ソフトバンクは18日、HAPS(成層圏通信プラットフォーム)向けに、6セルに対応した大容量ペイロード(通信機器)を開発し、上空からの5G通信の実証実験に成功したことを発表。同日、オンラインでメディア向けのブリーフィングも開催された。
メディア向けブリーフィングでは、ソフトバンク テクノロジーユニット統括 基盤技術研究室 無線技術研究開発部 部長の星野兼次氏が説明にあたった。
星野氏は、ソフトバンクのこれまでのHAPSへの取り組みを振り返った。HAPSは気流の安定した成層圏にアンテナを搭載した機体を飛ばし、広域な通信エリアを形成するもの。地上の基地局ではカバーできないエリアも“圏内”にし、災害対策にも活用される。ソフトバンクではドローンなど空中での通信利用も想定しているという。
ソフトバンクは2020年と2024年に成層圏でのフライトに成功し、2023年には世界で初めて成層圏からの5G通信に成功している。HAPSの機体を長期間安定して飛行させるための技術開発も同時に進め、太陽光パネルや電池の軽量・効率化にも成功している。
HAPSに使われる3つの独自技術
HAPSには、ゲートウェイと機体を結ぶフィーダリンクと、機体とスマホなどの端末をつなぐサービスリンクが不可欠。このうち、サービスリンクの要素技術のこれまでの開発について説明された。
サービスリンクには「フットプリント固定技術」「エリア最適化技術」「周波数共用技術」の3つの技術が用いられる。「フットプリント固定技術」とは、HAPSでカバーする通信エリアを固定する技術。HAPSの機体は旋回するため、フットプリントが移動する。ソフトバンクが開発した「シリンダーアンテナ」によって、ハンドオーバーが発生せず、受信レベルを安定させることができるという。
「エリア最適化技術」は、シリンダーアンテナによって、エリアの状況にあったビームフォーミングを行ない、エリア内で効率のよい通信を実現する技術だ。
「周波数共用技術」は、HAPSと地上で同じ周波数が使われる場合に生じる干渉を抑圧し、周波数を共用できるようにするもの。「ヌルフォーミング」という技術が使われている。なお、それぞれの技術は、すでに実証実験で有効性が確認されている。
基地局と受信端末間の
エンド・ツー・エンドの5G通信に成功
続いて、今回発表された大容量ペイロードの実証実験について説明された。この実験は、NICT(国立研究開発法人情報通信研究機構)の「革新的情報通信技術研究開発委託研究」として取り組んでいるもので、研究開発課題名は「Beyond 5Gにおける超広域・大容量モバイルネットワークを実現するHAPS通信技術の研究開発」。
令和5年(2023年)から5年間のプロジェクトとなっている。HAPSによる通信量を大容量化し、周波数の利用効率を向上させることを目的としている。
今回開発されたのは、6セルに対応したサービスリンクとフィーダリンクを結合させたペイロード。実証実験は2025年6月に八丈島で行なわれ、高度3000mに滞空する軽飛行機に新たに開発したペイロードを搭載して通信を中継させることで、基地局と携帯端末間のエンド・ツー・エンドの5G通信と、6セルのフットプリント固定技術の実証に成功したという。
軽飛行機の旋回の中心から15kmの地点で、下り平均約33Mbpsのスループットを記録し、通信エリアの端においても5G通信が可能であることが確認されたとのこと。なお、機体の旋回中心から15kmの地点における高度3000mの機体の仰角は約11度で、これはエリア半径100kmの地点における高度20kmのHAPSの仰角と同等。つまり、HAPSのカバーエリアの端でも通信を維持できる見通しが得られたという。
ソフトバンクは2026年にHAPSのプレ商用サービスを開始することを発表している。今回の実証実験の結果を踏まえて、さらにペイロードの改良、大容量化を進め、商用サービスでの実装を目指しているという。なお、商用サービスの開始時期や提供形態などについての言及はなかった。




















































