AI処理が78%アップ! PC用新CPU「Snapdragon X2 Elite」のNPUは1秒間に80兆回の演算が可能に

文●石野純也 編集●ASCII

2025年09月26日 09時00分

クアルコムは、PC向けのSnapdragon X2 Eliteシリーズを発表した

 クアルコムは9月23~25日(現地時間)の3日間にわたって開催された「Snapdragon Summit 2025」にて、PC向けのSoC「Snapdragon X2 Elite」とその強化版「Snapdragon X2 Elite Extreme」を発表した。

 2023年の同イベントで発表された「Snapdragon X Elite」の後継的な位置づけになるチップセットで、CPUにはスマホ向けの「Snapdragon 8 Elite Gen 5」と同世代の第3世代「Oryon(オライオン)」を採用する。

リファレンスデザインには、ラップトップ型だけでなく、ディスプレーのないミニPC型も用意されていた

PCの世界でも採用が進むSnapdragon X Elite

 2つのSoCは、会期2日目にあたる24日の基調講演で発表された。製品紹介を担当したコンピュート&ゲーミング部門上級副社長のケダー・コンダップ氏は、AI性能を大きく強化し、PCでの採用が一気に進んだSnapdragon X Eliteの実績を紹介。

 メーカー各社から150以上のデザインが登場したことや、家電量販店での展示が進んだことなど、SnapdragonがPCの分野にも浸透している実態をアピールした。

Snapdragon X Eliteの成果をアピールしつつ、Snapdragon X2 Eliteを発表したコンダップ氏

家電量販店に、Snapdragon搭載PCコーナーができたことを強調していた

処理能力が31%向上し、消費電力は43%低減した
「Snapdragon X2 Elite」

 新たに登場するSnapdragon X2 Eliteは、3nmの製造プロセスで開発されており、CPUは全18コアもしくは12コア。スマホ向けのSnapdragon 8 Elite Gen 5は内2コアがクロック周波数の高いプライムコアなのに対し、Snapdragon X2 Eliteは18コア版が12コア、12コア版が6コアをプライムコアとしている。いずれもクロック周波数は4.0GHzだ。

12コアでクロック周波数はブースト時に最大4.7GHzになる

 ただし、シングルコア/デュアルコアブーストに対応しており、1つもしくは2つのコアのみ、最大4.7GHzで駆動させてパフォーマンスを向上させられる。第3世代Oryonのパフォーマンスは、前世代比で31%のパフォーマンスが向上している一方で、消費電力は43%低減しているというデータも紹介された。

前世代と比較し、CPUのパフォーマンスが向上している一方で、消費電力は低減している

 コンダップ氏が「ラップトップでもっとも高速なNPU」というように、AIを処理するNPUが大きく強化されているのも、Snapdragon X2 Eliteの特徴になる。その処理能力は初代Snapdragon X Elite比で78%の性能向上を果たしており、1秒間にできる演算は80兆回(80TOPS)にも達した。

CPU以上に大きく性能が向上しているが、AIの処理を担うNPU。その演算回数は80TOPSに達した

 こうした処理能力の高さはベンチマークでも証明されているほか、Snapdragonに最適化されたAdobeアプリの実利用環境でも動作が高速になっているという。コンダップ氏が紹介したデータを見ると、Photoshopによる編集が28%高速化、Lightroomのフィルターとエクスポートが43%高速化、さらに動画編集のPremiere Proも47%高速化しているという。

クリエイター向けの各種アプリケーションも、動作が高速になる

さらに性能を向上させた「Snapdragon X2 Elite Extreme」

 もう1つのチップが、Snapdragon X2 Eliteの強化版にあたるSnapdragon X2 Elite Extremeで、こちらはCPUが通常版よりも高速になっている。コア数は全18コアで、Snapdragon X Eliteの上位バージョンと同じだが、プライムコアのクロック周波数が4.4GHzと高くなっている。パフォーマンスコアも3.6GHzで、通常版より高速だ。

 これに伴い、プライムコアはブースト時のクロック周波数が5GHzに達する。コンダップ氏は、「Arm互換の中で、初めて5GHzで動作するCPU」と自信をのぞかせた。また、Snapdragon X2 Elite Extremeは、Adreno GPUもクロック周波数が通常より高い1.85GHzになっており、コンダップ氏は「Snapdragon史上最大の進歩」と評している。

Snapdragon X2 Elite Extremeは、ブースト時のクロック周波数が5GHzまで上がる

インテルやAMD、アップルとのパフォーマンス比較も紹介された

 基調講演には、マイクロソフトのテクニカルフェローであるスティーブン・バティシェ氏がゲストとして招かれ、「Copilot+ PC」が月間で1.4兆回の推論を実行していることが明かされた。また、クアルコムのチップで、2ビットに量子化された「Phi-4」で、140億パラメーターを実行可能になったことなどが強調された。

マイクロソフトは、Copilot+ AIにおけるAIの利用状況などが明かされた

AndroidのAIをChrome OSにも!

 さらに、グーグルからはAndroidエコシステム担当の責任者であるサミール・サマット氏が登壇。Androidで急速に拡大しているAIを、PCのカテゴリーであるChrome OSにも取り入れていきたいことが語られた。

 サマット氏によると、「Chrome OSの体験を維持しつつ、その基盤となる技術をAndroidで再構築する」といい、26年の導入を目指しているという。Androidベースになることで、アプリなどの互換性が生まれるのはもちろん、グーグルが推進しているGeminiを取り込み、スマホとの連携も推進できる。

グーグルは、サミール・サマット氏が登壇。Chrome OSのAndroidへの統合計画がより具体的に明かされた

 グーグルでは、以前からChrome OSをAndroidに統合することを示唆していたが、Snapdragon Summit 2025では、その狙いや方法、時期がやや具体的になった。どのSoCを採用するといった情報はなかったものの、サマット氏は「AndroidのAIの進化をラップトップにも」と語っており、よりAIの処理能力が重視されるようになる可能性は高そうだ。

■関連サイト

mobileASCII.jp TOPページへ

mobile ASCII

Access Rankingアクセスランキング