7月18日、大阪・関西万博2025 テーマウィークスタジオにて、サムスンは「真のAIパートナーになるための人間中心AI:壁を乗り越え、次に目指すもの」をテーマにパネルディスカッションを開催。サムスン電子 常務兼モバイルエクスペリエンス事業部テクノロジー戦略チーム長 ソン・インガン氏とクアルコムコリア 副社長 スペンサー(サンピョ)キム氏の2名が登壇した。
サムスン電子とクアルコムコリアによるパネルディスカッションが万博会場で開催された。サムスン電子 常務兼モバイルエクスペリエンス事業部テクノロジー戦略チーム長 ソン・インガン氏(真ん中)と、クアルコムコリア 副社長 スペンサー・キム氏(右)
AIの利用率は増加傾向で
Galaxy S25ユーザーは70%が積極的に活用
ソン氏は、AIの導入は急速に進んでおり、直近6ヵ月間で実生活においてAIを頻繁に利用するユーザー数は2倍以上に増加したと説明。これらのユーザーの半数以上が生産性向上を、40%が創造的活動にAIを活用していると回答していたようだ。
特に、今年初頭に発売された「Galaxy S25」シリーズのユーザーの70%以上がGalaxy AIを積極的に使用していることを明らかにし、最も活用されている機能は、AI編集機能とタッチ方式の検索だと話した。
一方で、AIに対する「距離感」を感じるユーザーも存在するらしい。これは、「AIが本当に役立つのか」「使い方が複雑ではないか」「個人データは安全か」といった疑問に起因すると分析している。ソン氏は、サムスンがAIを機能ではなく「経験」として捉え、実用的で手軽に、そして安心して利用できるAIの提供を戦略としているとのこと。
この実現のために、AI処理とデータ処理をデバイス内部で行なうオンデバイスAIと、人間の多様な感覚入力を総合的に理解・解釈するマルチモーダルAIが不可欠であると説明。これらは高速処理とデータ保護を強化することで、適切なサービス提供を可能にするという。
15年以上AIを研究開発してきたクアルコム
今後はAIエコシステムを拡大させる
クアルコムのキム氏は2007年から15年以上にわたり、クアルコムがAI技術の研究開発に投資し、20億台以上のデバイスにAIエンジンを搭載してきたことをアピール。CPU、GPU、NPUといったチップ構成要素の最適化と有機的な制御を通じて、AI体験の最大化を図っている。
特にオンデバイスAIの最適化は、AIモデルの軽量化とチップセットの計算能力向上によって加速すると話し、クアルコムは開発者向けに「Qualcomm AI Stack」や150以上のAIモデルを提供する「Qualcomm AI Hub」を提供し、AIエコシステムの拡大に貢献していると話していた。
パネルディスカッションでは、AIがすでにさまざまな場面で実用化されていることを紹介。画面に円を描いて検索する「囲って検索」や、自然な対話による複雑なタスク実行、会議の議事録作成・要約、記事の翻訳・要約、写真・動画の編集、リアルタイム双方向通訳などが例として挙げられていた。
データプライバシーとセキュリティも重視されており、ソン氏はサムスンが最高のセキュリティ技術を確保し、ユーザーのデータ利用権限を尊重していると話すと、クアルコムのキム氏も、安全性と性能を両立させるチップセットアーキテクチャを提供し、「責任あるAI」の原則を製品開発に反映させていると説明していた。
今後のAIはアンビエントAIに進化する
スマホをハブにあらゆるものが連携する
今後のAIについて、両者はユーザーの意図を汲み取り、パーソナライズされた情報を提供する「アンビエントAI」へと進化すると展望した。スマートフォンをハブに、PC、ウェアラブル、IoT機器、家電など多様なデバイスが有機的に連携し、生活に溶け込む形で支援を提供する未来が描かれ、最終的にAIは個人に最適化されたエージェントとして機能すると予測していた。
パネルディスカッションのあとは、サムスンのソン氏を囲み特定のメディアのみを対象としたQ&Aセッションが行なわれた。
Androidスマートフォン市場におけるGalaxy AIの差別化についての質問に対し、ソン氏はGoogleとの密接なパートナーシップと、Galaxy端末へのGemini AIの深層統合を強調。一般的なアプリとしてのGemini AIとは異なり、GalaxyのOne UIに自然に溶け込む形で提供している点が独自性だと説明した。
AIに特化したハードウェアの可能性については、AIモデルの最適化にはハードウェアレベルでの協力が不可欠であると説明。サムスンはクアルコムを含むさまざまなSoC(System on Chip)企業と連携して最適化を進めているとのこと。
オンデバイスAIとクラウドAIの今後の比率については、現時点での予測は難しいと話していた。ただし、ユーザーが両方のAI機能を選択できることが重要であるとの見解を示している。また、社会的なコストやクラウドの電力消費問題も考慮し、市場の推移を見ながら戦略を立てていく方針のようだ。
日本市場については、従来どおり重視しており、Samsung Research Japan(SRJ)において、言語面など日本市場に特化したAIの研究開発を強化していることをアピールしていた。




































