AI要約はクラウドとオンデバイスの選択が可能
AI技術の活用強化はカメラだけではない。Zenfone 11 UltraでもAIを活用した機能がいくつか用意されていたが、Zenfone 12 Ultraではそれらをさらに強化。中でも強化がなされている機能の1つが「AI文字起こし 2.0」(ベータ版)である。
これはプリインストールの「音声レコーダー」で録音することにより、リアルタイムでテキストに変換してくれるもの。2.0になったことでテキストの要約ができるようになったほか、複数の話者がいる場合は話者の識別にも対応している。
実際に試してみると、確かに音声レコーダーはリアルタイムで文字起こしできるのだが、グーグルの「Pixel」シリーズや、アップルの「Apple Intelligence」対応機種で利用できるボイスレコーダーの文字起こしのように、ほぼリアルタイムで文字起こしがなされるのではなく、一定の区切りまでまとめて文字起こしをする仕組みだ。

文字起こしが進化した「音声レコーダー」。リアルタイムでの文字起こしも可能ではあるが、PixelやiPhoneのように完全リアルタイムという訳ではなく、一定の区切りまでをまとめて文字起こしする仕組みのようだ
それゆえPixelシリーズなどに慣れているとやや違和感があるのだが、サムスン電子の「Galaxy」シリーズや、シャオミのボイスレコーダーのように後から文字起こしすることももちろん可能。正確性を取るならそちらを活用した方がよいかもしれない。
一方で話者識別は、録音したあとの処理となるが日本語にも対応しているのが便利。録音品質にもよるが、しっかり話者の違いをしっかり検出できるようで、精度がもう少し高ければという感はあるが、既存のスマートフォンの中では比較的使い勝手が良い方だといえる。
そしてもう1つは要約機能で、音声レコーダーの文字起こしだけでなくウェブサイトやPDFなどの文章も要約できる。ブラウザーからは「共有」メニューを呼び出した後に「AI記事の要約」を選ぶ、ドキュメントの場合はファイルマネージャーからファイルを選択し、要約ボタンを押すことで要約できる。
いずれの要約も、クラウドのAIを使いスピードと正確性を重視するか、オンデバイスのAIでプライバシーを重視するかを選択できる。試しにウェブサイトの記事を双方で要約したところ、クラウドはスピードが一瞬で要約が完了し、箇条書きで見やすい要約となるのに対し、オンデバイスAIの場合は内容自体に違和感はないものの、十数秒の時間がかるのに加え、結果が文章となるためスマートフォンではやや読みづらいと感じた。
それゆえ要約を利用する際には、プライバシーなどへの配慮が不要ならば可能な限りクラウドでの要約を活用し、どうしても外に出したくないものだけオンデバイスを利用する、といった形を取るのが良さそうだ。ただ、クラウドのAIを使用する場合、24時間毎に割り当てられた「クォータ」を消費し、すべて消費してしまうとクラウドAIの利用ができなくなることから、頻度が多い場合はオンデバイスのAIもうまく活用すべきだろう。
高いベース性能に加え、ついにeSIMにも対応
そのクラウドAIなどを支えているのがチップセットとメモリーで、Zenfone 12 Ultraはクアルコム製のハイエンド向けとなる最新の「Snapdragon 8 Elite」を搭載するほか、メモリーも16GBと大容量。AI処理に欠かせないNPUの強化に加え、大容量メモリーの搭載が、AI機能の強化に大きく貢献しているといえそうだ。
これら性能はもちろんゲーミングにも役立っている。性能面ではROG Phone 9と大きく変わらないのでAAAクラスのゲームも充分快適にプレイできるし、ゲーミングをアシストする「Game Genie」の利用ももちろん可能だ。

「PUBG MOBILE」のグラフィック設定はクオリティが「ウルトラHDR」、フレーム設定が「ウルトラ」までと最上位の設定が可能だ
(C)2024 KRAFTON, Inc. All rights reserved.

「原神」のグラフィック設定はデフォルトで「高」と、こちらもほかのハイエンドモデルと同等。さらに最高水準にまで上げても快適にプレイできる
(C)COGNOSPHERE. All Rights Reserved.
一方で、バッテリーは5500mAhと、5800mAhのバッテリーを搭載していたZenfone 11 Ultraと比べるとやや少なくなっているが、65Wの急速に対応している点は変わっていない。またIP68の防水・防塵性能やFeliCaのサポートなどは共通しており、国内でも安心して利用できる環境は引き続き整えられている。
そして大きな変化となったのが通信面であり、これまでZenfoneシリーズでは対応していなかったeSIMに、ついに対応したのである。SIMスロットは従来同様nanoSIM×2が備わっているので、利用スタイルに応じて物理SIMとeSIMを選んで利用できるのはメリットといえるだろう。
【まとめ】満足感は高いだけに
小型モデルの選択肢も欲しい
まとめると、Zenfone 12 Ultraは前機種で大きく変わったコンセプトを踏襲しながらも、注目を集めるAI関連機能を一層強化し、よりAIに重点を置いたスマートフォンに仕上がっている。価格も最も安い256GBモデルで14万9800円からと、前機種より約1万円値上げがなされたとはいえ、ハイエンドモデルとしては比較的安価で、ハイエンドでないとなかなか利用できない本格的なAI関連機能を手軽に活用したい人には適しているだろう。
ただやはり、iPhoneのスタンダードモデルを利用しているような人からすれば、やはり6.78型というサイズ感は大きく、Zenfone 10までのサイズ感のモデルも欲しいと感じてしまう。市場環境が厳しい状況だけに難しい部分もあるのだが、やはりかつてのように、ニーズに応じた複数ラインアップがあれば……というのが正直なところでもある。
ASUS「Zenfone 12 Ultra」の主なスペック | |
---|---|
ディスプレー | 6.78型有機EL(20:9)LTPO 144Hz対応 |
画面解像度 | 1080×2400 |
サイズ | 約77×163.8×8.9mm |
重量 | 220g |
CPU | Snapdragon 8 Elite |
内蔵メモリー | 12/16GB |
内蔵ストレージ | 256/512GB |
外部ストレージ | ―― |
OS | Android 15 |
対応バンド | 5G NR:n1/2/3/5/7/8/12/18/20/25 /26/28/38/40/41/48/66/77/78/79 4G LTE:1/2/3/4/5/7/8/12/17 /18/19/20/25/26/28/32/66 /34/38/39/40/41/42/43/48 W-CDMA:1/2/4/5/6/8/19 4バンドGSM |
無線LAN | Wi-Fi 7 |
カメラ画素数 | 5000万画素(OIS対応)+3200万画素(光学3倍) +1300万画素(超広角) イン:3200万画素 |
バッテリー容量 | 5500mAh(65W対応) |
Qi | ○ |
FeliCa/NFC | ○/○ |
防水/防塵 | ○/○(IP68) |
生体認証 | ○(画面内指紋、顔) |
SIM形状 | nanoSIM+eSIM(nanoSIM×2) |
USB端子 | Type-C |
イヤホン端子 | ○ |
カラバリ | エボニーブラック、セージグリーン、サクラホワイト |
発売日 | 5月30日 |
価格 | 14万9800円(12/256) 16万9800円(16/512) |