クアルコムは9月23~25日(現地時間)の3日間にわたって開催された「Snapdragon Summit 2025」にて、PC向けのSoC「Snapdragon X2 Elite」とその強化版「Snapdragon X2 Elite Extreme」を発表した。
2023年の同イベントで発表された「Snapdragon X Elite」の後継的な位置づけになるチップセットで、CPUにはスマホ向けの「Snapdragon 8 Elite Gen 5」と同世代の第3世代「Oryon(オライオン)」を採用する。
PCの世界でも採用が進むSnapdragon X Elite
2つのSoCは、会期2日目にあたる24日の基調講演で発表された。製品紹介を担当したコンピュート&ゲーミング部門上級副社長のケダー・コンダップ氏は、AI性能を大きく強化し、PCでの採用が一気に進んだSnapdragon X Eliteの実績を紹介。
メーカー各社から150以上のデザインが登場したことや、家電量販店での展示が進んだことなど、SnapdragonがPCの分野にも浸透している実態をアピールした。
処理能力が31%向上し、消費電力は43%低減した
「Snapdragon X2 Elite」
新たに登場するSnapdragon X2 Eliteは、3nmの製造プロセスで開発されており、CPUは全18コアもしくは12コア。スマホ向けのSnapdragon 8 Elite Gen 5は内2コアがクロック周波数の高いプライムコアなのに対し、Snapdragon X2 Eliteは18コア版が12コア、12コア版が6コアをプライムコアとしている。いずれもクロック周波数は4.0GHzだ。
ただし、シングルコア/デュアルコアブーストに対応しており、1つもしくは2つのコアのみ、最大4.7GHzで駆動させてパフォーマンスを向上させられる。第3世代Oryonのパフォーマンスは、前世代比で31%のパフォーマンスが向上している一方で、消費電力は43%低減しているというデータも紹介された。
コンダップ氏が「ラップトップでもっとも高速なNPU」というように、AIを処理するNPUが大きく強化されているのも、Snapdragon X2 Eliteの特徴になる。その処理能力は初代Snapdragon X Elite比で78%の性能向上を果たしており、1秒間にできる演算は80兆回(80TOPS)にも達した。
こうした処理能力の高さはベンチマークでも証明されているほか、Snapdragonに最適化されたAdobeアプリの実利用環境でも動作が高速になっているという。コンダップ氏が紹介したデータを見ると、Photoshopによる編集が28%高速化、Lightroomのフィルターとエクスポートが43%高速化、さらに動画編集のPremiere Proも47%高速化しているという。
さらに性能を向上させた「Snapdragon X2 Elite Extreme」
もう1つのチップが、Snapdragon X2 Eliteの強化版にあたるSnapdragon X2 Elite Extremeで、こちらはCPUが通常版よりも高速になっている。コア数は全18コアで、Snapdragon X Eliteの上位バージョンと同じだが、プライムコアのクロック周波数が4.4GHzと高くなっている。パフォーマンスコアも3.6GHzで、通常版より高速だ。
これに伴い、プライムコアはブースト時のクロック周波数が5GHzに達する。コンダップ氏は、「Arm互換の中で、初めて5GHzで動作するCPU」と自信をのぞかせた。また、Snapdragon X2 Elite Extremeは、Adreno GPUもクロック周波数が通常より高い1.85GHzになっており、コンダップ氏は「Snapdragon史上最大の進歩」と評している。
基調講演には、マイクロソフトのテクニカルフェローであるスティーブン・バティシェ氏がゲストとして招かれ、「Copilot+ PC」が月間で1.4兆回の推論を実行していることが明かされた。また、クアルコムのチップで、2ビットに量子化された「Phi-4」で、140億パラメーターを実行可能になったことなどが強調された。
AndroidのAIをChrome OSにも!
さらに、グーグルからはAndroidエコシステム担当の責任者であるサミール・サマット氏が登壇。Androidで急速に拡大しているAIを、PCのカテゴリーであるChrome OSにも取り入れていきたいことが語られた。
サマット氏によると、「Chrome OSの体験を維持しつつ、その基盤となる技術をAndroidで再構築する」といい、26年の導入を目指しているという。Androidベースになることで、アプリなどの互換性が生まれるのはもちろん、グーグルが推進しているGeminiを取り込み、スマホとの連携も推進できる。
グーグルでは、以前からChrome OSをAndroidに統合することを示唆していたが、Snapdragon Summit 2025では、その狙いや方法、時期がやや具体的になった。どのSoCを採用するといった情報はなかったものの、サマット氏は「AndroidのAIの進化をラップトップにも」と語っており、よりAIの処理能力が重視されるようになる可能性は高そうだ。









































