステムによる空間オーディオ再生が楽しめます。Apple Musicには音楽ジャンルを問わず、ドルビーアトモスによる空間オーディオ作品が勢いよく増えています。四方を囲まれる車内では、自宅のオープンなリビングルームよりも空間オーディオのサウンドがより力強く、臨場感豊かに感じられるかもしれません。
BMW X3の車載オーディオシステムでは、たとえば低音感がむやみに強調されているような「バランスの違和感」がなく、自然なサウンドにふんわりと包まれるような心地よさを味わいました。ディティールまで情報量が豊富です。
今回は車を停めた状態でリスニングしたので、走行中に聴くとロードノイズや車外の環境騒音の影響を受けてまたインプレッションも変わると思いますが、まずは比較的静かな環境で「自然なリスニング感」が得られる車載オーディオシステムとApple Musicの空間オーディオの相性が良いことはとても大事だと思います。
なお、自動車で楽しむ場合はApple Musicのドルビーアトモスによる空間オーディオに対応する車種が決まっています。BMWの場合は今夏に発売を予定する新モデルが対応を予定しており、既存のモデルがこれからOTA（無線アップデート）で空間オーディオ対応になる計画もあるそうです。
細部まで作り込まれたラグジュアリーなCarPlay Ultraの体験
CarPlay Ultraはそのネーミングの通り、CarPlayによる体験を究極の高みに導くことをコンセプトにした上位のサービスです。基本的には自動車メーカーとアップルのコラボレーションによる、車種ごとにカスタマイズされたスマートな体験をドライバー、あるいは同乗するパッセンジャーに提供することをコンセプトに掲げています。
アストンマーチンの車がいち早くCarPlay Ultraをサポートします
CarPlay Ultraを展開する最初の自動車メーカーはイギリスのアストンマーチンです。今回、筆者はWWDCの会場で対応する高級モデル（Aston Martin DBX）に乗り込んでCarPlay Ultraを体験しました。CarPlay Ultraは米国とカナダで先行投入され、今後12ヵ月以内にアストンマーチンが全世界に展開する車両にも拡大する予定です。
そして、CarPlay Ultra自体はiOS 26よりも先に導入されますが、iPhoneのモデルがiPhone 12以上でiOS 18.5を導入していることが利用条件になります。
アストンマーチンの車の中に乗り込むと、インスツルメントクラスター（メーターパネル）を含む運転席のすべての画面に統一されたCarPlay Ultraの画面とコンテンツが表示されていました。
全面のインスツルメントクラスター、センタークラスターに広く展開するCarPlay Ultraの表示
ステアリングホイール側のインスツルメントクラスターには速度計、タコメーター、燃料計、水温計など走行時にもリアルタイムに変わるデータが並びます。センタークラスターの側にあるディスプレイには、iPhoneからのマップやエンターテインメントコンテンツを表示していましたが、先進運転支援システムやタイヤ空気圧など車両からの情報もふたつのディスプレイを使ってシームレスに表示できます。
「統合されたユーザー体験」を自然体でつくり出して、ドライバーに提供することをCarPlay Ultraは目指しています。
ドライバーがカスタマイズできる要素も盛りだくさん
インスツルメントクラスターに表示されるCarPlay Ultraのディスプレイには複数パターンのデザインがあります。いずれもアップルとアストンマーチンのデザイナーが共同で開発したものが、ステアリングに搭載するタッチセンサーリモコンを上下にスワイプすると切り替わります。
アストンマーチンのブランドカラーである深いグリーンをバックグラウンドに配置。スピードメーターやタコメーターのゲージの細部にまでこだわったデザインがとても洗練されていました。写真で紹介できないことがとても残念です。
メーター表示やフルスクリーンマップの表示は、どこかwatchOSのデザインやiOSのスタンバイモードのウィジェットに似た印象を受けます。ドライバーが好みに合うテーマの色や壁紙を選んでカスタマイズを楽しむこともできます。
ドライバーがiPhoneをCarPlay Ultraに対応する車に初めてつないだ時に、iPhoneがその車のために用意されたアセットを自動的にダウンロードします。自動車メーカーがソフトウェアアップデートをリリースした時にも、サーバー側でアセットとの合わせ込みを調整するので、ユーザーが何度もダウンロードの手間をかける必要はありません。
走行時の様々な情報を集めてインスツルメントクラスターに美しく表示します
CarPlay Ultraのメニューには「空調アプリ」も並んでいました。その名の通り車載のエアコンをコントロールできる、今回体験したアストンマーチンの車のために専用で開発されたアプリです。
車にビルトインされているラジオチューナーの情報をCarPlay Ultraと同期させて、ドライバーがよく聴くお気に入りのラジオステーションを素速く呼び出せる機能もあります。これもアストンマーチンのこの車両に合わせてカスタマイズしたものです。
ほかにもBowers＆Wilkins（B＆W）の車載オーディオシステムのサウンド設定、アンビエントライトのディミング調整などもCarPlay Ultraを通じて直感的にできます。
Aston Martin DBXのために作り込んだ「空調アプリ」
なお、一家で複数の車を所有する家族ユーザーの場合、iPhoneをアストンマーチンの車に接続するとCarPlay Ultraが起動して、別ブランドの車に接続するとスタンダードなCarPlayが使えます。
車内でのiPhone体験を楽しくする、新しいiOS 26のCarPlay体験はとても魅力的です。車載システムにCarPlayの機能を追加できるアフターマーケットシステムでも、iOS 26の新しいCarPlayは楽しめるように設計されているそうです。
最近はEVの新モデルを中心に、独自のデジタルコックピットシステムを作り込み、CarPlayやAndroid Autoには対応しない道を選択するメーカーも増えていますが、iPhoneによるCarPlay体験の気軽さが気に入っています。CarPlay Ultraをもう少し安価な車に採用するメーカーが現れることにも期待しましょう。
筆者紹介――山本 敦
オーディオ・ビジュアル専門誌のWeb編集・記者職を経てフリーに。取材対象はITからオーディオ・ビジュアルまで、スマート・エレクトロニクスに精通する。ヘッドホン、イヤホンは毎年300機を超える新製品を体験する。国内外のスタートアップによる製品、サービスの取材、インタビューなども数多く手がける。
